間話 「ラルベス・二グール」
おばんです。約二ヶ月ぶりの更新です。
かなり遅くなったうえに、閑話ですので話はあまり進んでませんが、よければまた御付き合いお願いいたします。
分け前が良かったから、この仕事を引き受けただけだった。
ましてや子ども一人を殺せばいいなんて糞をするよりも簡単だ。
今回の仕事が終われば、かなりの大金が手に入る。
だからそれを持って祖母の待つ田舎へ帰ろうかと思っていた。
「……ごめんな婆ちゃん……」
野盗の一味ラルベス・ニグールは、抉れた横腹からだらしなく出ている内蔵を中へ戻そうとしている。
「畜生……畜生! なんで戻らねぇんだよ!」
泣きながら無理矢理戻すが、ドロドロした少し黒っぽい体液と一緒に内蔵はまた出てきてしまう。
だんだんと、息もしにくくなってきたし、凍えるように寒い。
死ぬことは恐れない。
そう誓って今まで生きてきたが、ラルベスは産まれて初めて『死』そのものを目の前にし、死にたくないと恐怖した。
「みんな……死んじまったかな……?」
ラルベスは辺りを見回すと、多分仲間であったろう肉の塊が散乱していた。
「化け物……か……あいつは」
最初の犠牲者はボスのアジールだった。
腕を引き千切られた後、リニスがアジールの顔を叩いた瞬間、まるで泥人形のようにアジールの頭部は粉々に吹き飛んだ。
その後は近い者から順に殺されていった。
そして、ラルベスの順番だ。
ラルベスは恐怖で動くことも出来ず、ただ殺されていく仲間を傍観することしか出来なかった。
「た、頼むから助けて……」
小便を漏らしながら、ガタガタと震える口で命乞いをすると、リニスは不気味な笑みを浮かべながらラルベスに顔を近づけた。
「デイニーも同じ事を言った?」
「ち、ち違うんだっ! 俺は殺してない! 頼むから助けてくれっ!」
もはや立っている事だけで精一杯のラルベスは、叫ぶように言葉を絞り出す。
「頼むっ! 頼むからっ! 俺には帰りを待つ妻も子供もいるんだ! だから見逃してくれ!」
生きるためには嘘をつかなければならない。しかし、こんな事を言ってこの化物に通用するのか、ラルベスにとっては賭けだった。
リニスは少し考え、ニコリと笑った。
「いいよ」
ラルベスが安堵した瞬間、腹部に強烈な痛みが走った。
恐る恐る見ると、リニスの手がずっぽりと刺さっていた。
「うああああああっ! 」
ラルベスがリニスの腕を引き抜くと、中から一緒に内蔵が出てきた。
死ぬ。殺される。
ラルベスはそれしか考えられなかった。
痛みなどない。あるのは恐怖だけ。
死に対する恐怖だけだ。
「あははは! 可哀想! 可哀想! あははっ!」
リニスは笑い狂ったように地べたを転げ回る。
「く、狂ってやがる……化物め……」
「……化物?」
笑うのをピタリと止め、リニスはラルベスを睨む。
「貴方の中には化物いないの? 貴方も化物だからあんな事が出来るんじゃないの? ねぇ、教えて? 私達はみんな化物を飼ってるのよね?」
「そんなこと……知るかよ……化物は……お前自身……だ……」
だんだんと意識が薄れてきた。
「そう。じゃあ私は化物でいいわ。化物の私が人間の貴方が生きて帰れるか見届けてあげる」
リニスはそう言うと手についた血をペロリと舐め、闇の中へと消えて行った。
ラルベスは殺されなかった。
だが、生きて帰る自信は無い。
自分はここで死ぬんだと確信していた。
それからどれくらいの時間がたっただろうか。
ラルベスの身体には無数の蝿が止まったり離れたりし、羽音を忙しく鳴らしていた。
ラルベスは人間から、ただの骸になっていた。




