1 嫌な予感は大体当たる
ギルドの説明回です
寝て起きて朝が来ると、今日も今日とて仕事だ。大きく伸びをしてトーストを焼いている間に着替えを済ませ、焼きあがる頃に着替えが終わる。紅茶を淹れ、トーストにサラダとゆで卵を付けて、優雅に朝食を取る。
素晴らしい。
今日も、パーフェクトな朝だ。
髪を整え、姿見の前でクルリと一回まわる。
よし、いつも通りである。
徒歩15分ほどでギルドに着き、制服に着替えた後で机の上を拭き、ギルドの開店に備える。
冒険者は、前日閉店間際に鑑定依頼を持ち込み朝一で報酬を受け取りに来たり、日を跨いで帰って来て開店と同時に持ち込む場合も有るから、スムーズに引き渡しが出来るようにだ。鑑定し終わった後の依頼書と金貨の袋をまとめた物と、文房具を机に整理する。
「ひー、ふー、みー、いつ、むー、なな……」
数えていると、開店してすぐに冒険者に受付のアリスさんに鑑定素材が引き渡される。
「これ、お願いねー」
窓口から鑑定室に素材が持ちこまれ、順調に仕事を進めていたのだが、或る事に気付く。
(クリムゾン・スコーピオンの買取ばかり?)
砂漠の素材で主に持ち込まれるのは、主に1m程のサンド・スコーピオンで、3m程のこのサソリはクリムゾン・スコーピオンと言って、大きいな体長3程のサソリだ。クリムゾン・スコーピオンは王都に近い場所よりは砂漠の奥におり、わざわざ依頼でも無ければ素材の鑑定に持ち込まれる機会が無い。
砂漠は方向を狂わせ寒暖の差が激しく冒険者にとっても過酷な環境なため、なるべくなら入りたくない場所だ。隣国へ入りたい場合は砂漠を避けて、草原に近い場所を通って回り道をするのが定石だ。砂漠にわざわざ進んで入っていく冒険者は少ない。ようするに、エンカウント率が低いのである。
こんなにクリムゾン・スコーピオンの査定が重なる事は、おかしな傾向だ。
(ふぅん?)
首を傾げながらひたすら数字を書いて金貨と共に受付カウンターへ行くと、いつもより傷が深い冒険者が多い。なじみの冒険者を見つけると、近寄って質問をしてみる。
「何故、今日はクリムゾン・スコーピオンの買取依頼が多いんですか?怪我人も、いつもより多いですし……。」
エインズというなじみのある30歳程のガタイの良い中級の戦士が、低い声で答えて来る。
「砂漠の奥から、どんどんクリムゾン・スコーピオンが出てきているんだ。みんな深い場所で狩った訳じゃなくて浅い所まで出て来てるやつでな。奥にクリムゾン・スコーピオより強いやつが湧いて、そいつから逃げて外に出て来てるってるのが俺らの見解だな」
「え…………」
思わず眉が寄ってしまう。
ダンジョンや狩場に強い魔物が陣取ってしまうと、それより弱い個体は、縄張りから追い出されてしまうのだ。弱い個体がそこから離れてしまうと、その個体の餌が無くなり、結局は人里近くに来てしまう場合もある。
良い傾向とは言えない。
「その内、氷雪の鷹に依頼が出るかもな」
「そうなんですか?」
『氷雪の鷹』は国内でも有名な、パーティーの名前だ。
しかし、悲しいかな。私は裏方なので冒険者の御面相について詳しくない。昔、遠目で見た事は有るけど、顔はぼや~~~っとして全く思い出せない。
「あくまで可能性の話だ。じゃあな、嬢ちゃん」
窓口を介して金貨の袋を受け取ると、エインズさんはひらひらと手を振りながら入り口で待っていたパーティーの仲間と冒険者ギルドを出ていく。
氷雪の鷹か……
パーティーと言うのは通常3人から5人ほどで組むのが普通だ。と言うのも、大人数だと連携が取りまわしが悪くなってしまう。大人数での仕事は大規模依頼などの合同パーティーの場合が多い。ソロの冒険者もいるにはいるが、よほど腕が立つ者だけだ。メンバーが複数居ないと、戦闘の役割分担やクエスト中の寝ずの番を一人でまかわなければいけない。
『氷雪の鷹』とは、その中で近頃王都に進出してきたパーティーで、25歳前後の4人組の筈だ。
戦士、戦士、魔法使い、ヒーラーと、バランスの良い組み合わせで、順調にランクをあげている。
冒険者のランクは、下からE・D・C・B・A・S・SS・SSSとなる。
SSSなどは伝説上の勇者しか認定されていないので、実質SSが最高だろう。この国が交易を行っている国の内、数か国で活動している冒険者を合わせても、SSは片手で数えられるほどしかいない。
『氷雪の鷹』はその中で、Sに近いAランクと聞いた。私は奥での仕事なので会った事は無いが、見目も良く、人気も高いらしい。
まあ、奥での仕事をしている私は会う事は無いだろう。その時の私はそう思っていた。
冒険者のPTランクとしてをざっくり。
E お使いクエスト
D 街の近くの討伐クエスト可
C 街から離れたクエスト・討伐可能
B 中堅。やや遠くのダンジョンでも生きて帰ってこれる程度。
次はお昼に投稿します
A 上級。国からの指名依頼も来る。大いなる壁。国に1パーティー居るか居ないか。
S 国を跨いで活動できる。近隣に名前が届いているくらいに有名。
SS ドラゴンが倒せると言われるランク。レアもの。探しても滅多に見かけない。
SSS 伝説の勇者に許されたランク。事実上存在しない。
パーティー内の個人での差で左右されたりもする。




