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「どいつもこいつも役に立たないわね!」
「……わたしたちが囮になってあの“怪獣”の注意を引き付けるしかないね」
トウカはキレつつ、彼らが安全に前線から退避できるように“怪獣”の懐に潜り込んで居合を放ち、今度は左腕を肩口から刎ねた。“怪獣”の注意がトウカの方に向き、霊子砲の狙いを向けるが、そこでネルが割り込み、マニピュレーターの砲口から霊子砲を放つ。霊子砲の出力は高く、“怪獣”の巨大が圧倒され、ノックバックした。
続けざまにイノリが天照神光の8基のビットを射出し、“怪獣”の全身を切り刻んでいく。
「あれが噂に聞く神群の葬奏者たちか……」
「可憐な見た目に反して力強い……」
「――そこから逃げて!」
しかし負傷者たちに向けて“怪獣”が霊子砲を発射したのを目の当たりにしたイノリは咄嗟に割り込み、ビットを前方に集めてシールドを形成する。霊子砲はシールドに防がれ、拡散するがその威力の高さゆえに徐々にシールドは弱まっていく。
「イノリがまずい……! ネルは防御お願い!」
「……任された」
イノリのピンチにトウカとネルが動く。
「斬り咲け……鉄華!」
トウカが自身の葬奏機の銘を口にすると、突如アスファルトの地面を突き破って無数の刀が生成される。
だが、“怪獣”は恐るべき反応速度で刀を次々に回避し、トウカとの距離を詰めていく。
しかしトウカが大きく左腕を振ると、生成された刀が次々と射出され、まるで意思を持つかのようにひとりでに“怪獣”の元に殺到する。
“怪獣”の全身に無数の刀が突き刺さると、関節を固定されたことで“怪獣”の動きが遅くなった。
「ネル! でかいのぶちかましてやって!」
「……了解」
ネルが臨界巨星を構えた。
「――ブラックホールキャノン!」
臨界巨星のマニピュレーターから放たれたのは小さな黒い球体だった。しかしそれが“怪獣”の右半身に触れると、一瞬で直径3メートルほどにまで膨張し、消失する。結果として生じたのは“怪獣”の右半身を球体状に抉り取るという事象だった。
しかし、
「……もう再生した……!?」
ネルが驚愕に目を見開く。
“怪獣”は体の半分近くを消失していたにも関わらず一瞬のうちに元通りに肉体を修復していた。
「何よこの再生速度!? バケモノじゃない!」
「強力な霊子反応があります! みんな離れて!!」
直後だった。
“怪獣”の全身から無数の“目”が生じ、そこから熱線が全方位に照射された。
熱線はビルや標識、車両、地面など射線上にあるありとあらゆるものを容易く切断し、
「防御シールドが破られる!」
「ぐあっ! 腕が!!」
多くは射線を見切って回避や装備、霊能などで防御を固めるが、いくつかの人間は手足を切断され悲鳴を上げる。しかしそれでも急所を回避したのか確認できる範囲では死者は居ない。
「うう……」
「大丈夫ですか!? 今治します!」
「腕が繋がった……!」
イノリの霊能によって切断された腕が一瞬でつながり、若い葬奏者は驚嘆する。
「くそっ! また攻撃が来る!」
「防ぎます!」
イノリはすぐさま背部のビットを8基射出し、“怪獣”を取り囲み、霊子のシールドを形成する。構わず“怪獣”が熱線を放つが、それはシールドが吸収して抑えきる。しかし3つのビットが耐えられず、その場で爆散した。
「再構築します!」
しかしイノリは霊能により周囲の霊子を制御し、その場で複雑な精密機器であるビットを3つ生成した。
「信じられん……本当に俺たちと同じ葬奏者なのか……?」
「はぁ!!」
イノリが重力制御によって飛翔し、一瞬で“怪獣”のもとに到達すると両手に携えたビット・ソードで“怪獣”の両腕を肩口から斬り落とした。
しかし“怪獣”は右足を咄嗟に上げ、イノリの鳩尾目掛けて蹴りを放たんとする。
「させるかぁあああ!」
すると横合いから飛び込んできたトウカが紅夜叉の一太刀で怪獣の右足を斬り落とし、続けざまに鉄華で生成した無数の刀で“怪獣”の半身をズタズタに切り裂く。
「……やぁっ!!」
そしてネルが“怪獣”の頭上から現れ、臨界巨星の左のマニピュレーターで頭部を掴み、空いてる右のマニピュレーターの五指を広げ、勢いよく胸部に叩きつけると掌部の砲口からマイクロブラックホールを生成した。
それは“怪獣”の上半身を丸ごと呑み込み、消失させ、
「……霊核が見えたよ!」
「イノリ! やって!」
自身を見つめるトウカとネルにイノリは頷き、
「これで終わらせるよ……!」
イノリがビットを円状に浮かべ、莫大な量の霊子をその中心部にチャージする。みるみるうちに集められた霊子の塊は巨大化し、臨界点を迎えたそれをイノリは一気に放った。
そうして放たれた光は“怪獣”を呑み込んだ。




