第12話 フォルディア帝国大使一行、惑星キュビズムを正式訪問の巻
〜ミッション: 惑星キュビズムの人々と友好関係を深めよ〜
【第一章: キュビズム首都ピカソニアン上空】
フォルディア帝国のシャトルが、惑星キュビズムの首都ピカソニアンへ降下していく。
窓の外には、ありとあらゆる角度で傾いた建物が広がっていた。
壁は斜め、屋根はねじれ、塔は回転している。
外交官A
「……あの建物、回転してませんか?」
外交官B
「してるな。あっちの塔もだ。めちゃくちゃ回ってるな」
ファンニ大使は顎に手を当て、真面目な顔で頷いた。
「陽の当たる角度によって、落ちる影も変わる。
その変化を“美”として楽しむのだろう」
外交官B
「街に出たら、100%迷う自信がありますね……」
【第二章: ホテル「ジオメトリー・コンプレックス」】
シャトルは、奇妙な多面体の建物前に着陸した。
滞在先は、ホテル「ジオメトリー・コンプレックス」。
案内ロボが、にこにこと言う。
案内ロボ
「ようこそ〜。ただいま皆さまがいらっしゃるのは、
**“上の下の階”**です〜」
外交官C
「どういう意味だよ?」
通訳官
「“上の下”だから……真ん中あたりでは?」
外交官D
「“中階”って言えよ……!」
各自、部屋に案内される。
外交官Dの部屋には、
八角形のベッドが鎮座していた。
外交官D
「うわ、角が主張してるな……」
荷物を置こうとして、足を滑らせ——
ゴンッ!!!
外交官D
「いてっ!!なんでベッドにこんな攻撃的な角があるんだよ!!」
ファンニ大使(部屋を見学しつつ、メモを取る)
「……彼らは、寝る時も“角度”にこだわるのだな」
外交官D
「(大使、さすがにそれはポジティブ過ぎませんか……)」
【第三章: 再会、A氏とB氏、そして新顔たち】
ホテルロビーには、帝都を訪れたことのある代表団、
A氏とB氏、そして新顔のD氏、E氏が待っていた。
全員、三面顔でにこにこしている。
笑顔の角度も完璧だ。
ファンニ大使は、両手で丁寧に土産を差し出した。
・四角柱パック入りレモンジュース
・10度にカットされたオレンジケーキの詰め合わせ
・幾何学模様の帝都シルク製テーブルクロス
A・B・D・E、四人が一斉に顔を輝かせる。
A氏
「%#&l;:;,///@@@@@」
B氏
「¥^_^+++++%%%////@€££」
D氏
「###%%%@@@\\\!!」
E氏
「@&@&@&%###$$$^_^!!!」
通訳官
「『とても素晴らしい。角度的に美しい!』と、
たいへんお喜びです」
外交官A(小声)
「良かった……今回は完全勝利だ……」
【第四章: A氏邸訪問 〜迷子上等〜】
ファンニ大使一行は、A氏の自宅に招かれた。
A氏の邸宅は、広大だった。
しかも、構造が意味不明なくらい幾何学的だ。
階段を下ると、なぜか上に出る。
下向きの階段を登ると、なぜか地下フロア。
もはや物理法則が負けていた。
外交官B
「ここ、本当に“家”なんですかね……?」
外交官C
「立体迷路だろ、これもう……」
ようやくたどり着いたリビングには、
巨大な八角形のテーブルがあり、その上には——
・ガラス製の四角柱グラス
・10度カットのフルーツパイ
・透き通った立方体を積み上げた謎の料理
・小さな三角にカットされた緑の葉っぱ(たぶんサラダ)
外交官C
「……“食べるのがもったいない”って、こういう料理のことだな……」
【第五章: “角ばった味”ふたたび】
A氏が四角柱グラスにオレンジジュースを注ぎ、
小さな三角柱グラスから、透明な液体を少し落としていく。
A氏
「@;:+:,.////¥%^#@€£$$_”&¥%#####%%%%」
通訳官
「『友好の印として、
キュビズムの果実“レモーナ”を少し混ぜた』とのことです」
外交官C
(……出たな、“角ばった味”フルーツ……)
外交官一行
「ありがとう、ござい……ます……」
乾杯。
グラスが八角テーブルの上で、カツンと良い角度で鳴った。
ごくり。
外交官たち(心の声)
(ああ……また口の中が四角くなっていく……)
(物理的に、味が角を持っている……)
料理はどれも、
「見た目:美術館」「味:爽やか系で普通に美味しい」
というギャップだった。
【第六章: キュビズム的ケーキ事故】
食事が一段落した頃。
A氏の子どもたち(たぶん子ども。三面顔。元気いっぱい)が、
デザートのケーキを運んできた。
子どもキュビズム人
「@@@@@——!!!」(たぶん「ケーキ持ってきたよー!」)
しかし、
テーブルの角にトレイをガンッ!とぶつけ——
ケーキが、見事な放物線と直線を描いて飛び散った。
外交官一行
「ああああああああっ!!!!」
白いテーブルクロスの上に、
クリームとスポンジとフルーツが線で描く抽象画。
A氏
「%#^*+=¥&@@@@$$^^$$$$$$$$$¥%#&@_$!!!」
通訳官
「『ケーキの飛び散りが実に美しい!
キュビズム的完璧事故だ!』と、
大変ご満足のご様子です」
ファンニ大使、すかさず乗る。
「まさに、偶然が生んだ芸術……。
実にキュビズム的美しさに満ちた事故ですね」
外交官たち
(フォロー力、神!!!!!!)
A氏家族、三面顔オール笑顔でうんうん頷く。
子どもたちもキャッキャと喜んでいる。
外交官B(小声)
「この星……価値観が一周回って好きになってきたかもしれない……」
【第七章: 夕暮れと影の幾何学】
夕陽が差し込む時間。
外に出ると、斜めに立つビル群が、
地面に複雑な影の模様を落としていた。
建物のねじれ、角度、窓の形——
それら全てが影として、幾何学的なアートを描く。
A氏
「#%^*+=\|||||”’/@@@@@@@@」
通訳官
「『今日という日、美しい時間を共有できて良かった』
と仰っています」
ファンニ大使は、胸に手を当てて微笑んだ。
「我々も同じ思いです。
素晴らしいおもてなしに感謝致します。
これからも、交流を深めてまいりましょう」
A氏、B氏、新顔のD氏、E氏。
四人とも三面顔を満開にしてにこにこ。
角度的にも完璧な笑顔だった。
こうして、
ファンニ大使一行は、
「惑星キュビズムとの友好を深める」という使命を、
無事に果たした。
【第八章: そして外交官は、ベッドの角と仲良くなる】
ホテル「ジオメトリー・コンプレックス」に戻る。
外交官Dの部屋では——
ゴンッ!!
外交官D
「いてててて……また頭ぶつけた……!!
何でベッドがこんなに攻撃的なんだよ……」
相部屋の外交官Cが、ため息をつきながら言う。
「……それも、“キュビズム的事故”ってやつだな……」
外交官D
「角度的には、完璧に痛い……」
外交官C
「うむ。見事なまでにキュビズム的だ……」
二人は、
痛みに頭を押さえながら、なぜか納得していた。
――それが、
惑星キュビズム流の「平和な一日」の終わり方であった。




