女の子のおはなし
その女の子は人間だった。そう、人間だったのだ。今はもう違う存在として自分自身を認識していて、また女の子以外もそうである。
人間のふりをすることはできた。耳を隠し、牙を隠し、尻尾を隠せば、本当の彼女を隠せば誰も女の子が噂の人狼だとは思うまい。
しかし女の子はそうはしなかった。嘘はいけないことだーーーーなんていうつまらない理由などではなく、もっと明確で悲しい理由があったから。
女の子が自分は人狼だということを隠さないようになってから、なぜかより一層追われることが多くなった。ある者は騎士だったり、ある者は猟師だったり、ある者は大群を引き連れて女の子の住む山小屋を山ごと焼き払った。
女の子は住処を追われ、各地を転々と移動して逃げ回った。それも長くは続かなかった。
結局隙をつかれ攻撃され、手傷を負うことになったのだ。普通の外傷ではなく、なにやら複雑な呪いのようなものだ。
女の子はその呪いを受けてから頭がクラクラして、体もだるくて、そのせいで山の急斜面を転がり落ちてしまった。
むせ込んでしまいそうな濃い土煙の中、女の子は母親の最期を思い出していた。それと比べれば山から転がり落ちて死ぬなんてなんて幸運なのだろう。普通に死ねることをありがたく思うなど、女の子自身思いもよらないことだった。
女の子は不思議な安堵が胸に広がるのを感じて、そのまま意識を手放した。
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