修行と神様とオンラインゲームと……。
─楓視点─
「して、『討伐浄霊作戦』の派遣先は何処じゃ?」
会長が、巨大画面越しに、画面一杯に映し出された会長の父親である夢葉の曾祖父へと問い掛けた。
「ふむ。お前さんの浄霊師仲間が、倒れた場所じゃよ?」
「やはりの……」
夢葉の曾祖父の言葉を聴き、視線を落とす会長。
やはり、『討伐浄霊作戦』を展開すると言うからには、お相手さんも相当な『霊』だと思われる。
複数の浄霊師さんたちと、イケメン吸血鬼な『アルフォンソ=ピッピストレーロ』こと『ピピ郎』との合同参加で、少し安心しきっていた俺は、改めて気を引き締め直す。
それに、お相手さんである『霊』も『ピピ郎』の時のように、単体とは限らない。
俺は、会長へと尋ねてみた。
「会長? 今回の『討伐浄霊作戦』の派遣先って、相当な『霊』が居るんですか……?」
「ふむ。楓くん。実は、そうなのじゃよ。ワシの浄霊師仲間も相当な使い手じゃったが、単独での潜入は、失敗じゃったよ。そのせいか『討伐浄霊作戦』展開の依頼が『神様』から直々にあったようじゃの……」
「え!? か、『神様』っ!?」
夢葉の曾祖父の説明の冒頭部分で、『神様』と言う言葉を聴いて気にはなっていたが、俺は改めて会長から聴いて、驚く。
「ん? 言ってなかったかのー?」
会長が、まるで「知らなかったのか?」と言わんばかりに、目を「ギョロリ」と俺へと向けて、そう言った。
俺は、『巨大画面』の画面一杯に映し出された夢葉の曾祖父の『顔』へと、改めて聴いてみた。
「あ、あの……? か、神様って?」
「ふむ。『神様』じゃ。ワシも視たコトが無い。白い霧のようなモヤでモヤモヤと包まれておっての? 『声』のみが聴こえる。ま、ワシらは『霊体』じゃから、『霊界』の『天』から光が降り注ぐようにして聴こえて来るのじゃよ。ワシらとは存在の次元が違うんじゃろな……。んで、この度は『神様』直々にワシへと通達があったのじゃよ?」
「ふ、ふーん……。そ、そうですか……。(いるんだ。神様……。あるんだ。霊界……)」
俺は、夢葉の曾祖父の言葉を聴き、そう想いながらも、やはり驚きを隠せない。
(やっぱり、いるんだ……。やっぱり、あるんだ……)
しかし、この『巨大画面』……。
一体、どうなっているんだ!?
『神様』とも繋がっているのか!?
それに『霊界』って……。
ますます、分からない……。
会長が、この世……つまり、現実世界とも限りなく「繋がっている」とも言っていた。
(ウーン……。分からない……)
俺が、首をかしげ……この『巨大画面』の『謎』について、想いを馳せていると──夢葉が俺の方を向いて、こう言った。
「そんなコトより、修行! 修行っ!! 私が手合わせシてあげるよ? ね?」
夢葉がそう言って、俺の方を見て「ウインク」して──
夢葉の胸が「たゆん──」と、揺れた……。
(ふぇっ……!?)
俺の心の中に電撃のような直感の稲妻が、雷のように走った。
夢葉の「手合わせシてあげるよ?」は、嬉しいアッチの方ではなくて、もちろん『格闘技』の方だろう……。
『ピピ郎』戦の時のように、夢葉に物凄い『烈拳』を浴びせられたなら、俺は、ひとたまりも無い……。
身震いが、する……。
格闘感覚抜群の夢葉。
夢葉の詳しい経歴は知らないが、もと格闘技王だったとか?
そう言えば、昔、テレビで世界最強の美少女とか言って、もの凄く可愛い「たゆんたゆん」な女の子がいたけど……。
オリンピック新種目の『異種男女混合格闘技』の『無差別級』で男に混じって、世界の並み居る強豪や猛者たちを軒並み倒して、初代王者『金メダリスト』に輝いたとか言う伝説の美少女──
(それって、まさか……!?)
