鈍速
眠い
狙撃手は2キロほど先のビルの屋上にいる。
既に撤退を始めているだろう。
「逃がさないっ。」
建物の壁を蹴って移動することで速度をあげる。
「よしっ。」
ビルにたどり着く。
あとは登るだけだ。
なかなかの高さがある。
できるだけ窓のない場所を選びながら、
駆け上がる。
屋上に航空機は近づいていない。
間に合った。
私は最終階に躍り出る。
狙撃手は2人だ。
地面に足を着けることなく、切りつける。
死体を確認すると無線装置の電源が入っていた。
どこか遠くで回収してもらう予定だったのだろう。
パラシュートも背負っていた。
すぐに援軍がくる。
家にいる兄を迎えに行かなくてはならない。
ドンッ。
衝撃に体が仰け反る。
どうやら、地獄に生き返ってしまったようだ。
勝利の笑みを浮かべる首を削り取る。
(絶生)の力で私が死ぬことは無い。
ただ、痛みはある。
この体に刺さった剣は、
私に生き地獄を味あわせるのに最適だ。
しかし今は自分の境遇を嘆いている時ではない。
急いで兄を連れて逃げなければ。
騎士はパラシュート片手にビルから飛び降りた。
その頃、
某所ではこの場面を監視している者達がいた。
「ありえない。」
驚愕の声が上がる。
狙撃失敗から狙撃地点に到達する速度と、
狙撃手のナイフのような物で弾かれたという証言。
そして、
最後の銃弾を上半身に受けながらも活動している。
全て人間では不可能なことだ。
王城を陥落させた時に逃げ延びた騎士は、
みな他国に名を知られるような大物ばかりだ。
だが、今回のは人間業じゃない。
体に刺さっている剣など気になるところはあるが。
私はこの場面の映像とレポートを、
本部に送ることにした。
んん〜