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僕の幼なじみは今夜も知らない誰かに抱かれる(R15版)  作者: 碗古田わん


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18/26

十八、過ち

挿絵(By みてみん)

 夕方の校舎は人気も無くひっそりと静まりかえっていた。

 最終下校時間を過ぎて、残っている生徒もまばらだったからだ。

 誰もいない廊下を、下野(しもの)(かおる)は早歩きで急いでいた。

 生徒会が終わり、いざ帰ろうとしたとき、教室にプリントを忘れたのに気付いたのだ。

 二年B組に入り、変わったばかりの自分の席の机の中を見る。

 そこには数学のプリントがポツリと残されていた。

 無事、忘れ物を回収した薫は教室を出た。

 本来なら、そのまま下駄箱に向かうところだが、薫はそうしなかった。

 隣の教室――――二年A組の様子をうかがう。

 教室には人の気配は無かった。

 それを確認して薫はそっとA組へと入った。

 そして、()()()()()()()()()()()()()の席までくる。

「塚田……」

 その席の主を薫は知っていた。

(大嫌いなのに……)

 ()()()、確かに自分はそう言った。

(塚田のことを考えると、切なくなるのはなぜ……?)

 薫は自問した。

(今まで散々、()()()にしてきたから……?)

 矛盾する感情に、そんな予想を立ててみる。

 真面目で清廉潔白な委員長でも、()()()()()()するのだ。

「塚田……」

 もう一度、その名を呟く。

 その語尾には憂いが混じっていた。

 いけないことだと知りつつ、薫はソッとスカートをたくし上げた。

 飾り気の無い綿生地のショーツが露わになる。

 それから、股間を机の角に押しつけた。


 ♢♦♢♦♢♦


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 荒い息で薫はしばらくの間、絶頂の余韻に浸っていた。

()()、やっちゃった……」

 興奮から冷めて、薫は自己嫌悪した。

 学生カバンからウェットティッシュを取り出し、()()()机の角を入念に拭き取る。

 その様子を、少しだけ開いた教室のドアからスマホのカメラで撮られていることは気付かなかった。


 その翌日。

 塚田家の朝はいつも通りだった。

 父、塚田(つかだ)純生(すみお)に母、塚田(つかだ)希美(のぞみ)と純希。

 それに加藤(かとう)小春(こはる)が加わって、談笑しながら朝食を食べていた。

「あっ……」

 と焼き魚をつまんだときに、小春が間の抜けた声を上げた。

「どうしたの?」

 きんぴらに箸を延ばしながら純希は聞いた。

「今日、日直だった!」

 小春は叫んだ。

「早く食べて、学校行かなきゃ」

 そして、慌てて食事のペースを速めた。

「じゃあ、僕も」

 純希もそれに合わせて、食事のペースを上げようとした。

「あっ、純希はゆっくり食べてていいよ」

 しかし、それを小春が止めた。

「今日はあたしだけ、先行くから」

「そぉ?」

 純希は腑に落ちない様子だったが、その間にも小春はダッシュで食事を済ませる。

「ごちそうさまでした!」

 慌てて立ち上がって、使用済みの食器をシンクに持っていく。

「お弁当、持ってってね」

 そのまま出て行きそうになる小春に希美が声を掛けた。

 小春の弁当は基本的に希美が作っている。

 これは中学に入ってからの慣例になっていた。

 元々、朝食を塚田家でいただくこと自体が、小春が隣に越してきたときからの慣例だった。

 小春の母、加藤(かとう)昌美(まさみ)が、夜が遅く朝起きられないことが頻繁にあったので、見かねた希美が助け船を出したのだ。

 もちろん、朝食代と弁当代は毎月、きちんと支払っている。

「いつもありがとうございます」

 お礼を言った小春は、弁当をリュックに詰めた。

「じゃあ、行ってきます!」

 それから、元気よく玄関を飛び出した。

 その勢いのまま、小春は通学路をひた走る。

 校門を駆け抜けて、下駄箱で上履きに履き替えた。

 その足で職員室へと向かう。

「おはようございます!」

 元気よく挨拶して、小春は職員室に入った。

「おはよう、加藤さん」

 するとクラス担任の宮城(みやぎ)尚子(なおこ)が挨拶を返す。

 二十代後半の独身女性だ。

「これね」

 尚子は学級日誌を小春に差し出した。

「ありがとうございます」

 日誌を受け取った小春はお礼を言ってから、職員室を後にした。

 それから二年B組に上がる。

「おはよー!」

 まだ誰も来ていないとは思ったが、それでもいつものように元気よく挨拶して、教室に入った。

 が、

「……」

 無言で薫が睨みつけてきた。

 その眼光に、小春は一瞬、タジッとなった。

「あはは……、早いんだね、委員長」

 とりあえず、小春はコミュニケーションを取ろうとした。

「……」

 しかし、薫は小春を無視して、黙々と黒板を消していた。

 そこで小春は、いつも薫が朝一番に来て、日直の仕事をやってくれていることを思い出した。

「じゃあ、あたしは花瓶の水を……」

 リュックを自分の机の上に置いてから、小春は働こうとした。

「もう終わってるから」

 しかし、咎めるようなキツい言い方で、薫はその行動を止めた。

「じゃあ、窓を……」

 と言いかけて、小春は既に窓も開けてあることに気付いた。

 そんな小春を一瞥して、薫は黒板の日直欄に小春の名字を書いた。

「あたしの出番はなさそうね」

 小春は肩をすくめるしかなかった。


 休み時間になり、二年A組では純希が次の授業の準備をしていた。

「?」

 すると廊下が騒がしい事に気付く。

(なんだろう?)

