13:クエスト受け後に
街探検をしようとしたら欲しい情報がすぐ近くにあった話。
――セカンの街にある訓練所で錬金術師の講座を受けたボクはまさかのその日にゲームを始めて2個めのクエストを見つけ、受注をすることになるとは想像もしてなかったし、そしてその目的地である村は……
「時が止まってる?」
錬金術師の講座で教えてくれた人……ボクは先生と呼んでるけどその人は確かにそう言った。【村は時が止まっている】と……
『あぁ、村そのものか、その空間がなのかはわからないが止まっているんだ。時が。だからその村の住人は年も取らないし、姿も変わらない。だが、誰でも住めるわけではない……』
「……でも先生、どうしてそれを知ってるの?」
先生は言葉を続ける。村は近くだけど遠い場所にあり、一度近くまで寄れたことがあり、そこで見覚えのある姿が見え……
『だけど、俺は村の敷地に入ることができなかったんだ……だが、君みたいな存在ならばきっと……』
先生の話を聞きながら横目でマップのモニターを見ればそこにはひとつだけ青いポイントがあり、それは時々現れては別の場所に出現をするを一定の時間で行っていて。きっと、それが先生の言っていた村が近くて遠い場所にあるという意味なのだと理解したけどそのことをボクは先生に話すつもりはなかった。
「とりあえず時間はかかると思うけどちゃんとお手紙届けるよ」
そのクエストを受注したし、とはさすがにボクだって言わない。どのみち、村の出現タイミングとか、場所とかその辺のこともちゃんと確認していかないとボク自身も危なくなっちゃうかもしれないし。そもそも長期クエストって書いてあったから多分時間制限もないだろうし。
『よろしく頼む……』
そう言った先生の顔にあるのは多分……とにかくボクは、講習の時間も終わったから先生に礼を言ってから部屋を出て、それから少しだけ訓練所の中を見学してからまた街の探検へと戻った。その後、訓練所の中にある図書室のような部屋に錬金術に関する本とかがいろいろとあることを知り、慌てて戻るまでがワンセットになっていたけどそれは気にしないことにする。
―――
ヒカタ:カズ、5人世界のときにあった村があるって知ってた?
カズ:だろうってことしか知らなかったけど……え、あんの?
ヒカタ:うん。今ね、そこにいる人にお手紙届けるクエスト受けたんだけど
カズ:まって。それはさすがにベータの頃にもなかったクエなんだけど
ヒカタ:そなの? まぁいいや。カズなら法則も知ってるかと思ってたけどわかんないなら
カズ:……うん、おまえはそういうタイプだもんな……とりあえず、そのクエに関しては多分人に聞いて回ったりはしない方がいいから
ヒカタ:さすがにそれはしないよ。掲示板とかもよくわかんないし、プレイヤーに話しかけるのやだし
カズ:ならいいや……また移動することがあったらいつでもチャットでもリアルでもいいから連絡してくれ
ヒカタ:うん。忙しいとこにチャットしてごめんね
カズ:いいって。誘ったのは俺なのに放置して悪いな
ヒカタ:そういうものでしょ? じゃあね
―――
とりあえず、カズにチャットを送った結果わかったのはよくわかんないってことだけだし。ボクはまたセカンの訓練所にある図書室でそこにある本を開いては空白の本に必要そうなことを書き写す作業に戻るのだった。
ベータの頃からなかったクエストの理由は単純にクエストを発見する条件をクリアした人がいなかっただけだということを彼は知らない。
なお、講師との会話中にポイントが出たり消えたりしてる理由も単純に近くに村在住の人がいないからだったりするけどそのことに陽葵が気付くのは多分だいぶ後。




