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解析スキル「アナライズ」で有能設定だけど、私は鑑定士なので受付嬢と冒険者はお断りです!  作者: 夢咲みやと
呪物と契約でエンジョイ社会人ライフ

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4 名付けは慎重に

 解析し終えた後、私から剝がれない兎と一緒にとぼとぼと城の廊下を歩く。どうしてこうなった。

 お偉方で会議をして今後の方向性を決めてから再度出頭させられるとかで、今日は解放された。それまでは、どうしようも無いと室長に言われてしまった。どっと疲れが出て、歩みを止めて壁に頭を埋もれる勢いでもたれさせる。自分を守る力を手に入れたが、呪物が物理で付くとは。屁理屈をこねればなんとかなると思ったのに、イマイチ上手くいかなかったようだ。


『お、どうしたのだ。家に帰るのでは無いのか?ワシは5000年以上神殿に居って外の世界を知らないのだ。案内せい』


 肩に乗って、手をぽふぽふと私の頬に当てながら暢気な事を言う兎を、ギンと睨む。


大事(おおごと)になったのに、観光してる場合じゃ無いわよ。そもそも主導権はどちらに有ると思ってるか分かってるかな?」


『ぬ、ぬぅ』


 兎は決まり悪げに唸ると、肩の上で大人しくなる。

 お家帰りたい。

 お布団が私を呼んでいる。

 しかしギルドに戻って、ギルド長に報告する必要もある。


 ともすれば止まりそうになる歩みを必死で進めていると、後ろから声がかかる。


「あれ、ギルド嬢の……」


 振り返ると、先日窓口で助けてくれたイクリスさんが立っていた。兎はさっと首の後ろに隠れる。


「あー……、失礼、名前を聞いていなかったね」


 うん、こちらも言って無かったですね。


「セルフィ・ミストレスと申します。先日は有難うございました」


 お辞儀をした後で顔を上げると、視線がパチリとぶつかる。


「ミストレス嬢は、何故城に?」


 冒険者のあなたが城にいるのも、良く分からないですけどね。


「私は、人手が足りなかったんで鑑定のヘルプで呼ばれたんです。イクリスさんは、どうしてここに?」


「うちは、今回の合同迷宮探索パーティーの一つだったんだ。その報告書を届けにね。しかし、城内の鑑定のヘルプに呼ばれるなんて優秀なんだね」


「はは……」


 ギルド員が城にヘルプに入る事は、殆ど無いので誤魔化す気持ちで乾いた笑いが漏れた。しかし、問題なのは髪の毛に埋もれている兎である。


『なんぞ、あの小僧は。困っているのなら、ワシが呪殺してもよいぞ』


 こわい!

 ”守る”の方向性が間違ってる!


「はいはい、黙ってようね~。大人しくしないと(ひね)りますよ」


私が小声で言うと、兎はふるりと震え完全に髪の毛に隠れた。


「私はまたギルドに戻らないといけませんので、失礼しますね」


 この呪いの人形を見られるのはヤバイ気がするので、バレる前に挨拶もそこそこに、その場を辞したのであった。


  ・・・・・・・・・・・・・


「あらァ、大変だったのねェ」


 ギルドに戻ってからギルド長に事の次第を報告すると、腕を組んで悩まし気にため息をついた。だが、それも一瞬で、すぐに私の肩に居る兎を見る。兎は城から出ると妙にリラックスして、肩に座って足をブラブラさせだした。暢気(のんき)がすぎないか。


「可愛いのに呪物なのね。私にも触れるかしら」


 ギルド長が熱視線を送ると、兎は肩に立ち上がると「シュッシュッ!」と腕を交互に出して威嚇する。


『気安いぞ、ワシに触るな!』


 そう息巻いた所で、見かけは単なる兎のマスコットである。呪物としての威厳が無さすぎる。


 ひとしきり会話の応酬をすると、兎はトンとテーブルに降り立った。そして下から横柄に見上げると、またもや腕でビシ!と私を指し示してきた。これ、この兎の決めポーズなのかな。


『そうだ、ワシに名前を付けろ。一回だけのやり取りならともかく、長い契約だとワシに名前を付ける事で、より力が強固になる』


 名前……名前……自慢では無いが私に名づけのセンスは無い。昔飼っていた犬の名前は”パチ”だった。周りには大不評だったが、犬はそれで納得してしまったので生涯変わる事は無かった。


「んっ、んんんん~~~~。うむ~~~~~?」


 ぴょんとかぴょん吉とか付けると酷い目に遭わされそうだ。うさぎ、ラビット、うさ…うさうさ……銀色、シルバー………。


「ベルジュ……」


 古代語の「兎」と「銀」をかけあわせた言葉だ。私にしては、良くひねり出した名前だと言えよう。


「よし、ベルジュでどうですか」


『ふむ……』


 兎の耳がぶんぶんとゆれている。この兎、一見銀に見えるが、質感はさらさらと捉えどころがない。某・人をダメにするビーズクッションをもう少しもったりした感触である。


 無駄に長考すると兎……ベルジュは一つ頷いた。ぽてりとした腕を私の額に当てて何某(なにがし)かを呟くと、じぃんと熱くなったかと思うとすぐに戻った。


『それで良かろう。これで完全に契約は完了だ。不本意だが守ってやろう』


せっかくなので、見かけた時から疑問に思っていた事をきいてみる。


「”願望器”なのに、何で兎のマスコット型なの?普通ゴブレットとかの形じゃない?」


 ベルジェは可哀そうな物を見る目つき……に見える気がする視線を送ってくる。


『ワシはマスコットなどではない。そもそも兎と云うのは古代では智を象徴する使徒だ。そしてこの見かけなら、思わずニンゲンが手に取ってしまうだろう』


そう言って、ニヒルに笑った…………ような気がした。


 まるで宝箱に擬態したミミックのようである。そして、君ってば触ってもいないのに契約押し付けようとしてきたよね。何と詐欺詐欺しいことか。今後は、可愛い物にも心を許さずに注意しよう。

ベルジェは耳込みで10cmくらい。ベルジュの元ネタは「アルベルジュ」です。


進め我らがナイツ・オブ・ザ・ローズ(薔薇の騎士団)だ なのです


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