暴走する聖女、戸惑う勇者
受験が忙(言い訳)
翌朝、俺はアルアーラ教会の司教さん達が利用する食堂にて朝食をとっていた。すると、
「ゆ、勇者様!⋯⋯と、パーティーの皆さん。」
と呼びかけている声、その正体は今まで見たことのある修道服よりもずいぶん可愛らしい格好をした聖女ロゼッタであった。
「ああ、ロゼッタさん。おはよう!」
挨拶を返す、勇者のブレイブ。本日も爽やかさMAXだ。
「そ、その。今日の白女神様への謁見までは何か予定はあるのかしら?」
「今日かい?今日はこれから冒険に必要なアイテムを買いに街に行こうと思ってたんだけれども⋯⋯何かあった?」
「え、ええと⋯⋯街に行くなら、あたしと一緒にどうかしら?」
しどろもどろになりながら必死に言葉を紡ぎ勇者を誘うロゼッタ。頑張れ!
「それは二人でかい?うーんと⋯⋯。」
と、そこで勇者は今まで聞きに徹していた他のパーティーメンバー三人をうかがう。ちょっとまずいか?
「いーんじゃない?」
「わたくしも付いて行きますわ!」
「私もです!」
舞闘家のカーラさんは承認。魔導士のシルフィーナと神聖術師のイネアは認めない、と。
このままじゃ今日の俺の最大の楽しみである、勇者とのデートでやらかすロゼッタの姿を見ることの雲行きが怪しくなってしまう。
そこで、俺は食事をとる手を止め、勇者パーティーに近づいていった。
「おはよう皆さん。今日はカーラとシルフィーナとイネアは3人で遊びに行くって言ってたな。どこに行くんだ?」
と、唐突に俺は勇者達に呼びかける。当然、言ったことの意味がわからない勇者パーティーガールズが、
「え、何それ?知ってる?」
「知りませんわ。イネアは?」
「知りませんね。どういう事ですかシオンさん。」
と、疑問を浮かべるが次の瞬間に
「あれ?どしたの?シルフィ、イネア。」
「ソウイエバヤクソクシテマシタワ!」
「オンナノコドウシノツキアイデス!」
と、カーラを除く二人が片言で急に先程の俺の言葉を肯定しはじめる。
「ちょ?二人とも?」
「ハヤクイキマショウー!」
「デスワ!」
しまいには二人でカーラを引きずってどこかへ行ってしまった。
もちろん、俺の仕業である。極力神の力に頼らないと言っていたが、俺の楽しみのためならばその限りではない。
ちょっとだけいうこと聞いてもらえるようにしたのだ。たぶん、昼過ぎには解けるだろう。
「⋯⋯行っちゃったね⋯⋯、てことで今日は二人でも大丈夫みたいだ、一緒に行こうか!」
「やった!」
と小さくガッツポーズをするロゼッタ、ふとこちらへ振り向いて小声で尋ねてきた。
「今の二人の様子が急に変わったの⋯⋯もしかして偽勇者⋯⋯じゃなかった。シオンの仕業?」
どうやら、昨日の偽勇者と呼ばないという約束はしっかり守ってくれるみたいだ。
「さあな、たまには女子だけで遊びたかったんだろ。」
「あんた何者よ⋯⋯。」
ロゼッタに少し疑われてしまったようだ。
「冒険者のシオンだよ。それより昨日言ったことは覚えてるな?デート頑張れよ。」
「バッチリよ!」
バッチリやらかしてくれるんですね、はい。
その後、勇者とロゼッタが街に行くのは11時からとの情報を得て、俺はもとの席に戻った。
時刻は11時少し前、俺は教会の前で勇者を待つ聖女ロゼッタを少し離れた物陰に隠れて見守っていた。
あ、もちろんバレないように神の力(以下略)
