神の加護の安売り
クランネがゴースト討伐に行くことを快諾した後、俺とリリはクランネが装備を整えるのを待っていた。
が、しかしクランネが急に体調不良を訴えてきた。
「あ、あのぉ、さっきからちょっと熱っぽくなってしまってぇ、今日は無理かもですぅ。」
それは困った。ゴースト討伐は今日のうちに済ませてしまいたい。どうしようかと悩んでいると
「でもぉ、チケットは置いていってくれていいですぅ。」
と馬鹿なことを言い始めた。まさかコイツ⋯⋯
「あ!クランネ、後ろにゴーストが!」
「ぴいいいいい!!!どこですぅ!?いやぁ!助けてぇ!」
「いや冗談だが、もしかしてお前⋯⋯」
ゴーストが怖いのか?そう問うとクランネは必死に肯定し始めた。
「ひ、ひどいですぅ!怖いに決まってるじゃないですかぁ!オバケですよぉ!?死んじゃってるんですよぉ!?」
ちなみに死霊系の魔物はこの世界では珍しくない。教会の管理していない墓地や戦場だった場所などで発生する。
本来その死霊たちを沈めるのが教会の大きな仕事の一つであるのだがこのアホシスターは⋯⋯
「ならお前今までどうしてたんだよ。」、
「そんなの泣きついたら聖女様がやってくれたに決まっているですぅ!」
決まっているですぅ、じゃねえよ!お前何にも仕事して無いじゃないか!儀式や受付業務が出来ていなかったから、せめて戦闘は出来ると思っていたのに。
「ともかく今日は風邪なんですぅ!本当なら怖いのを我慢して戦う健気なクランネちゃんを見せてあげられるんですがっ、病気なので行けないったら行けません!」
ちなみに神の力を目に流して診察してみたが、全くといっていいほど異常はなかった。とても健康である。
「ほう?では風邪が治ったら行けるんだな?」
「それは勿論ですが、病気の症状はわたしの主観で決まるんですからねぇ!」
それはもうほぼ仮病と言っているようなものだが、まあいいだろう。言質は取れた。
俺は神気を練って三度目となるスキル生成を行った。そしてそのままクランネの頭に触れた。
「な、なんですかぁ?⋯⋯あ!熱を測る振りをしてわたしに触れたかったんですねぇ?もぉー。チケットくれたらハグまでOKですよぉ!」
ウザかったので最後にデコピンしといた。
「あうぅ、なんなんですかぁ。」
「いいからさっさと行くぞ。早く来い。」
「風邪って言ってるじゃないですかぁ。」
「わかったわかった。風邪かどうかは受付いけばわかる。」
「判断を下すのはわたしですよぉ。」
なんとか渋るクランネを受付まで連れていくことが出来た。受付には先程のように聖女がいる。
「聖女さんよ、ちょっと真眼使ってクランネのスキルを鑑定してくれないか?」
「ええ構いませんけど?どうかされたんです?」
「ちょっとな。まあやってくれ。」
不思議そうにして聖女がクランネの手に触れ鑑定をする。すると次の瞬間、聖女が驚愕の声を上げた。
「クランネ、すごい!すごいですよ!貴女いつの間にっ!?」
「ふぇ?私すごいんですかぁ?」
「ええ、どれだけの徳を積めばこうなるのでしょう?神様から直接個人的なスキルを頂くなんて。」
「ええっ!?そうなんですかぁ?」
これにはアホシスターもビックリなようだ。俺はニヤリとほくそ笑む。
「貴女に与えられたスキルは『?神の加護』その効果は『全ての病気無効』です!なんて素晴らしいスキルなんでしょう!」
「え?」
聖女の大興奮とは逆にクランネは固まる。そう一切の病気は無効なのだ。つまり仮病が証明された。
「ああ、羨ましいです。私も熱心な信徒である自覚はありましたが、貴女の方がよっぽど深い信仰を持っていたのですね。すごいですよクランネ!」
あ、なんか聖女様が不憫だ。今度違うスキルをあげようかな⋯⋯。いちばん頑張っているのは勿論、君ですよ!
「ですが『?神』とはどういうことでしょうか、恐らくは私たちの信仰する白女神様、もしくは白女神様に関連する神様からの頂き物だと思うのですが。」
関連する神様、うん間違いではない。俺は全ての神に関連するからな。
「てことで、クランネ。病気ではないみたいだし、健気に戦うクランネちゃんとやらを見せてくれ。」
「へ?あ⋯⋯あれ?⋯⋯聖女様ぁ!」
咄嗟に聖女に事情を話し甘えはじめるクランネであったが。
「クランネ、今までは死霊が苦手な貴女の代わりに私が討伐を変わっていましたが、神様から直接加護を頂けるほどの信仰心なのです。死霊たちも徳の高い貴女に鎮められた方が救われるでしょう。これを機に挑戦してみなさい。私も己の信仰の未熟さを思い知りましたのでいつもよりもお祈りをしようと思います。ですのでついていけません。」
「そ、そんなぁ。」
聖女の言葉にクランネはガックリと肩を落とし、渋々ながら俺達についてきた。
数分後
「それは本当ですかぁ?わたしあそこのお店のモンブランは食べたことが無かったので今度行ってみますぅ!」
「うん、オススメだよー!クラネっち。あ、そうだーオススメと言えばー、ご主人様の作るアップルパイも絶品だよ!」
「そうなんですかっ!?シオンさんっ!リリちゃんばっかりずるいですぅ!」
リリとクランネは仲良くなれたようだ。はじめリリがサキュバスで俺の奴隷だということに驚いていたがリリが上手く説明したようだ。
「あーはい。この依頼終わった後にそのうち作ってやるから。」
「絶対ですからねぇ!」
ほんと調子いい奴だなコイツ。そんなことを考えているうちに幽霊屋敷へとついた。
「ここか。なかなか広そうだな。さすが元貴族の屋敷。」
屋敷は高級住宅地の外れにあり、貴族のものにしては少し小さめだったが、それでも一般住宅の数倍の広さはある。これで金貨5枚は破格の安さだろう。
「問題はこの広い屋敷を金貨5枚までに下げてしまうゴーストさんだな。」
「うぅ怖いですぅ。帰りませんかぁ?」
「頑張れクラネっち!ケーキのためだよー!」
「ふぇぇリリちゃぁん。」
ほんとコイツら仲良くなったな。
「ケーキ食べ放題のためゴーストなんて軽く浄化してやります!皆さんわたしに続いてくださいよぉ!」
そうクランネが無理やりテンションを上げて叫び屋敷の中へと突入して行った。
そして俺達が入る前に扉がバタンっと閉じた。押しても引いても開かなくなった。
「あれ?ご主人様。開かないよー!」
「これは⋯⋯やばいな。」
『クランネ』は1人幽霊屋敷に閉じ込められてしまった。




