11:冒険者紹介所への登録
街探検より優先したほうがいいと思ったので!
――ゲームにログインをして、最初にしたことはセカンの探検じゃなくて……
『ようこそ、冒険者紹介所へ。ご用件は仕事の発注ですか? 仕事の登録ですか? それとも新規登録ですか?』
カズに勧められたファスタウンでの紹介所への登録だった。ただ、受付にいる綺麗なお兄さんの言葉にボクは少しだけ首を傾げてしまったのは……
「えっと……?」
『あぁ、仕事の発注とはここ紹介所に登録されている仕事を受けることで、仕事の登録は冒険者に頼みたい仕事を登録することで、新規登録は仕事を受ける為、頼む為に冒険者として登録するということですよ』
「あ、じゃあ新規登録です」
『かしこまりました。新規登録にはまずメインジョブかサブジョブのスキルを用いたテストを行っていただくことになりますが、どちらにしますか?』
メインのジョブは錬金術師だけど、あっちはいまいちよくわかってないから保留の方がいいだろうし、サブのジョブのカジは鍛冶でも家事でもいいのはスキルを見て明らかだったからボクは……
――ボクが今いるのは紹介所の中にある作業場と呼ばれる小さな部屋で、いろんな道具が並んでいるそんな場所であの受付にいた金糸のような髪色のお兄さんで、その人はじっとボクの動きを監視するように見ていた。
『ここにあるものは全て自由に使ってください』
「わかりました」
そう、改めて言われてボクはまず部屋の中の確認から始めることにして、お鍋やフライパンなどの調理器具、ビーカーや試験管などの薬品とかが作れそうな道具、テレビでやってたDIYの企画とかで使ってた丸のこなどが3方向の壁に掛けてあったり、棚の上に置かれていたりしていて、ついでに調理器具のある壁の下の方には備え付けであろう流し台とガス台みたいなのがあったから多分ひとつの壁の方向を見てひとつの作業が出来るようになってるような感じではあった。あ、調理器具の壁のとこに冷蔵庫もあった。
「えっと、調理のスキルは……これ、かな?」
スキルのモニターをカズに教えてもらったように横にスライドさせてかえ、いくつか並んでるスキルの名前を確認しながらボクはひとつのスキルを押した。
数分後、ボクの目の前には出来立て熱々のピザトーストが2つ……いや、1つ半あって、今順調に減っていっている方はずっとボクを監視するように見ていた受付のお兄さんがガツガツと見た目に反してとても男らしく完食したところだった。ていうか、よく口の中やけどしないなぁ……
そんな風に関心してるうちにお兄さんは口元についていたパンくずを拭ってから視線をボクに向け……てはいるけどまだピザトーストを食べたそうにしていた。
「あ、一応メインのジョブで作ったものもあるんですけど……」
『はっ……そ、そうですね……確認させてください』
とりあえずテーブルの上にあるピザトーストをそっとアイテムボックスに入れて、それからアイテムボックスの中にある幸運薬をお兄さん渡して見せてあげれば、その綺麗な顔はちょっとだけ驚きの表情になっていた。攻撃薬の方がよかったのかな?
『すごい……もうこの薬を作れるなんて……いいわ、さっそく登録をしましょう』
「あ、お願いします」
そんなやりとりの後、紹介所への登録はコピー機の読み取る部分みたいな板に手を置くだけで終わり、ステータスの画面に【冒険者紹介所会員】という項目が追加され、その項目を押せば、ツリーみたいに項目が繋がるように出てきて、そこにはそれぞれ【受注中任務】【受注済み任務】【過去ログ】と書かれていた。なお、受付のお兄さんに見せる為に出した幸運薬はすぐに返してもらえたよ。
『これでいつでも各街にある紹介所で掲示されているお仕事を受注することが可能となりました』
「はい、ありがとうございましたお兄さん」
『あらやだ、あなた私が男だと気付いていたのね?』
「うん。でも、性癖って人それぞれだから」
ボクがそう言うとお兄さんはとてもまぶしい笑顔を浮かべた。それはとても嬉しそうだったけど……正直、あまりボクに関係ないから興味がないだけなんだけどな……それに、女装が好きな人ってリアルにもいるだろうし。そういうものなんだと思ってるし。
とりあえず、ボクはお兄さんに一礼をして紹介所を出ていった。さて、セカンの街に戻って探検の続きをしないとね。
ファスタウンの冒険者紹介所に在籍してる受付役は3人で男女比は2:1です。
なお、お兄さんは1人だけだし、見た目は割と女性にしか見えない女装男子である。
そして実はファスタウンの紹介所でナンバー2だったりする。




