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僕の幼なじみは今夜も知らない誰かに抱かれる(R15版)  作者: 碗古田わん


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二十四、辿り着いた場所

挿絵(By みてみん)

 深夜と言っていい時間だった。

 ずぶ濡れでうずくまっていた下野(しもの)(かおる)を、加藤(かとう)小春(こはる)はとりあえず家に上げた。

 髪や服はタオルで拭いても拭ききれないぐらい濡れていたので、仕方なく小春を薫にシャワーを浴びさせた。

 濡れた服は乾燥機に突っ込み、代わりに薫の部屋着を用意する。

 シャワーを終えた薫は、髪は結ばずロングヘアのままでまるで別人のようだった。

 唯一、眼鏡だけが薫であること主張していた。

「でっ? なにがあったの?」

 リビングのソファーに座った薫の前に陣取った小春は、聞いた。

「…………」

 しかし、薫は絶望した様子でなにも答えない。

 さっきからズッとこの調子だった。

 もしかしたら、小春の声が届いていないのかもしれない。

「……ったく」

 埒があかないので、スマホを取り出した小春は、メッセの通話機能を使った。

『小春?』

 するとすぐに通話の主――――塚田(つかだ)純希(じゅんき)が出た。

「まだ起きてた?」

『そろそろ寝ようかと思ってたんだけど……』

 小春の問いに、既に眠気が襲ってきていた純希は正直に答えた。

「ちょっと厄介な荷物引き取っちゃってさぁ……今からこられる?」

 不本意そうに小春は聞いた。

『うん、いいけど』

 純希は即答した。

 小春の物言いで、眠気もいっぺんに覚めた。

「じゃあ、お願い」

 それで小春は通話を切った。

(委員長は前に、純希のことは大嫌いって、言ってたけど……)

 小春は思案した。

(雨に濡れながら、純希の家まで来たってことは……)

 そして、予想する。

(まだ、純希への想いが残っているからかも……)

