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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第二章〜白女神祭の大波乱〜
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ワガママツインテール

 「この町の勇者の情報を知っている者がいたら、直ちに報告しなさい!」


 そう大きな声で命じる赤毛の少女は聞くところによるとアルアーラ王都に居るはずの聖女ロゼッタ様であるとこのとだった。


 ヒズミルの勇者ってもしかしなくても俺だよな⋯⋯。こんな面倒事を避けるために勇者にならなかったのになぜバレたのか。解せぬ。


 すると数人の冒険者達が聖女ロゼッタに近づきなにか話し始める。


 俺は危険な予感を察知して、仲間二人を連れて冒険者ギルドから逃げようとした。が、


 「ちょっと待ちなさい!そこの黒髪の男!」


 呼び止められてしまった。腰に手を当て胸を張り、もう片方の手のひらで自分のツインテールの先をくるくると弄りながらこちらを呼び止めたロゼッタ様とやら。なんとなく高圧的であった。当たり障りの無いよう返答に努めなければ。


 「な、何でしょうか?」


 願わくばバレていませんように!そう願う俺だったがその願いは虚しくも散ってしまう。


 「何でしょう、じゃないわ!あんたが勇者だって聞いたわよ!あたしの命令を無視してるんじゃないわよ!」


 「無視したわけじゃないですよ。俺は斥候です。勇者ではないですよ。」


 すると聖女は面食らったような顔をし、続いて苛立たしげに先ほど話した冒険者に怒鳴る。


 「どういう事よ!このあたしに恥をかかせたわけ?」


 すると冒険者達は俺が勇者のジョブを得られたにも関わらず、斥候となった経緯を説明した。


 「そういう事ね、わかったわ。でもそれを先に言いなさい!」


 情報を貰っているという立場のくせに偉そうだなぁ。


 「あたしが探していたのはあんたで間違いないみたいね。喜びなさい、白女神様の神託によりあんたを王都アルアーラで行われる白女神祭の招待人として連れていってあげるわ!」


 祭りだって?それまた唐突な。


 「ちなみに⋯⋯拒否権は?」


 「ある訳ないでしょう!白女神様の神託だって聞こえてなかったの?さらに聖女であるこのあたしが直接迎えに来てあげたのよ。泣いて喜んでもいいくらいだわ!」


 横暴な⋯⋯。それにしても白女神からの直接の呼び出しで拒否権は無しか。まさか白女神に俺の正体を知られたか?でも直接知り合った訳では無いし。俺の姿を下級神に許可なく教えることは禁止になっている。


 ちなみに何故禁止になっているかというと、長く神として働いてきて自分の力量を正しく理解している上級神はともかく、神になって日が浅く出世願望の強い下級神達は神王に挑みかかってきたりする事がある。


 実際それで数万年前くらいに下克上ブームとか言って俺の仕事が下級神達にめちゃくちゃ邪魔されたりしてた。


 それで俺自身の許可がない限り下級神は俺の姿を知ることは出来なくなったのだ。



 とまあ、それは置いといて俺はどうやらこの聖女ロゼッタ様に連れられて王都へ行かなければならないらしい。


 今日の目的であるカイの冒険者登録も達成できそうにないな。


 「なあ、この2人は俺の仲間なんだが一緒に連れて行っても?」


 「ダメよ、白女神様から招待するよう言われたのはあんただけだもの。それにあんたは祭りが終わるまで白女神教の教会で待機する手はずだし。ほかの人間は連れていけないわ。」


