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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第二章〜白女神祭の大波乱〜
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消化試合と予想外の大物

 時間を少し遡って経緯を語るとしよう。


 俺は赤毛の少女に引っ張られ、闘技場の出場登録をすることになってしまった。ここまではいい。だが、登録をしている最中に仕事を終えた聖女と再開した。


 あわよくば、俺の出場を止めてくれないかな。と聖女に期待した眼差しを向けると、その聖女の放った一言が、俺を更なる面倒事へと陥れた。


「ふーん、あんた試合に出るの?いいじゃない。あたしの暇つぶしにもなるし、勇者に選ばれるだけの力とやらを見ててあげるわ。」


 くっ、コイツは⋯⋯。厄介な事を言いやがって。


「え?勇者⋯⋯へぇ。」


 瞬間、俺を受付まで連れてきた少女の纏う雰囲気が豹変する。そのまま少女は聖女に近づき、


「ねえ聖女様、少しお話聞いてもいい?」


 と言って、聖女にだけ見えるようちらりとフードをまくった。


「あら⋯⋯あなたは!」


 どうやらこの少女も聖女の知り合いだったらしい。


「あなたなら教えても大丈夫ね⋯⋯この男は⋯⋯」


 あんまり広めないで欲しいなあ、いっそ知ってるやつ全員の記憶でも消すか?なんて途方も無いことを考えていると聖女と少女の話が終わったようだった。


「キミ、勇者になれたのにならなかったんだって?変なの、まあ試合で期待しているよ。」


 と言って、そのまま少女は行ってしまった。


「じゃ、せいぜいみっともない結果にならないよう頑張りなさい。」


 次いで聖女も観客席の方へ向かっていった。またも聖女に取り残された俺は仕方がないと腹を括り選手の控え室と受付で説明された部屋に向かうのだった。















 控え室で待機していると、しばらくして俺の名前が呼ばれた。ここの闘技場のルールは簡単で、相手に参ったと言わせるか、戦闘不能にすると勝ちになる。その勝ちに応じて選手は賞金を獲得できるみたいだった。


 相手を殺すことは禁止されてはいるが、それは戦意を失った相手を追撃して殺すことが禁止なのであって、戦いの最中に殺してしまうことについては不問とされていた。


 物騒なルールだな、と感想を持ちながら俺は闘技場の舞台まで歩いていった。


「一回戦、暗殺者エー、対、斥候シオン!はじめっ!」


 会場のアナウンスが響き渡る、なるほど、ここでは時分のジョブで呼ばれるのか。と、暗殺者エーと呼ばれた男のほうへ意識を向けると。


「けひひっ、あんたブヒータの旦那の怒りを買ったんだってなぁ?この闘技場には旦那の思うままに動く闘士が何人もいるぜぇ!あんたを殺して報酬を得るのは俺だぁ!」


 ご丁寧に状況の説明をどうもありがとう。どうやらこれがブヒータからの報復らしい。


「くらいなっ!『暗殺刃(アサシンエッジ)』。」


 そう言ってエーは素早く俺の背後に回りこみ、首元にその鋭い短剣を振るったところで


 俺の姿を見失ってしまった。


「は?どこに行きやがった?」


「こっちだよ!『聖光(ホーリーライト)』!」


 そう言ってエーのさらに後ろに回り込んだ俺は振り向いたエーの目に手を平をかざし、思いっきり光を放ってやった。


「ぎゃぁぁぁ!目がぁ!」


 そのままエーの持っていた短剣を奪い、視界を失ってのたうち回るエーの首元に押し付け返し降参させた。


「ま、参った!くそっ、こんなに強いなんて聞いてねえぞ!」


 言ってないし、しかももっと強いし。


 とりあえずあっさりと一回戦を終えた俺は控え室に戻った。すると、控え室の前で聖女ロゼッタが腕を組んで待ち構えていた。


「あんた『聖属性魔法』使えたのね。でもあたしと同じ力が使えるからっていい気にならないでっ!」


 いい気になりませんし、こっちの聖女が聖属性魔法の使い手だって今の言葉で初めて知ったし。


「それより、最初の動きよ!何のスキルなの?忌々しいけど全くわからなかったわ。」


 忌々しいって、おい。


「あれは俺のスキルの『逃亡』だ。珍しいスキルらしいぞ。」


「逃亡?何それなんか情けないわね。」


「逃亡を舐めるなよ?実は俺も初めて対人で使ってみたが、相手の攻撃の死角に逃げたいなーって思って発動してみたら、気づいたら相手の後ろにいた。すごいだろ!」


「相手の死角を取れるスキル⋯⋯。有効だけど勇者にしてはなんか地味ね。」


「勇者じゃないんだからいいだろっ!」


 ともあれ俺はしばらく活躍の機会を無くして眠らせていた俺のスキルをこの闘技場で使ってみることにした。
















 その後も順調に進み、俺はなぜか決勝まで来てしまった。ブヒータの放った相手を全員潰したら、さっさと棄権するつもりだったのだが、なんと決勝までずっとブヒータの飼っている暗殺者共が俺の相手だった。


