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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第一章〜ヒズミルの町の残念な人たち〜
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友人の正気を疑うよね

 その後、泣きじゃくるクランネと申し訳なさそうに俯く聖女ルナを見て微妙に罪悪感を抱きつつあった俺は、足早に教会を後にした。


 が、しっかりとパンツは頂いておいた。可愛そうな事と、裏切りとは別の話である。


 まだ日は落ちていなかったが、精神的にシオンは疲れていたので宿を探すことにした。


 すると後ろからシオンへと声をかける人がいた。


 「やあ、こんにちはシオンさん。満喫されていますか?」


 「ああ、こんにちは門兵さん。ちょっと早いけれど今日泊まる宿を探していてですね。」


 「もう一度会えたのも何かの縁です。僕のことは『カイ』と呼んでください。敬語も結構ですよ。」


 「わかったよ。カイ、よろしくな。」


 「よろしくお願いしますシオンさん。」


 こうして俺は人間界での初友人を手に入れた。


 「カイは敬語のままなのか?」


 「ええ、僕はこれが素なので。それよりも宿泊場所でしたか?僕はこの町にそれなりに詳しいので、条件を言って頂ければそれに見合った宿を探すことが出来ると思いますが。」


 「本当か!それじゃあ⋯⋯良質な眠りやすいベッドがあって⋯⋯それと客の満足度も高い宿がいいかな。」


 「ふむ⋯⋯それですと少々値段はしますがここの宿などはどうでしょうか?」


 そう言ってカイは簡単な地図を書いてくれた。


 「値段は大丈夫だ。着てた服を売ったら結構な収入になったしな。」


 ちなみに人間界の貨幣は7種類あり、その価値は


 銅貨1枚で果物1つ。銀貨1枚で良い宿に1泊。大銀貨1枚で安めの武器を。金貨1枚で良質な武器を。大金貨1枚で普通の家を。白金貨1枚で豪邸を買うことができる。


 さらに神貨という貨幣もあるそうだが、それは時間とともに価値が変わり続けているらしい。


 ちなみに俺の服は大銀貨三枚で売れた。色々買ったものの差額を見ても、普通の宿なら1ヶ月は泊まることができる。


 「じゃあ、宿教えてくれてありがとうな!」


 「いえいえ、また何か困ったことがあれば聞きますよ。」


 そう言ってカイと別れ、もらった地図の場所へと向かうことにした。












 その頃天界


 「宰相様、弟神様!大変です!大変です!」


 そう必死の剣幕で神王城の『宰相』と『弟神』に報告をする兵士がいた。


 「どうしたと言うのだそんなに慌てて。」


 「いったい何があったんだい?」


 怪訝な表情でそう聞く2人。


 「先ほど、天界西部より通信がありまして!『妹神』様が二ヶ月後にこの神王城にお帰りになるとのことです!」


 それを聞いた2人は激しく戸惑った。


 「な、なんということだ!弟神様!⋯⋯今、彼女に帰られてしまうと⋯⋯!!」


 「うん、確実にまずいことになるね。はやく対策を打たないと。」


 その、『まずいこと』の内容を想像して、宰相、弟神、兵士の3人は冷や汗をかき身震いした。











 どうも。こんばんは。こちらは親切なカイ君にオススメの宿を教えてもらった神王ことシオンさんです。


 俺は今、件の宿の前で激しく混乱しております。もうそれは本当に。聖女のパンツ事件なみに!!!


 何故かというと⋯⋯















『サキュバスの宿』⋯⋯皆様に至福のひと時をお届けいたします。是非ご堪能くださいませ。












 「正気か!!!カイぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 いやそりゃあ、良質なベッドもありそうだよ!?客の満足度も高そうだな!!!


 でもこれは⋯⋯いやしかし本当にただの宿ってことも⋯⋯無いだろ!!!


 宿から漂うオーラも真っピンクだよ!!!


 あいつって実は馬鹿なのか?だけれどもこっちの世界に来て初めてできた友人だ。


 きっとこれはやましい心を持った俺の勘違いなのだ。そうに違いない。宿泊の下にある『休憩』の文字なんて見えない。


 きっとこの時の彼はあまりの状況の読めなさに混乱していたのだろう。何故か1人で納得し、そのままその宿屋へ進んでいった。


 サキュバスは美しい女性型の魔物で、人間との会話も可能である。未だに魔物としてその色香で人間を惑わし襲う個体もいるが、多くは人間との共存の道を選んだという珍しい魔物である。


 サキュバス達は人間界溶け込むと、このように宿屋を経営して人を『癒し』たり、メイドやウェイトレスなどになり、人に『奉仕』している。


 また、自らすすんで高級奴隷となり、巡り会った『ご主人様』へ精いっぱいの『ご奉仕』をしたりもする。


 そんな魔物図鑑から得た人間界のサキュバス事情を思い返しながら、シオンは扉へ手をかけた。


 「いらっしゃいませー♡本日のお相手はサキュバスのリリでーす!ご休憩コースですか?ご宿泊コースですか?それともアタシたちのことを買っちゃいますか? きゃっ♡」


 「コースってなんだよ!普通に泊まりにきただけだっ!」


 扉を開けると、とても扇情的な服装で惜しげも無くその肢体をさらしたピンク髪の少女サキュバスが出迎えてくれた。


 「えぇ♡またまた、そーんなこと言っちゃって♡あ!それとも興味無いフリして無理やりされちゃうのが好き♡とか??」


 「違う!良い宿を聞いたらここを紹介されたんだ!ただ泊まるだけ!それ以上はない!」


 「え?本当に泊まるだけ?まあ確かにそれも出来るけどー。そんな人初めてだよー。へーんなお客さん。」


 「常識を知らないで来た俺が悪いんだろうけど⋯⋯やっぱり他のところ行っていいか?」


 「まって!まって!泊まるだけでもいいから!何ならサービスも付けるから!サービス♡」


 「いやサービスはいらん。」


 「そんなー。⋯⋯じゃあこれ鍵ね。ただ泊まるだけなら銀貨1枚になりまーす。あ、でもぉ♡もし寂しくなったらアタシのこと呼んでね♡」


 「呼ばないから、安心して夜は寝てていいぞ。」


 そう言ってシオンは銀貨を渡し、あてがわれた部屋へ向かった。


『神王』は『サキュバスの宿』に泊まった。





一周回って鋼の心を発動しているシオンくんですが、普段はもっと心が揺れるはずですとも。

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