一、純希と小春
それは夏休みも終わった九月の初旬のことだった。
市立瀬渓東中学の二年A組は、帰りの学活を終えて、生徒たちが次の行動に移っていた。
足早に部活へ行く者。そのまま教室に残り、放課後の予定を話し合う者。帰ることを惜しんで、そのまま教室で駄弁る者。それぞれ思い思いの行動をしていた。
塚田純希もその一人だった。
セミロングの黒髪に、優しげな眼差しをしたおとなしそうな少年だ。身長はそれなりにあり、体格は中肉中背だが、運動はあまり得意では無いどこにでもいるただの中学生だった。
部活には入っていないので、純希は、机の中の教科書をリックに入れて帰る準備をしていた。
すると、
「純希!」
と、教室の後ろの出入り口から、自分を呼ぶ声がした。
そこには、サラサラの黒髪をショートボムにして、くりっとした目にややぽっちゃりとした顔をした美少女が、満面の笑顔で立っていた。
幼なじみの加藤小春だ。
「帰ろっ! 純希」
「うん」
それに答えてから、純希はリュックを背負うと教室を出ようとした。
「あれでつき合ってないんだって」
その間にコソコソ噂話をする生徒たちの声が聞こえる。
「ただの幼なじみなんだって」
だが、これはいつものことなので、無視して小春のとこへと着く。
「ただの幼なじみだって」
昇降口に向かう途中で小春は無邪気に笑った。
「間違ってないだろう?」
「そぉ?」
純希の言葉に、小春は意味深に首を傾げた。
(まぁ……確かに、ただの、ではないけどさ……)
純希は思ったが、それを口には出さなかった。
「そういえばさ、今日、国語の時間にね……」
帰り道、二人は今日あった面白い話やおかしな先生の話、クラスメイトの失敗談なので盛り上がった。
それが一段落ついたところで、
「今日は、する?」
不意に小春が聞いてきた。
「今日は仕事はいいの?」
内心ふてくされながらも、それを奥目にも出さず、純希は聞き返した。
「今日は夜からだから」
それに小春は無邪気な笑顔で答える。
「昨日はできなかったから、溜まってるでしょ?」
「それはそうだけど……」
悪戯っぽい笑みを浮かべた小春から目を反らすようにそっぽを向いた純希は、ぎこちなく頷いた。
「じゃあ、決まりね」
ニコリと微笑んだ小春は、もう待ちきれないとばかりに足を速めた。
「こ、小春!」
慌てた純希も足を速める。
そのまま二人は住んでいるマンションまで帰ってくる。
エントランスを抜けてエレベーターで三階まで上がる。
そして、エレベーターを降りると小春の部屋の前まで来た。
小春はスカートのポケットから鍵を取り出すと、扉のロックを解除する。
「ただいま」
返事はないのはわかっていたが、それでも習慣で小春は声を掛ける。
「お邪魔します……」
そして、純希はいつも通り遠慮がちに玄関を上がる。
そのままリビングには行かず、真っ直ぐ小春の部屋へと入る。
小春の部屋は四畳半で、室内は壁紙も机も家具も白いに統一されていた。机の上はきちんと整理され、そのすぐ横の壁にはコルクボードが掛けられていて、家族写真や友達との写真が貼り付けられている。本棚には、あまり本は入っておらず、代わりにぬいぐるみが飾られていた。
「じゃあ、しようか?」
壁掛けフックにリュックを掛けてから、小春は妖艶に微笑んだ。
「うん」
部屋の隅にリュックを置いた純希も頷く。
「キスからね」
顔を僅かに高揚さて小春は唇を、純希に近づけた。
純希は黙ってそれを受け入れる。
二人の唇が重なった。
そのまま、小春は純希の口の中に舌を入れる。
応えるように純希も舌を絡めた。
「ちゅぱっ……ちゅぷっ……」
淫靡な音が部屋に響く。
しばらく二人は唇と舌の感触を楽しんだ。
だが、すぐに純希が我慢できなくなり、プリッツスカート越しに小春の後部に手を伸ばす。
そして、柔らかな臀部を鷲づかみにして愛撫し始めた。
「駄目……制服シワになっちゃう」
唇を離した小春が喘ぐように諭した。
「脱ご?」
小春に即されて、純希は制服を脱ぎ始めた。
同時に、小春も制服を脱ぐ。
スカート横のホックを外して、スカートを脱ぐ。
それを丁寧に畳んでから部屋の隅に置く。
ブラウスのリボンを抜き取ってスカートの上に置くと、ブラウスのボタンに指を掛けた。
下までブラウスのボタンを外して、ブラウスを脱ぐ。
それも畳んでスカートの上に置くと、ブラ透けよけのベージュのキャミソールを脱いだ。
これで小春の身体を隠すのは、白いブラとショーツのみになった。
背中に手を伸ばしてブラのホックを外す。
ブラが脱げて、まだまだ成長途中のBカップの胸が露わになる。
ショーツの左右のゴムに指を掛ける。
そのまま八十二センチの臀部をまるで桃の泡を剥くようにショーツが滑り、脱げる。
足下まできた紐のようになったショーツを左、右の順番で足首から抜く。
最後に、靴下を脱いで、小春は全裸になった。
その間に純希も制服と下着を脱いで、全裸になっていた。
そして、二人はそのままベッドに入った。
♢♦♢♦♢♦
一回戦を終えて、二人はベッドに仰向けになって寝転がっていた。
フッと気になって、小春はベッドから半分身体を伸ばすと畳んであったスカートのポケットからスマホを取り出した。
「あっ! もうこんな時間!」
スマホの時計を見て、小春は驚いた。
仕事の時間まであまり間がなかったからだ。
「あたし、シャワー浴びなきゃ!」
ベッドを飛び起きた小春は裸のまま浴室へ向かった。
それを苦笑いで見送ってから、純希も服を着始めた。
制服を着た純希は、そのまま浴室へと向かった。
脱衣場に入るとまだ小春はシャワーを浴びている最中だった。
「じゃあ、僕は帰るから」
曇りガラス越しに小春に声を掛ける。
「うん! また明日ね」
それを聞いて純希は、小春の家を出た。
念のため、持っていた合鍵で玄関を施錠する。
それからすぐ隣の部屋の扉に鍵を刺した。
純希と小春は、お隣さんなのだ。
「ただいま」
純希が自宅に入って声を掛ける。
しかし、返事はない。
「母さん、まだパートから帰ってないのか」
玄関からリビングに入り部屋の電灯を付ける。
それからカーテンを閉めると、リュックを適当に放り投げて、ソファーにドサッと座り込んだ。
「小春は今日も仕事か……」
そして、溜息をつく。
自分の中では既に結論が出ているはずなのに、納得できない純希だった。




