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第13話 若干バカにされてる気がする。

「こちらでしばらくお待ちください」

 客間を出て謁見の間へ向かうと、ボン爺からそんなことを言われた。目の前には玉座が一つ。周りの装飾などはよくゲームなどで見る謁見の間そのものだった。

「で、お前は今までどこに行ってたんだ?」

 隣に立つブタに話しかける。

「ちょっと散歩にね。いやぁ、王都は素晴らしいな。美しい女性たちの宝庫だ。こんなことならもっと早く山を下りるべきだったなぁ」

「あんまりほっつき歩くなよ。民衆に顔を覚えられちまうぞ」

「美しい女性に覚えられるなら本望だよ」

「どうなっても知らないからな」

 自慢げに話すブタに呆れつつ王の登場を待つ。やがて出てきたのは王……ではなく、正装したベルだった。

「待たせちゃったわね。悪いけど、お父様は緊急の会合があってこれなくなったわ。だからわたしが代理を務めさせてもらうね」

「一国の王ともなると色々と忙しいのですね。構いませんよ、こっちはこっちでもらえるものをもらったらさっさと退散いたしますので」

「シャル、お前なぁ……」

「長居は無用です」

「ふふ、それもそうね。じゃ、早速お礼についてだけど。今回のことに関してお父様はあなたたちに100万シリルを渡すと言っているわ。それでいいかしら」

「100!? マン!?」

 とんでもない額に思わず目が飛び出そうになる。目標額の4分の1がこんなに簡単に手に入るなんて。

「なにか不満かしら? 命の恩人だもの。なんでも聞くわ」

「不満だなんて! それだけもらえるなら謹んで――」

「いえ、待ってください」

「シャル?」

「100万はいりません。ああ、正確にはタケルさんとわたしの取り分はいりません。その代わりにいただきたいものがあるのですが」

「ちょ、ちょちょちょシャルさん? 何をおっしゃっているのですか? そんな冗談なにも面白くないですよ?」

「代わりにいただきたいものって?」

「レヴンレイギス国の統治下にある全領土における交易の自由権です。それさえいただければお金などいりません」

「お金がいらないだって!? 銭ゲバシャルドネがそんなこと言うなんて!?」

「タケルさん、今大事な話をしているのですから黙っていてください」

「こっちだって大事な話だもん……」

「交易の自由権、か。なるほどね。あなたたちは商人だもんね。その要求にも納得できるわ。でも本当にそんなものでいいの?」

「現在統治下にある都市で交易を行うには逐一国の許可が必要でした。その手続きに時間をとられていたことも事実です。ですが、交易自由権をいただけることでそのような手続きが不要になり、より一層交易が捗ります。なので商人にとってはこれ以上ないご褒美なのですよ」

「そこまで言うなら、いいんじゃないの? 一度お父様に打診してみないとだけど。要はあなたたちにその権利を与えればいいってこと?」

「まぁわたしたち、というよりはグリンゴッツ商会に、でお願いします」

「わかったわ。そのように取り計らってみる。あとの三人はお金でいいのよね?」

「もちろんでござる!」

「わーい!」

「ぶひぃ」

 ウイチャボブタが嬉しそうに頷く。

「待て。オレもお金がいい」

「タケルさん。今ここで100万ぽっちをもらっても目標額まであと4倍もあるんですよ? そんな目先のお金よりもその先のことを考えてください。わたしの申し出もそこが肝なんです」

