インド洋の暗雲と「鉄の亡霊」の輸送
1945年、夏。大東亜戦争の潮目が完全に変わり果てたその時、極東の満州国・大連港の暗黒の夜の帳の中で、歴史の裏面を揺るがす秘密作戦が実行されようとしていていた。
世界を二分した大戦の最中、ドイツ本国が崩壊寸前に追い込まれる中、ヒトラー政権の遺産とも言うべき最先端の兵器群の設計図、そして奇跡的に実動状態でかき集められた最新鋭駆逐戦車の部品一式が、極秘裏にアジアへと送られることになっていた。
その輸送を担うのは、通常のUボートではない。極秘裏に改造された超長距離潜水艦群、通称「ウルク・トランス・オセアニア」計画の精鋭艦艇であった。
北大西洋から喜望峰を回り、英軍の厳重な警戒網を潜り抜けてインド洋を北上するその航海は、まさに死と隣り合わせの賭けだった。
敵の対潜哨戒機、駆逐艦の爆雷攻撃、そして熱帯の過酷な環境により、幾隻もの潜水艦が海底の露と消えた。
しかし、血の滲むような犠牲の果てに、最後の生き残りである大型潜水艦が、辛くも日本軍が掌握するペナン経由で、密かに大連および旅順港へと滑り込んだのである。
艦内から降ろされたのは、ただの鉄の塊ではなかった。それは、ソ連赤軍の圧倒的な物量を正面から粉砕し得る、悪魔的なまでの科学の結晶だった。
大本営および関東軍司令部が手に入れたのは以下の「5つの究極の切り札」である。
1. ディガー(Tiger / ティーガー重戦車)の設計図
8.8cm戦車砲の圧倒的な貫通力と、重厚な装甲を持つ移動要塞のブループリント。
2. 三号突撃砲(StuG III)の設計図
低く構えた車体で待ち伏せ戦闘に特化した、生産性と信頼性に優れた迎撃の切り札。
3. フェルナンド(エレファント / フェルナンド重駆逐戦車)の設計図
圧倒的な長砲身8.8cm砲を備え、敵の重戦車を遠距離から一方的に屠る超重駆逐戦車の青写真。
4. バンター(汎用中戦車コンセプト)の設計図
現場の過酷な環境にも適応し、戦車の数的不利を覆すためのバランスの取れた主力戦車設計図。
5. ヘッツァー(Jagdpanzer 38(t))の実車パーツ一式。 設計図ではなく、実際に組み立て可能な状態で積み込まれていた小型駆逐戦車の実車。
「満州の豊富な資源と優秀な技術者、これらがあれば……祖国の防衛線、いや、満州平原で赤軍を叩き潰せる!」
「とはいえ、全てを作るのは不可能です。満州の生産力と戦況にあった物を・・・」
大連の地下ドックで、関東軍の技術将校と工員たちが震える手でその青写真と向き合った。




