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俺と魔王の戦闘によって校舎が半壊してからもう一週間が経った。
校舎が半壊することなんて日常茶飯事と言っていいが、それの原因が間違って召喚されたドラゴンが大暴れしたとか、魔法薬の調合が失敗して大爆発が起こったとかではなく、たった二人の学生同士の喧嘩が原因であるということはあまりないらしい。
結果、俺は教師にものすごく怒られて、二週間の謹慎処分をくらった。
ちなみに魔王は禁術を阿呆ほど連発して校舎を半壊させたことと、ボロを出しすぎたせいで事情徴収を受けさせられた挙句、一時的に精神科に収監されているらしい、ざまあ。
俺は窓ガラスを木端微塵にした以外は大した事をしていないので、謹慎二週間で済んだらしい。
俺としては二週間も、なのだが、自称慈悲深い担当教師に退学にしない事を咽び泣いて感謝しろ、とか言われたから、まだましな措置をとられたのだろう。
それだけでも辟易としていたというのに、自宅に帰れば母親から罵詈罵倒とともに殺人チョップ30連打をくらい、携帯を没収され、挙句の果てに自室に封印されるというフルコースを食らった。
何度も結界を破ろうと試みたものの――母と父の合作である対悪魔神用結界を破ることは流石に不可能だった。
物理攻撃はことごとく無効化され、魔法を使っても歯が立たず、転移魔法も使用不可。
だが、向こうからこちら側に干渉することは可能らしい。
その証拠に転送魔法で一日一回、生卵と白米が送りつけられてくる、時折小袋のマヨネーズとか甘酢生姜がつく事もあるが、基本的にそれだけ。
餓死することはないが、とても足りない。
向こうからこちらに干渉できるのであれば、なんとかこちらから外界に干渉できるのではないかと思って色々試したものの全て無駄だった。
そこまでやって何をしても無駄だと悟った俺は、余計な体力を使わないよう、何もせずに、朝が来れば起きて、夜が来たら寝るだけの生活を送るようになった。
そんな生活が続いて一週間、俺でなければそろそろ発狂してもおかしくはない。
もう一週間誰の顔も見ていない、両親やその他有象無象の事はどうでもいい、けど。
最後に見た泣き顔を思い出す、どうせあの後修復作業に駆り出されて俺のことなんてほとんど考えていないだろう。
腹いせに窓ガラスを勢い良く殴りつけるが、びくともしなかった。
舌打ちをしてベッドに寝転ぶ。
その後はやることもないので目覚まし時計のデジタル表示をぼーっと眺めていた。
もう直ぐ12時、そろそろ一日一回の食事が転送されてくる頃だ。
56、57、58、59、0。
「10分だ」
0ぴったりに響いた母親の声に訝しんでいたら、部屋のドアの前、そこに人影が現れた。
彼女だった。
目元に涙を浮かべる彼女を数秒凝視して、その顔は嫌いだとそっけなく言い渡した。
――それからぴったり10分後、逆転送魔法を阻止された母親が部屋に殴り込んできたが、無視した。
うるさい、あと一週間延長。