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92:そこはダンジョン。だが、進まず

ついた場所がわかった話。


 ――セブでクエストを受けてクリアしたはずなのに、ボクは何故か今、マップ情報ではサーディにいることになっていた。ただし、洞窟みたいなとこの中だけど……


 「ん-? どういうことだろ……」

 『おにいさん、どうするの?』

 「まぁ、とりあえず外にでよ……え」


 立ち止まったままだとどうしようもないから、ボクは少し移動しようとして動き出した瞬間、足は空を踏んで……ボクの身体は何もない空間へと投げ出されたのだった。



 『ん? 今、何か聞こえなかったか?』

 『そうか? ……気のせいだろ』


 そんな会話が洞窟のどこかでされていたとか、されてないとか……




 ――静かに滴り落ちる水滴が弾ける音が響く坑内、耳の奥には泣いてた子の声が聞こえてくるけど……ボクは目を開けることが出来ずにいた。


 『おにいさん、おにいさん大丈夫?』


 泣いてた子に返事をしようと口を開けても漏れ出るのはボクの呻く声だけで、というかゲームってわかっていても地味に衝撃があって身体が動かせないという状態をボクは今身をもって体感していて……これ、どうしたら動けるんだろ……そう思ってから多分数分くらい、ボクの身体はようやく動かせるようになったのだった。


 『おにいさんよかった……』

 「あんまりよくもないけどね……あ、体力が減ってる……」


 回復薬を飲みつつ、辺りを見回せばそこはとても広い空間で、天井も高く……というか、まず間違いなくあの高い天井からボクは落ちてきたはずなのにぎりぎり生存だったのは正直よくわからなかった。


 「……あれ、サーディと違う……?」


 マップを改めてみた時、ボクのいる位置はサーディと言えばサーディなんだろうけどそれはサーディの判定にはなく、むしろまったく別の範囲のようで……というか……


 『おにいさんどうしたの?』

 「ここ、ダンジョンのセーフティゾーンなんだって……」


 普通に別マップが開かれて、そこには隠しダンジョンと書かれていて、ボク達のいる空間だけが白くなっており、そこにはセーフティゾーンと書かれていた。なお、今は街に戻ることができないらしい。


 「ねぇ、なんか手がかりみたいなのってない?」

 『えっとね、向こうの壁に何か書いてあったよ』

 「とりあえずそれを見に行ってみようか……」


 ちょっとだけふらつきながら立ち上がり、泣いてた子が指さす方にゆっくりと向かえばそこには確かに何かが書かれていて、さらには赤い石が壁に埋まっていて……


 「……この石に触れ、簡易の固定を設定せよ。まだその時ではない……だって」

 『つまりどういうこと?』

 「多分1回だけ往復が出来るようになるってことだと思う? あと先には進めないらしい」

 『じゃあ帰れるの?』

 「うん」


 確かに、ボクにとってまだその時じゃないのかもしれない。ただ、とりあえずカズにダンジョンのことは送っておいたのはボクだけが知っておいていい情報じゃない気がしたから。

 そして、簡易の固定もとい登録をすると一覧の一番下に薄い文字でダンジョンと書かれて、それを確認してからボクはセブの墓地へと飛び……墓守少年に怒られたのは不可抗力だ。


なお、ダンジョンの入口と出口は別の場所にある。

ついでにヒカタが落ちてぎりぎり生存だったのは割と泣いてた子のおかげだったりもするがどっちも気付いてなかったりもする。

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