 ちなみにこれまで当たった相手は暗殺者ビー、シー、ディー、イーだった。


 決め手は全員同じく光による目潰し、これでしばらくはあいつらも大人しくしているだろう。


「それでは決勝戦!ヒズミルの冒険者、斥候シオン、対、アルアーラのA級冒険者、『毒蛇』の暗殺者スネーク。はじめっ!」


 A級冒険者、それは冒険者ギルドが設定するAランクの依頼を達成することで名乗ることが許される、冒険者の中でも上位の存在だ。また、Aランクから冒険者は『二つ名』を名乗ることが出来る。


 この人の場合は『毒蛇』らしい。趣味悪ー。


「死ねい!」


 その毒蛇さんが俺に向けて突きを放ってきた。俺は後ろへ下がりその突きを躱すが、相手の剣についていた液体が俺に降りかかり、ジューっと音を立て俺の服の一部が溶けてしまった。


 ああ、それで毒蛇ね?というか俺の服ダメになった!?またリリさんへの借金が増える!


 この敵は危険だと改めて認識し、俺は構える。ブヒータの野郎、A級冒険者なんか引っ張ってきやがって、俺ならともかく一般人なら死ぬぞ!


 いや殺すためか。だかまあ相手が悪かったな、A級冒険者と言っても人間が俺に勝てるわけないだろう。


 再度突きを放つスネークに対し、俺は『逃亡』スキルを使い、死角へと逃げ込む。後は目潰しするだけだが、


「そう何度も同じ手が通用するわけないだろう!対策済みだ!」


 スネークは懐から小瓶を出し、自分の周囲全方向に毒を撒き散らしてきた。


「うわっ危な。」


 いくらか服にかかってしまったがこの毒は溶ける類のものではないようだ。ならば問題ない。


「効いたようだな、馬鹿めっ!」


 服に毒がかかることに怯んだ俺を、毒が効いたのだと勘違いしたスネークが剣を片手に突進してくる。


「馬鹿はお前だよ!」


 あとはもう簡単だ。単純な軌道で突っ込んでくる相手を横にそれていなし、すれ違いざまに目に向けて光を放つ。


「ぐわぁぁぁ、馬鹿な、大型の魔物ですら数分は動けなくなる毒だぞ!ありえない!」


 そんな危険な毒持ち込むなよ。


「毒がかかる瞬間に合わせて聖属性魔法の治癒(キュア)で解毒できるようにしていたんだよ。俺の勝ちだ。」


 とりあえず毒が効かない理由をでっち上げた。それにしても『毒蛇』か⋯⋯他の暗殺者と違い名前がちゃんとしているだけあって厄介な相手だったな。


「⋯⋯⋯⋯ちっ。」


「勝者、シオン!よって本日の優勝者はヒズミルの冒険者、斥候シオン!」


 わあっとギャラリーからの歓声が沸く、なるべく目立たないなんて目標はどこに行ってしまったのやら⋯⋯。まあ賞金も出ることだしリリにお金を返せると思えば。


「本日の上位闘士への挑戦権を獲得したのはシオンだっ!」


 おおっと不穏な言葉が聞こえてきたぞ。上位闘士?何だよそれ。そこで、近くにいたギャラリーの1人に聞いてみると


 上位闘士とはこの闘技場で過去に何度も優勝したり、闘技場の運営側がスカウトしたよりすぐりの戦士達である。


 日毎の闘技場で優勝した選手はこの上位闘士にエキシビションマッチとして挑まなければならない。との事だった。


 確かに闘技場の選手達に手応えが無さすぎるとはおもったが、上の位が居たとは⋯⋯。何にしても帰らせてくれなさそうだなあ。


「本日、優勝者を相手するのは!⋯⋯おぉっと、この人が出てくるなんて珍しい!この闘技場で無敗の記録を守り続ける期待の勇者パーティーの武闘家!!!『炎舞姫』カーラ=ドラゴニアだっ!」


 うおおおおと会場が熱に包まれる。まさかの勇者パーティーかよ、関わりたくないって言ったのに⋯⋯。


 すると会場の熱狂を一身に浴びながら、一人の少女が舞台までやってきた。見覚えのある赤いくせっ毛をポニーテールにしている髪型、しかし先程とは違いフードを被っていない。


「アルアーラの勇者パーティーの一員だったとはな。それを知ってたら出場しなかったのに。」


 そう言って俺はカーラに声をかける。


「うちだってこれは予想もしていなかったよ。本当にキミに勇者の力があるとは信じていなかったもの⋯⋯それなのに、まさかキミが勝ち上がってくるとはね?まあ本当に勇者の力があったのなら当然か⋯⋯それじゃあ⋯⋯いくよ!!!」


 こうして『神王』は『炎舞姫』と戦うことになった。


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