「そのまさかだよ……?」
「ふぇっ……!?」
『魂の契約』で、俺の想いと思考を読み取った夢葉が、衝撃の告白をした。
俺は、情けない2度目の「ふぇっ……!?」を声に出してしまい、驚いてしまった。
「ビビッてんの……? 楓くん、大丈夫?」
横から妖しい小悪魔のような瞳で、黒音ちゃんが詰め寄り、俺の目を「ジッ……」と見つめ、夢葉と同じように「ウインク」したかと想うと──
俺へと、そっと……黒音ちゃんが、口唇を寄せようとしていた……。
「ちょっ! く、黒音っ!!」
「なーに、夢葉? 良いトコだったのに……?」
久々に、夢葉と黒音ちゃんとの、この遣り取りと言うか……出会って間もない頃のような二人のこの光景を、俺は目の当たりにしていた。
「そんなに自信がないの……?」
黒音ちゃんが、俺の目を尚も見つめて言う。
「大丈夫だよ? 楓……。いきなり、ぶっ飛ばしたりなんてシないからさ?」
夢葉も、俺の目を見つめていて、優しい笑顔で言う……。
「え? あ、うん……。そだね……」
俺は、俯きながらも、黒音ちゃんと夢葉から視線を落として、目を伏せた……。
夢葉から修行と聴いて、俺は、夢葉に着いていけるか自信が、無い。
夢葉には、情けない姿は見せたくは無いが、不安で仕方がない……。
そして、黒音ちゃんの瞳の奥に秘められた、悪魔的なこの『眼力』。
俺に対して優しさを装っている黒音ちゃんだが、なんとなく、多分、黒音ちゃんも『楓の霊力育成』について何か企んでいるはずなのだ。
俺は、心配しすぎなのだろうか?
疑心暗鬼になりつつ……黒音ちゃんの企む修行に着いていけるのかも、自信が持て無い。
身も心も重い……。
黒音ちゃんの黒魔法……『殲滅の魔弾丸』を、何発も喰らわせ続けられるとか?
いっちゃうよ? アノ世に……。
俺は、夢葉と黒音ちゃんと『魂の契約』をしてはいるが、俺からは夢葉と黒音ちゃんほど、二人の気持ちとか心とか、真意までは汲み取れない。
俺には、肉体があるからだろうか……?
そのせいで?
肉体が、魂の想いを伝わりにくくさせ、阻んでいる?
いや、夢葉も黒音ちゃんも、俺のコトを心配してくれているのは、事実だろう。
それくらいは、分かる。
しかし、しかし……。
いや、しかし……。
大幅なレベルアップは必須だ。
なんせ、10日間しか時間が無い。
相当な使い手とも言っていた会長の浄霊師仲間が、やられたほどの『霊』だ。
やれることは、やっておきたい……。
俺は、顔を上げた──
(怖がっている場合じゃ、無い……)
(とにかく、やるんだっ……!!)
『魂の契約』で、俺の魂の言霊が、夢葉と黒音ちゃんに響いたのか──
夢葉と黒音ちゃんが、「たゆん──」と胸を揺らしながら、二人同時に叫んだ。
「「 良しっ!! 」」
夢葉と黒音ちゃんが、軽くガッツポーズを決めて、同時に二人の胸が「たゆん──」と揺れた。
「フフフ……。流石は、我が主。楓くんですねぇ? 私もお供させて頂きますよ?」
今まで静かに佇み、俺たちの様子を伺っていたアレなイケメン吸血鬼な『ピピ郎』が、俺の傍で囁くようにそう言って口を開いた。
ピピ郎が、そう言った後……。
会長の言葉が、波紋を呼んだ──
「さて……。では、この『巨大画面』に入って、楓くんも夢葉も黒音ちゃんも吸血鬼くんも、四人で修行するかの?」
「「「「 !? 」」」」
今までの、しばしの時間……。
静かにしていた会長のこの一言が、凪いでいた水面に波紋を広げるようにして、この場の空気を一変させた──




