表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

11、マスコミの反応

11、マスコミの反応


 文化祭の前に杉下は知り合いに電話を掛けた。職員室からかけた相手はNHK福井放送局の北島さんだった。北島さんはNHKの取材記者で杉下が津室ヶ丘中学校の校長だったころ、全国から視察者が絶えない「礼の教育」を取り上げて取材してもらった時からの知り合いだった。

「北島さんですか。津室ヶ丘中学校の取材でお世話になった杉下です。あれから私は定年退職しまして、今は隣の二本松中学校で社会科を教えているんです。」と言うと

「ご無沙汰しております。先生その節はお世話になりました。あの時のレポートは全国的に反応が大きくて、先生のおかげでした。今日はどうしたんですか。」

「実はね、また、新しいネタを提供しようと思いましてね。」

「それは楽しみですね。どんなことなんですか。」

「二本松中学校では学校祭で各学年の総合的な学習での研究成果を発表するんだけど、うちの学校の2年生で福井藩と松岡藩のことを研究したんです。ちなみに北島さんは福井藩が50万石から25万石に半減させられた時の大名を知ってますか。」

「奇行で蟄居させられた松平忠直ですか。」

「忠直は有名ですが、実は松平綱昌という6代目の藩主が罪なき家臣を手討ちにしたり奇行があって、幕府によって蟄居させられ半減させられたんです。福井の歴史の中では名誉なことではないのであまり伝わってはいません。しかし、この綱昌について中学生が新たな文献を松岡の天龍寺で発見したんです。歴史書では発狂したと書かれていますが、いわれなき罪だと綱昌はその手紙に無念さを書き綴っています。その手紙について、うちの2年生の生徒が発表しますので、取材してやってもらえませんか。福井藩の歴史研究の中でも多くの人が取り組んできたことだから、たくさん本が出ていますが新しい発見なのできっと大きな関心が集まると思いますよ。」

「先生がそうおっしゃるならきっとそうなんでしょうね。いつですか。」

「9月10日、土曜日 9時30分ごろです。体育館で文化祭の発表に中で行います。」

「では当日早めに伺いますので、よろしくお願いします。」と言って電話を切った。

 9月10日土曜日、体育館でオープニングセレモニーが始まったころ、北島記者は二本松中学校を訪れた。体育館入口には受付があり、NHKであることを述べると杉下先生に連絡してくれた。

「杉下先生、お久しぶりです。」

「よく来ていただきました。もうすぐ学年発表です。」

数枚の発表資料を渡された。

「この表にあるように福井藩と松岡藩は強いつながりがあります。福井藩から分家したのが昌勝ですが昌勝の子供たちは4人のうち3人が福井藩で藩主になっています。そのなかの長男綱昌が悲劇の人物だということがわかったんです。通説では福井藩に養子として入り6代藩主に就任しますが『徳川実記』では発狂して蟄居させられたことになっています。しかし、先日生徒と一緒にこの近くの松岡藩菩提寺の天龍寺で古文書を発見し、その中で福井藩のことを思って引退を決意したが、幕府によって裏切られた無念さを愚痴っています。決して発狂したわけではないことがうかがえます。その逸話を中心に生徒たちが結城秀康、松平忠直、松平昌勝、松平綱昌たちを調べた結果を発表するのでよろしくお願いします。」と事前説明をすると、北島記者は

「かなり専門的ですね。古文書の解読は先生がなさったんですか。」と聞いてきたので

「僕ではありません。たまたまですけど古文書を発見した時に一緒に行った生徒のおじいちゃんが元京都大学の歴史学の教授だったんです。」そこまで話を聞いて北島記者は新しい発見を中学生がしたという事で話題性は高いと判断した。

 杉下の説明を聞いているうちに学年発表が始まった。1年生の後、2年生が始まり、第5グループの山田哲郎君たちのグループの発表である。北島記者は椅子に座りながらじっくりと話を聞いた。北島記者は話の内容の高度さについて行けない感じがしたが、特に綱昌の手紙は新発見であり、これまでの通説を覆す内容であり、しかもそれを中学生が発見し発表したことに驚きを隠せなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