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第38話 ああ。ウチの守銭奴のな。

「やっぱりイレギュラーだなキミは」

 ラムジン王から言われたそれが褒め言葉なのかどうかと考えれば、多分そうじゃないと思う。キミは特殊な変態だから貴重な存在だね、などと鼻で笑われているようなものだ。被害妄想だけど。

「つーことでさ、力にはなれそうにないんだよね」

 申し訳ないけど、と付け加えるとマコさんは静かに首を横に振った。

「いえ、急なお話で困惑されたと思います。タケルさんには騎士団に入っていただかずとも、協力をしてほしいのです」

「協力?」

「はい。やはり国の奪還には相当な人手や武器が必要になってきます。王が失脚された今、私たちの懐事情は決して裕福とは言えません。むしろ資金不足なのです。そこで――」

 そうか、だからオレか。と理解した。マコさんがオレに接触してきたのはこのこともきちんと計算に入れていたのだ。そうオレが察したのを理解してかおらずか、マコさんはコクンとうなづいた。

「どうです? 私たちに投資していただけませんか?」

 じっと見つめられる。

 待ち望んだ大型契約だ。いくら借りるかわからないが、オレの目標に大きく近づくことは間違いない。断る理由などあるだろうか。いや、無い。こんなおいしい話、願ったり叶ったりなのだから。それなのに。どうしても気になることが一つある。

「……国を奪還するといったよな? それってつまりあの三角定規と戦うってことか? ……武力を持って」

 オレは別に平和主義者ではない。問題解決も時には争いが起こるし、仕方のないことだと思っている。しかし、オレがその当事者となるなら話は別だ。そんなホイホイと決められる問題ではない。オレの判断が、誰かの命を奪うことにもなりかねないのだから。

「……ええ。やむを得ない状況だとそういうこともあるでしょう」

 嘘は吐きたくありませんからね、とマコさん。そりゃそうだ、話し合いで解決するのなら最初からそうしてる。これはつまり、戦争なのだ。

「ですが、武力での鎮圧は最終手段です。その前にいくつか策をこうじるつもりではあります」

「策?」

「要はサラミ王子を失脚させるきっかけを掴めば良いのです。そしてそれを公にできれば私たちの勝ちです」

「スキャンダルを掴むってか……確かにあの王子だとスキャンダルの一つや二つは余裕でありそうだけど。何か目ぼしい心当たりはあるのか?」

「まだ元が取れていないものがいくつか……調査はこれからですね」

「そうか……いや、待てよ」

 ピンと来た。

「んなことせずとも一つデッカイネタがあるじゃないか。ラムジン王を意図して事故らせたというデカイネタがさ。王が登場して、公にそれを公表すれば……」

「……さっきも言ったが、呪いのせいで国民に私の顔は見えないのだよ。しかもそれだけではない。奴は策を二重にも三重にも仕掛ける曲者だ」

 テーブルに新聞記事が投げられる。そこには先代国王、つまり今ここにいるラムジン王のスキャンダルがいくつも掲載されていた。

「愛人に汚職に侵略……!? これ全部本当なのか?」

「もちろん、でっちあげだよ。しかし、この中にいくつか真実も含まれているのが憎いところだ」

「いや、真実もあんのかよ」

 ラムジン王は一つの記事を指差した。

 そこには確かに書いてあった。『殺人』と。

「っ……!?」

「私は、人を殺した」

「王! しかしそれは……!」

「事実だ。彼には包み隠さず話す、前にそう話しただろう?」

 マコさんを静かに諭す。とても信じられない。こんな人の好さそうなおじさんが人を殺したなんて。

「……国同士のぶつかり合いだと死人もでる。王はそれに対して責任があるもんな」

「そういうものじゃない。あくまで私個人が殺したのだ。大切な人間を、ね」

 そう言うラムジン王の目には憂いが含まれていた。まるで昔を懐かしんでいるようだ。そしてオレは理解してしまった。王は嘘を吐いていない、と。

「レヴンレイギスでは今まさにこれらの噂が蔓延している。そのせいで王が変わってよかったと声を上げるものも出てきている」

「……そういうプロパガンダだろ」

「だが実際に影響を受けているものも少なくない。そんな中で今私が出て行ってみろ。袋叩きにあうのは目に見えてる」

「んだよ。かなり不利な状況じゃねーか」

 マイナスからのスタート。こんな状況で国を奪還するなど無理ゲー過ぎるだろ。そう思わずにはいられなかったけど、口に出すことはできなかった。

「難しい状況なのはわかっています。だからこそ、他の道を模索しているのです。王のスキャンダルの払拭と同時に行わなければいけないのは中々骨ですが」

 マコさんは肩をすくめた。難しい状況とは言っているが、決して無理だとは口にしない。それが騎士団たる由縁だろうか。

「すまんな。皆には苦労をかける」

「いえ、これが私たちの存在意義ですから。王に対しての忠誠心は今も昔も変わりません」

「……敵わないな」

 王は苦笑した。

「と、話が逸れてしまいました。そういうワケもあって、私たちはまだ大々的に動けないのです。ですから、表では装って裏で動くしかないのです」

「装う?」

「はい。騎士団が本当の姿ですが、私たちの表の姿は……報道社です」

 妙に納得できた。なるほど、そういうテイなら情報収集も簡単に出来るってわけだ。

「こう見えてこの辺りでは一番の報道社なのですよ? 近所の村の流行りから町長の今夜の晩御飯までなんなりと――」

「マコ、話が逸れてる」

「コホン……失礼しました。かなり説明に時間を要してしまいましたが、改めてお願いいたします。タケルさん、私たちに投資していただけませんか?」

 マコさんにまっすぐ見つめられる。

 オレの答えは――

「あー……やっぱりちょっと待ってくれ。オレの一存じゃ決められない」

「おや、誰かの許可が必要で?」

「ああ。ウチの守銭奴のな」

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