第39話 どうしようシャル!? オレ王様になっちゃったよ!?
「いいんじゃないですか? 良いお話ですし」
……あれ?
まさかこんなに簡単に受け入れてくれるなんて。もっと反対されるかと思ったんだけど。
「なんですかその顔は。てっきりわたしが反対するとでも思ったのですか?」
「よくわかったな。まさにその通りだよ」
「甘く見られたものですね。わたしは別に博愛主義者でもなければ戦争反対派でもありませんよ……って、こんなこと言うと語弊がありそうですけど。とにかく、大型契約が取れるせっかくのチャンスなんです。これを逃す手はありませんよ」
「たとえオレの貸した金がきっかけで戦争が始まったとしてもか?」
「たとえタケルさんがお貸ししたお金がきっかけで戦争になろうとも、です」
シャルははっきりした口調でそう告げた。ここまで清々しい答えだと、悩んでいたことが馬鹿馬鹿しく思える。
「わかった。んじゃそうするよ」
オレの心は決まった。
「……ということだマコさん。投資させてもらうよ」
「わあ、それはとても良いニュースですね。よろしくお願いします」
「だけどその前に。ウチってタダで投資するわけにはいかないんだよね。何か担保になるものが無いと――」
「ならば、キミたちになんでも好きな土地をあげようじゃないか」
と発言したのはラムジン王。そのあまりに衝撃的な言葉に思わず言葉を失う。
「……え?」
「それは本当ですか王さま!?」
食いついたのはシャルだ。契約者が行方不明の王と知った時以上の食いつきっぷりだ。
「あ、ああ。本当だとも」
「なんでも好きな土地をいただけるんですよね!? それってつまり地価や広さにこだわらずわたしがコレと言った土地を――」
「ちょいちょいちょいシャルドネさんや。これはお前にじゃない。オレに、だ」
「何を言っているんですか。これまで二人三脚で頑張ってきたじゃないですか。タケルさんの物はわたしの物、わたしの物はわたしの物ですよ」
「とんだ暴君論だな」
「でも……わたしの苦労はタケルさんのものですよ☆」
「ウィンクしてんじゃねーよ。ひっぱたくぞ」
シャルはてへぺろと舌を出した。はさみがあったらちょん切ってしまいたい。
「もちろん、どんな土地でもよいぞ。だが、国を奪還した後での話になってしまうがな」
「お宝払いってとこか。イマイチ信用には欠ける話だけど」
「はっはっは。それもそうだ。ならばこれを持つがいい」
そういって手渡されたのはレヴンレイギス王国の紋章が掘られた指輪だ。
「……これは?」
「歴代の王たちが身に付けていた王の証だ。つまり、これを持つ者こそが王だ」
「どうしようシャル!? オレ王様になっちゃったよ!?」
「落ち着いてください貧民。まだ預かっただけですよ」
「貧民……」
「そういうわけだ。もちろん、国を奪還したら返してもらう。いいね?」
「お、おう、そうだよな。そうだよなァ……」
ちょっとだけ残念。だがオレにとっては宝の持ち腐れだろう。それがいいのかもしれない。
「さ、そうと決まれば契約書を交わそうか」
「ちなみに、いくら借りるおつもりです?」
「利息にもよるが……」
「ウチはひと月で6%ですよ」
あ、1パー盛りやがったこいつ。
「ふむ。ならば5000万ほど借りようか」
ご!?
「5000万ん~!?!?」
思わず声に出てしまう。そりゃそうだ。オレの目標としていた額を一気に飛び越えたからだ。
「はい、かしこまりました。ではこちらに署名を~」
「待て待て待てシャル! オレは今理解が追い付かない!」
「そうですか。おさるさんは向こうでアプルでもかじっててください。お仕事の邪魔ですので」
「だれがおさるさんだ。てか業者はオレだろ?」
「タケルさんは営業ですよ。細かい手続きはわたしがやってあげるんで感謝してください。だってタケルさんじゃできないでしょう?」
「ぐ……わかった。頼んだ……」
「聞き分けの良いコには後でバンナンナを差し上げましょう」
「だからサルじゃねぇって」
おとなしく引き下がることに。
「なァなァ」
近くに座っていた騎士団の男から声を掛けられた。
「あのキツそうな彼女って、あんたのツレ?」
「いいや。オレの金庫番だ」
「な、なんだそりゃ? ま、いいや。羨ましいよな~あんな美人引き連れて。それに引き換えこっち見ろよ。まるで女っ気のない女ばかりでやんなっちゃう……んがっ!?」
飛んできたタルの杯で頭を強打する。
「いって~……なにしやがるルビー!」
「うっさい黙れバカシュウ。あんたの悪口がこっちまで聞こえてんのよ」
「あれれ? 別に名指しはしていないけどな~? もしかしてルビーさん、自覚あるんで……んぎゃ!?」
「いい加減口閉じないと、その口縫い合わせるぞ」
「おもしれェ、やってみろよこのぺったんこ!」
「ぶち殺す!!」
ギャーギャーと騒ぎ立てる騎士団の連中。
なんて騒がしい奴らなんだ。
「――って、今キミは思ったよね?」
「……は?」
振り返ると、そこにはニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべる男が座っていた。
「ごめんね。僕はヒトの心を読むのが得意なんだ……なんてね。初めまして、タケル。僕の名前はブラン。ここにいるみんなは異世界人だけど、ここでは偽名を使っているんだ。でも、本当の名前は内緒ね」
そういって人差し指を立てる。なんだか絡みづらい人だ。
「ま、こんな騒がしい連中だけど、仲良くしてあげてよ。キミは騎士団に入るつもりはないみたいだけど、それでも一応仲間だからね。異世界者同士、よろしくね」
「お、おう」
若干、契約したことを後悔したかも。