 背を伸ばして、純希は廊下側を見た。

「げっ!」

 純希は思わず呻いた。

 そこに、神谷(かみや)海斗(かいと)の姿を見つけたからだ。

(また僕に用事だろうか?)

 純希は思った。

(まさかと思うけど、五十万、用意したのか……?)

 そして、疑った。

 例の噂はまだ消えてはいなかった。

 第二第三の花江(はなえ)(ひろし)が現れないという保証は無い。

 すると、純希は海斗と目が合った。

 しかし、すぐに目を反らされる。

(僕に用って訳じゃなさそうだな)

 その反応(リアクション)に、純希はホッと胸を撫で下ろした。

「神谷先輩、二年の階まで何の用?」

「また、女子をあさりに来たんじゃない?」

 クラスの女子が噂する。

 海斗ははっきり言ってモテる。

 容姿端麗なのに加えて、夏までサッカー部の主将を務めていたエースストライカーだ。

 なので、女子なら選びたい放題で、実際につき合った女子は何人もいた。

 しかし、つき合って早々に身体を求めて嫌われることを繰り替えしていた。

 そのため、女子ウケはすこぶる悪かった。

「なにしに来たんだろうね?」

「視線だけで妊娠しそうだから、来てほしくないんだけど」

 それはもう言いたい放題である。

 だが、当の海斗はそれを気にする素振りも見せずに、開けっぱなしの教室のドアから中を物色していた。

 そこで予鈴が鳴る。

「ちっ!」

 海斗は舌打ちをして、二年A組を離れる。

(なんだったんだ?)

 純希は思案した。

 しかし、特に理由は思いつかずに授業が始まった。

 その後も、海斗は休み時間になると、二年A組を訪れた。

 さすがにクラス全員が訝しげに海斗を見た。

 その騒ぎはB組まで伝わってきた。

 怪訝そうな顔で、薫は様子をうかがうために廊下に出た。

「いた」

 薫を見つけた海斗は、邪悪な笑みを浮かべた。

「ちょっと、用があるんだけどつき合ってくれないか?」

「だ、誰ですか?」

 海斗の台詞(ことば)に、薫はあからさまに警戒した。

「俺のこと知らないんだ?」

 海斗は意外そうに言った。

「俺は、三年の神谷」

 そして、自己紹介する。

「あんたは……下野か」

 海斗はネームプレートの名字を読み取った。

「くっ!」

 その態度に薫は思わず、ネームプレートを手で隠した。

 それを見て、海斗はニヤニヤと笑みを浮かべた。

「何の用ですか……!?」

 そんな海斗の態度に、薫は怒気を含ませた。

「ここだと話づらいから、場所、変えようや」

 だが、海斗はお構いなしで提案する。

「ここでしてください」

 海斗の案に乗るのは危険だと思った薫は、きっぱりと言った。

「いいのか? そんなこと言って」

 言いながら海斗は薫の耳元に顔を近づける。

「昨日の夕方、A組でしていたことの件なんだけど?」

 海斗の囁きに、薫の血の気がサーッと引いた。

「ついてきてくれるよな?」

 固まってしまった薫の肩を抱いて、海斗は再びニヤニヤと笑みを浮かべた。

 薫は蒼ざめた顔で、コクッと頷くことしかできなかった。

 二人は、誰もいない階段の踊り場に移動した。

「これを見てくれ」

 海斗はスマホを取り出すと、あらかじめ用意していた動画を再生した。

「!?」

 それを見た薫は絶句した。

 画面には、昨日の夕方、純希の机で一人で()()()()薫が映っていたからだ。

「盗撮したの!?」

 薫は眉を揺り上げて怒った。

「せっかくの絶景を見るだけじゃ勿体なかったからね」

 しかし、海斗は悪びれた様子もなくいやらしい笑みを浮かべる。

 この場面に出会したのは偶然だった。

 補習で校内に残っていた海斗は、二階に下りたときに微かな喘ぎ声を聞いた。

 それでソッと声のする方へと歩いて行くと、廊下の窓越しに薫の姿をみつけたのだ。

「これを拡散されたくなかったら、わかるよな?」

「……!」

 海斗の問いに、薫は唇を噛みながら頷くしかなかった。

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