 何それ、招待じゃなくて拉致じゃないですか!まあ今回に限っては白女神に会うかもしれないので俺が神だと2人に知られないためにも連れていけないのは都合がいいのだが。


 「まあ、わかったよ。リリ、カイ。俺は行かなくてはならないらしいので2人は家で待機していてくれ。帰ってくるのは⋯⋯」


 「今日ヒズミルから王都にかけて出発、明日は王都の教会に到着してから自由行動。明後日から3日間の祭りで帰ってくるのは5日後よ。」


 「⋯⋯だそうだ。5日間生活するだけのお金は?」


 「大丈夫だよー!」


 「問題ない。」


 よかった。大丈夫みたいだ。


 「なら行ってくるわ、登録できなくてすまんなカイ。」


 「いや大丈夫だ。そらよりもシオンさんも気をつけてくれ。」


 「帰ってきたら面白い話を期待してるよー!」


 そう言って2人は俺を送り出してくれた。思いやりのできるいい仲間だ!このワガママ聖女やアホシスターのクランネも見習って欲しい。


 そんなことを思っていた俺に対し、聖女が、


 「あたしと同じ馬車に乗ることを許可してあげるわ。感謝なさい!」


 と言った。いま見習えと思ったばかりだというのに!


 そうして俺はワガママ聖女に連れられ王都へ向かうことになったのだった。


 「行っちゃったねーカイくん。」


 「ああ、少し心配だな。」


 「ご主人様変な事件に巻き込まれる体質があるからねー。」


 「そうなのか。」


 「アタシを助けてくれた時もー⋯⋯」


 そうしてシオンの仲間2人は彼についての話で盛り上がるのだった。
















 ガタガタと小刻みに揺れる馬車の中、俺は聖女と向かい合って座り、かなり気まずい思いをしていた。かれこれ数十分はこの状態のまま無言なのだ。


 「ちょっとあんた、何か時間潰せる話題を言いなさいよ。」


 向かいに座る聖女様からのちょっと無茶なリクエスト。


 「そ、それじゃあせっかくだし聖女様について色々聞いてもいいか?」


 「何?憧れるあたしについて知りたいわけ?まあいいわ答えれる範囲で教えてあげる。こんな措置滅多にしないわよ!感謝なさい。」


 別に憧れてませんが。まあそんなこと言っても機嫌を損ねるだけだろうから言わないが。


 「聖女様はいつから聖女になったんだ?」


 「あんたそんな事も知らないわけ?去年よ。あたしは元々白女神教の神聖騎士だったのよ。もちろんトップクラスで強かったわ。で、ある時神託を聞けるようになったから、神聖騎士を辞めて聖女になったのよ。覚えておきなさい!」


 ほう、神聖騎士だったのか。ちなみに神聖騎士とは各宗教が持つ、その教義を守りその神の手足となり戦うという騎士のことだ。通常の騎士より上級職にあり、騎士職の者が信仰心を持つとジョブチェンジできるようになるらしい。ちなみに白女神教の神聖騎士は人間界でも最も規模のおおきいものだったはず。


 「俺はヒズミルの聖女と顔見知りなんだが。」


 「ああ、あのルナさんね。ルナさんは割と様々な種類の仕事をしているのだけれど、あたしはもっぱら戦闘特化よ、あたしに除霊できない霊なんていないわ!」


 聖女でも仕事の分担があるのか。


 「あたしからも質問するわ。あんたは何で勇者にならなかったの?」


 と言って聖女が質問をしてくる。


 「俺はあんまり目立ちたくなかったんだ。それに俺は勇者なんて柄じゃないだろ。」


 「ええ、そうね。あたしがアルアーラの勇者として認めるのはあの人だけよ!あんたとは比べ物にならないくらい格好良いんだから!」


 どうやら聖女は勇者様を知っているようだった。それにしてもこの聖女も転生神も気に入っているという勇者はどれほど格好良いのか。少し気になったが、会ったら会ったで何か面倒な事が起こりそうだったので、会わないことを願った。


 こうして聖女と話しているうちに外は夜になり、今日は野宿をすることとなった。


 聖女は馬車の中で眠るらしいが、俺が同じところで眠るわけにも行かない、俺には聖女の従者用のテントが一つ与えられた。


 明日になったらアルアーラ王都へ着くであろう。どうにかして白女神をやり過ごさなければ、そう微かに決意し、俺は目を閉じて眠ることに専念した。


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