「ほほう、聞こうか」

「交易を発達させることで100万と言わず大金が手に入ります。これがうまくいけば400万なんてあっという間なんですけどねぇ」

「よしそれでいこう」

「単純過ぎるのも考えものですね」

 悪口を言われた気がする。

「それじゃ、あとのことはこちらでやるわ。タケルとシャルは明日また来てね」

「おう、よろしくな」

「最後になるけど……本当にありがとう。本当に」

 優しく笑うベルの姿はお姫様らしい気品が感じられた。


「ブタールさん。ちょっと二人で話をしたいのですが、いいですか?」

「HAHAHA。愛の告白かい? 嬉しいねぇ」

「期待に添えられずごめんなさい。すぐに終わりますので。タケルさんはウイロウさんとチャボさんのお見送りをお願いしてもいいでしょうか?」

 ということで、城の前で別れることに。

「なんか当初の予定とはだいぶ違ってしまったけど。一応はクエスト完了ってわけだ。ありがとなウイチャボ」

「こちらこそ、楽しかったでござる。機会があればまたどこかで」

「お金もたくさんもらえたしね~。また一緒に遊ぼうねタケル!」

 二人の背中を見送る。そんな二人の姿を見てオレは羨ましくもあった。

「20万か……」

 それぞれが受け取った金額の高さに改めて驚いた。

「お待たせしました~」

 シャルが戻ってくる。

「一体なんの話をしてたんだ?」

「んーそうですねぇ。ここでする話でもありませんし、酒場にでも入りましょうか。お腹もすいてきたことですし」

「確かにスライムしか食ってないし腹は減ったな。で、ブタは」

「話が終わった後すぐに別れました。街へと繰り出したんじゃないでしょうか?」

「納得できるな。ま、あいつのことは放っておいてメシ、行きますか。ああ、でもその前にもう一度ミミたんに……」

「第二王女に手を出すと首が飛びますよ?」

「……明日また会えるよね、きっと」


 店に入ってテーブルを囲む。適当に頼んだ料理をつまみながら、シャルと向かい合った。

「これからの予定についてですが、やはり商人らしく交易で稼いでいこうと思います」

「交易?」

「はい。交易です。例えばタケルさん。オークの巣で見つけた腰ミノ、あれオルバニアだといくらで売れると思います?」

「ええと、20シリルぐらい?」

「残念。10シリルです」

「やっすいな!」

「では、ここ王都シャンディだといくらで売れると思います?」

「変わらんだろ。10シリルだ」

「実はそうではないんですよね。なんとここでは50シリルです!」

「マジで!? 五倍も違うのか! なんでそんなに違うんだ?」

「いくつか要素はありますが、一つに手に入りやすさです。腰ミノの素材はオークの巣近辺に住むウルフの皮を加工したものです。ウルフはオルバニア周辺にも出現しますし、比較的手に入りやすい素材なので、オルバニアでは安価なのです。ですが、シャンディ周辺にはウルフはいません。なので王都では高値で取引されてるってわけです」

「それだけ金額に差があるなら王都で売るわな……あ、だから行商人って」

「旅をしているのですね。安くで買って高くで売る。これは以前にも言いましたが、各都市で安くで手に入った商品をまた別の都市で高くで売る。こうやってわたしたちは成り立っているのですよ」

「そうしてあそこまでデカイ店を構えるようになったんだな。少し尊敬するよ」

「ありがとうございます。で、ここからが本題です」

 シャルが身を前に乗り出す。

「タケルさんにはこれと同じようなことをやってもらおうと思います」

「安く買って高く売る、か?」

「ええ。タケルさんに商才は無いので無理だと思っていたのですが、一国の姫とお知り合いになるという絶好の機会を得たんです。これはグリンゴッツ商会も乗らせていただくほかないなと思いまして。ついでにタケルさんの夢も叶って一石二鳥ですよ」

「オレはあくまでついでかい」

「まぁまぁそうおっしゃらずに。実はもうすでにエルフとオークには話をつけました。それぞれの土地の名産品をこちらで流してもいいという商約です。向こうも名産品が売れて懐が潤うので快諾してくれましたよ」

「ブタと話ってのはそのことか。いや、でもエルフともか? あいつら捕まったんじゃないのか?」

「それは一部の実行犯のみですね。決して村ぐるみってわけでもなかったようですし。リルリラさんなんかはまだ幼いということで今回のことは不問になったそうですよ。まぁ、あれだけ弁の立つ方なので本当に不問にしていいのかは疑問ですが。あの才能は惜しいと思い、エルフの代表は彼女にお願いしています」

「抜け目ない奴め……ええと、オークが腰ミノだとして、エルフは?」

「スライムの肉ですね」

「おい。あれはダメだろぅ……」

「ちゃんと毒気を抜いて味付けすれば栄養価の高い素晴らしい食べ物らしいですよ。あの歯ごたえがたまらないって人もいるらしいですし」

「世界は広いな……」

「ま、そういうことですからこれからもどんどん周辺都市との商約を交わしていこうと思います。そして各都市に名産品を売りつけることで利益を得るのです。そうすれば400万なんてあっという間ですよ」

「まぁお前がそう言うから本当なんだろうな。それで、オレは何をすればいいんだ?」

「主に生産者との交渉ですね。やはり許可を得ずに流すことはできませんから。あとは、その商品を売りつけるための広告塔というところでしょうか?」

「ふむ。よくわからんが、それならできそうだな」

「タケルさんならきっとできますよ。だいじょぶだいじょぶ」

「若干バカにされてる気がする」

「ふふふ~あとは明日、予定通り自由権が手に入れば問題なしですね。国全土の交易権を持つ商会はほとんど無いのです。これはグリンゴッツ商会としてもぜひ手に入れたかったシロモノなんですよね~」

「ダシに使われた感じは否めないが、400万稼げるならまぁいいか。となると明日まで何もやることがないな。ずっと寝ててもいいけど」

「それは勿体無い。時は金なり、ですよ。せっかく王都に来たんです。ここでは金儲けのやり方はいくらでもあるので、参考ついでに見て行ってはいかがですか?」

「ほう。それはいいことを聞いた。案内してくれるかね、シャルドネくん」

「1時間20シリルですね」

「金取るのかよ!」

「冗談ですよ。一緒に行きましょう」

「よっしゃ」

 これからの光が見え、オレは勢いよく酒を飲みほした。


【今回の収支】


 ・食事代         -100シリル


 ――――――――――――――――――

 合計           -100シリル


 目標マデあと      3,998,400シリル

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