 それが当たりなら、純希には心を開いてくれるかもしれない。

 そう思って純希を呼んだのだ。

 ちょっと、シャクだったが。

 すぐに、玄関の方で人の気配がした。

 どうやら、塚田家の部屋の脱出は無事成功したらしい。

「荷物ってなに……」

 リビングに入った純希は、言いかけて息を止めた。

「委員長!?」

 それからソファーに座る薫を見て、驚きの声を上げる。

「雨に濡れて、純希の部屋の前に座り込んでいたんだよ」

 驚きのあまり放心状態になった純希に、小春は説明した。

「なにがあったの?」

 それで意識を取り戻した純希は、小春に聞いた。

「それが、あたしだと黙りで……」

 小春は肩をすくめる。

 それを聞いて、純希は薫のところに近づいた。

 そして、薫と視線を合わすように、膝を折り座り込む。

「塚田……?」

 そこで始めて薫は純希の存在に気付いた。

「塚田ぁ……」

 薫の瞳から涙が零れる。

「どうしたの?」

 純希は優しく語りかけた。

「ゆっくりでいいから、順を追って話してみて」

「ぐすっ……うん……ぐすん……」

 純希の柔らかな言葉に、薫は嗚咽しながら語り始めた。

 神谷(かみや)海斗(かいと)に恥ずかしい動画を撮られたこと。

 それをネタに肉体関係を迫られ、実際に()()こと。

 媚薬を使われ、理性が飛んだこと。

 海斗が後輩を集めて、売りを始めたこと。

 父が小春のことをまだ買っていたこと。

 薄々感づいていたが、母が浮気をしていたこと。

「ちょっと待って」

 そこで小春が口を挟んだ。

「委員長のお父さんは、もうあたしを買ってないよ」

 そして、教える。

「動画流失のときに強制退会させられてる」

「でも、スマホには確かに加藤の写真が……」

 戸惑う薫に、小春はあちゃーという顔をした。

「実はこの前、委員長のお父さんにストーカー行為をされたんだよね」

 それから小春は言いにくそうに説明した。

「そうなの!?」

 その話は初耳だったので、純希は驚いた。

「銀兄ぃが丸く収めてくれたはずだったけど、まだ諦めてなかったんだ……」

 小春は、苦虫を噛みつぶしたよう顔をした。

「それで、委員長はどうしたいの?」

 あくまで優しく、純希は聞いた。

「もう……家には帰りたくない……」

 薫はポツリと言った。

「神谷先輩とも関わりたくない……」

「そっか……」

 その答えに純希は頷いた。

「小春」

 純希は真剣な目で小春を見た。

「ん?」

 その眼力に圧倒されながらも、小春は首を傾げる。

「小春の()()()で委員長を保護できないかな?」

「えっ!?」

 純希の提案に、小春は驚いた。

 小春の()()()は、元々、あこぎなヤクザの下で売春を強要されていた小春の母、加藤(かとう)昌美(まさみ)を保護するために設立された。

 その噂を聞きつけた女の子たちが次々に保護を申し入れ、今みたいな大所帯になったのだ。

「今回の委員長のケースも保護の対象にならないかな?」

「うーん……」

 小春は、純希と薫の顔を交互に見ながら悩んだ。

 正直、小春は乗り気ではなかった。

 薫との因縁もある。

 それに不特定多数の男性(ひと)()()ことは、けして簡単ではなかった。

「もし、事務所で保護すると、委員長も()()をすることになるけど、それでもいいの?」

 なので、小春は抵抗してみた。

「……構わないわ……どうせもうわたしの身体は汚れちゃったし……」

 薫はうなだれながら、応えた。

「それに自立するには、お金も必要だし……」

 そして、付け加える。

「うーーーん」

 薫の決意を聞いて、小春はさらに悩んだ。

「小春」

 期待の目で純希は聞いた。

「わかった」

 こうまでして純希に頼まれては、小春も断れない。

「とりあえず、銀兄ぃに聞いてみるよ」

 それでいい? と純希に目配せした。

 純希はコクッと頷いた。

 スマホを取り出して、メッセの通話機能で、(つるぎ)銀治郎(ぎんじろう)を呼び出す。

『どうした?』

 夜遅い時間だったが、銀治郎はコール一発で出た。

「実は……保護してほしい()がいるの」

 と、切り出した小春は、事情を説明した。

『話はわかった』

 最後まで聞き終えた銀治郎は、いつもの固い口調で応えた。

()()と相談してみよう』

「ありがとう、銀兄ぃ」

 それで通話は終わった。

()()と相談してくれるって」

 小春は結果を純希に報告する。

「なら、あとは明日だね」

 頷きながら純希は、ホッと胸を撫で下ろした。

「今日はお母さんの寝室で休んで」

「……加藤のお母さんは?」

 小春の言葉に薫は首を捻った。

「入院中」

 それに小春は、なんでもないような言い方をする。

(だから、()()を……)

 小春が母子家庭であることは知っていた。

 一年生のときに純希の情報を集める課程で得たのだ。

 寝室は主がいないにもかかわらず、誇り一つなく清掃されていた。

 ()()のない日に小春が掃除しているのだ。

 いつ母が帰ってきてもいいように。

「じゃあ、おやすみ」

 薫がベッドに入ったのを確認してから、小春は部屋の灯りを消した。

 眠りにつこうとした薫だったが、目がさえてなかなか眠れなかった。

 身体は疲れているのに、それでも眠れない。

 何回も寝返りを打って、薫はベッドでもがいた。

 そうしているうちにトイレに行きたくなった。

「はぁ…………んっ」

 トイレに行こうと小春の部屋の横を通り過ぎたとき、薫は小春の喘ぎ声を耳にした。

 いけないと思いつつも、ドアをソッと開けて薫は中を覗き見た。

「!?」

 そこでは純希と小春が、()()に及んでいた。

(なんだ……やっぱりつき合ってるじゃん)

 薫は思った。

 だが、自分でも驚くぐらいに心は平穏だった。

(こんなこといけないのに……)

 本当はすぐにでも立ち去るべきなのだろうと思った。

 けれども、二人が()()から目が離せなかった。

 薫はソッと胸に手を伸ばした。


 ♢♦♢♦♢♦


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 行為が終わり、純希は荒い息で小春の横にな転がった。

 すると、いつのなら余韻に浸っている小春が突然、起き上がる。

 裸のまま、ベッドを下りてドアへと向かう。

 そして、躊躇無くドアを開けた。

 そこには、絶頂の余韻で呆けている薫がいた。

「委員長!?」

 純希は驚いた。

「覗き見なんて、いい趣味してるわね」

 腕を組んだ小春は、薫を詰問した。

「こ、これは……」

 まだ頭が回りきって折らず、薫は言い訳を思いつけなかった。

「……嘘だったのね」

 ようやく、それだけ絞り出す。

「何の話?」

 薫の言葉に小春は眉を顰めた。

「加藤とはつきあってないって言ったのに……」

 感情のブレで薫は涙目になった。

「そっ……!」

「つき合ってないよ」

 純希がなにか言おうとしたのを遮って、小春は答えた。

「あたしたちは、ただの幼なじみだよ」

 そして、言い切る。

「あっ、でも、()()()から、ただの、ってことはないか」

 だが、すぐに発言を修正する。

「そういういことも()()、幼なじみだよ」

「それって、セフレじゃ……」

 小春の言い分に、薫は唖然となった。

「そうかもね」

 小春は薫の指摘を否定しなかった。

「あたしは、純希と()()のが好き」

 小春は今度こそ言い切った。

「だから、()()()の」

 そして、鋭い口調で薫を刺す。

「いけない?」

「…………」

 それを聞いた薫は、地味にショックを受けた。

「……」

 小春にそこまで言われてなにも言えなく言えなくなってしまう。

「つ、塚田はそれでいいの?」

 なんで、薫は矛先を変えた。

「いいんだ」

 動揺を悟られないようにしながら、純希は答えた。

「僕も小春と()()のが好きで、()()()んだ」

「加藤が他の男性(ひと)()()()も?」

「それでも、だ」

 純希はハッキリとした口調で宣言した。

 その結論ならもう出ている。

「そうなんだ……」

 それを聞いた薫は、一応、納得して見せた。

 だが、頭の中は未整理で、いろいろな思いが飛び交っていた。

(それって、恋人とは何が違うんだろう?)

 フッと思う薫だった。

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