するとやがてロゼッタのもとに勇者がやって来た。
「ゴメンよ、購入したいアイテムの確認をしていたら少し遅くなってしまった。」
と、申し訳無さそうに謝罪する勇者に対して、
「だ、大丈夫よお兄ちゃん!約束の時間には間に合っているのだし、それより早くいきましょう!」
よし!第一のやらかし成功!勇者のやつ笑顔が固まったまま二度見してたわ。
ともかく、街へ買い物に出た二人を露天の名物片手に尾行。
すると勇者はポーションを、売っている露店に寄った。
露天で商売しているおっさんは勇者と聖女が客に来てとても嬉しそうだ。
俺も二人が何をやらかしてくれるか楽しみで嬉しい。
「これはこれは勇者様に、聖女様。何かご入用ですかな?」
「こんにちわ、上級ポーションをいくつか売って欲しいのだけれど。」
「お、お兄ちゃん!ポーションなんか使わなくても聖女のあたしが癒してあげるのに⋯⋯。ふ、ふんっ!別に心配して言ったわけじゃないわよ?資金の効率のことを考えて言ったわけで⋯⋯あぁもう!お兄ちゃんのばかっ!⋯⋯⋯⋯⋯⋯私を連れて行ってくれたらいいのに⋯。」
これには神様も思わず、飲んでいた果実ジュースを吹き出す勢い。
まさかお兄ちゃん呼びとツンデレが混じりあうとは流石です。
「⋯⋯へ?聖女様?⋯⋯あのぅ勇者様は聖女様とご兄妹だったのですかな?」
「い、いや違うんだが、彼女朝から少し様子がおかしくて。⋯⋯ロゼッタさん?もしかして熱でもあるのかい?」
「な、何でもないわよっ!お兄ちゃんは心配しなくていのっ!」
「えぇ⋯⋯。」
続いて二人が入ったのは錬金素材売りの店。ちなみにここまで勇者を困らせているが彼に恨みは一切ない。後でなんかいたわってやろう。
「すみませーん、いくつか欲しい素材があるのですが。」
「あ、いらっしゃいませー、って勇者様に聖女様!」
出迎えてくれたのは眼鏡のお姉さん店員。次はどんなハプニングを見せてくれるのかな?
「氷結草に妖精の涙、あと白狼の爪なんかありますかね?」
「ええっと、少々お待ちください。⋯⋯⋯⋯えぇ、全部ありますよ!」
「よかった、これで聖剣を強化することができます!⋯⋯ってあれ?聖剣は?」
と、肩に下げていた聖剣が鞘だけになり無くなっていることに気づく。
「えぇーい!」
ぽいっ
っとロゼッタの気合の入った声と何かを投げる音が聞こえた。
見ると、ロゼッタが素材屋の横にあった公園から戻ってきたようだ。
「ロ、ロゼッタさん?その⋯⋯僕の聖剣知らないかな?」
「公園に捨ててきたわよ!」
「はっ!?」
「だから公園に捨ててきたわよっ!」
「ええと、どういう⋯⋯?」
「褒めてくれないの⋯⋯お兄ちゃん⋯⋯?」
「えぇぇ!?!?」
「えっ、お兄ちゃん?」
と、すかさず店員さんも反応する。
「あっ、後でとりあえず説明しますから、聖剣取ってこなきゃ!」
そう言って律儀にロゼッタの頭を撫でて褒めてから急いで隣の公園へと向かう勇者。
「勇者様が撫でてくれた⋯⋯。」
一方ロゼッタは勇者に撫でられて満足そうだ。聖剣捨てられて褒める勇者ってのもなかなかアレだな⋯⋯。
「あっ、君、それ本物の聖剣なんだっ!危ないよ!返しておくれっ!」
「やだー!」「きゃはははは」「逃げろー!」
ふと勇者の方を見ると、捨てられた聖剣を拾った子供たちから取り返そうと必死に追いかけっこをしていた。
何この勇者やさしい




