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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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第128話 麗子様は初恋はカルピス味と知る。


 ふぁ〜、なんなの、このイケメン!

 色気よ色気! まさに色気の塊よ!


 長い髪を後ろで纏めて、スーツは襟を大きく開けて着崩している。それなのに、だらしなさが微塵も感じられないの。


 うーん。むしろ、これこそこのお方にピッタリなスタイルだって思えて違和感が全然ないわ。スラリとした高身長がスタイリッシュな印象を与えているのね。


 くっ、開いたシャツから覗く胸がセクシーだわ。じゅるり。


 ご尊顔は切れ長の目で鋭利な雰囲気があるけど、決して冷徹に見えないわ。むしろ、薄っすらと浮かべた微笑みがミステリア〜ス。


 なんかこう……見えないはずの色香が色として見えてしまうような濃密な色っぽさ。今までにないセクシャルなイケメン様だわ。


 見てると、惹き込まれてしまいそう。


 ドキドキ……なにかしら、さっきから心臓がバクバク高鳴ってるわ。


「よっ、雅人」

「……冬馬か」


 この色気ムンムン長髪イケメン様は冬馬様とおっしゃるのですか。


 随分お兄様と気安い感じですね。

 仲の良いご友人なのでしょうか?


 でも、それにしてはお兄様が嫌な顔をされておられるのが気になります。ですが、名前で呼び合っておられますし、険悪ってことはないでしょう。


「お兄様、こちらの方は?」


 ちょっと早くご紹介くださいませ。ソワソワ。

 このイケメンはどなたなんですか。ワクワク。


「……麗子、こいつは絶対ダメだからね」

「いったい何のお話ですの?」


 私はただお兄様の恥にならぬよう、ご友人にキチンとご挨拶申し上げたいだけですわ。


 なんです、その絶対違うだろうって胡乱げな目は?

 お兄様、私をお疑いになるなんて。麗子、悲しい!


 ……まあ、ちょっと、胸がときめいているのは否定しませんけど。


 ちょっと、お兄様、紹介したくないって、それは子供じみてますわよ。どうされたのです。いつもは大人なお兄様が。


 ほらぁ、お兄様の頑なな態度に冬馬様も苦笑いされておられるじゃないですか。


「君が麗子ちゃんだね」


 だけど、そんなお兄様に文句一つ漏らさず、ご自分から話を切り出されるなんて。とってもスマート。


 ここは私も大人の対応を、と。


「はい、清涼院雅人の妹、麗子と申しますわ」

「俺は水無瀬(みなせ)冬馬(とうま)。雅人の……まあ、悪友ってヤツかな」


 妖しく微笑みながら人差し指を唇に当ててパチンッとウィンク。


 きゃーーっ、いやんいやん、ステキーーー!

 やべぇ、胸キュンですわ。ワクテカですわ。


 ハァハァ……おばちゃん、おひねり上げちゃおうかしら。いや、私は別に前世でホストに入れ上げたりしてないわよ。


「麗子ちゃんの噂は高等部でもよく耳にしていたよ」


 そう言えば、美咲お姉様や舞香お姉様もそのようなことをおっしゃっておられましたね。


「ずっと挨拶したいとは思っていたんだけど、雅人が俺に紹介してくれなくってさ」

「まあ、そうなんですの?」


 どうしてそんな意地悪をなさるんですか――って、どうしたんですか、お兄様。そんな苦虫を百万匹くらい噛み潰したように顔を歪められて。


「だけど、こうして会ってみて、麗子ちゃんを隠してきた雅人の気持ちが理解できたよ」

「ふふっ、不肖の妹を恥じて、ご紹介できなかったのですわね」


 あゝ、お兄様、そんなに風と木の詩を高等部まで響かせたのを怒っておられるのですわね。未だにオーギュスト雅人の噂が止まないとは耳にしておりましたが……ごめんよぉ。


「いやいや、麗子ちゃん可愛すぎるからさ」

「そ、そうでしょうか?」


 いやぁん、可愛いだなんて、そんなー。

 まあ、私ってバリバリ美少女ですけど。


「ああ、こんな魅力的な女の子が妹だと、誰だって野郎どもに会わせたくなくなるさ」

「あら、それでしたら自慢したくなりません?」

「だって、悪い虫がたかるだろう?」


 俺みたいなね――って、冬馬様みたいな悪い虫なら、いくらでもたかって構いませんわ。むしろ、たかって。


「そんな……私なんてまだまだ子供で……殿方から相手にされない寂しい女ですわ」


 我、ドリラーの非モテ女子やからな。

 マジで男が寄りつかんのや。くすん。


「それは麗子ちゃんが美人すぎて並の男じゃ近づけないのさ」

「もう、冬馬様ったら冗談ばっかり」


 女の子を喜ばせる一つ一つの所作が洗練されてて、冬馬様っておっとな〜な感じよね。


「俺の口は真実の言葉しか出ないよ。君みたいな可愛い子が相手だとね」


 いやぁん、お世辞だって分かってても、嬉しすぎて顔がニヤニヤしちゃいそう。女の子を持ち上げるのがお上手なんだからぁ。


 くぅ~、キュンキュンが止まらずキュン死しそう。


「みかの原 わきて流るる いづみ川……」

「いつみきとてか 恋しかるらむ」


 いきなり冬馬様が和歌を誦じたので、思わず下の句を返したけど……冬馬様にちょっとびっくりした顔をされちゃった。


 うーん、これって、一度も会ったことのない相手を恋しく想うって百人一首よね?


 なんだろうって考えてたら、ニヤッと冬馬様が妖しい笑みを浮かべたけど……なに?


「へぇ、即答されるとは思わなかったな」


 ぎゃーーー!!!


「凄いね、麗子ちゃん」


 冬馬様のお顔が急接近!?


 さらに私の耳元に口を寄せてきて――


「やっと募る想いが叶ったよ」

「――ッ!?」


 ――ズキューーーン!!!


 やばい、やばい、やばいやばいやばい、これはやばい!


 麗子、もう胸キュンが止まりませぬ!


「こら冬馬、近寄りすぎだ!」


 お兄様が私と冬馬様の間にグイッと体を割り込ませてくる。

 もう、お兄様ったら、嫉妬ですか?


「あははは、そんな怒んなッて」


 まっ、冬馬様がお兄様の肩に手を回されましたわ。


 こう、二人が肩を寄せ微笑み戯れる姿は何かイケナイものを見ているようで、背徳感満載ですわ。


 これってまさか、冬馬様×お兄様!?


 イケメン同士でベタベタと不健全ですわよ――いいぞ、もっとやれ!


 やっぱり、冬馬様って官能的なイケメンさんよね。だけど、軽薄さが感じられないのは、酸いも甘いも知り尽くしたような大人な雰囲気のせいね。


 リードしてるのは冬馬様の方みたいだし。このお方と並んだら、お兄様でさえ子供っぽく見えちゃうもの。


 妖艶とはこのお方のためにある言葉に思えちゃう。中身アラサーの私もドッキドキよ。


 それにしても、お兄様がここまで他人に接近を許すなんて意外だわ。初等部の菊花会(クリザンテーム)では、こんなにベタベタしているご友人はいなかったのに。いやん、麗子、嫉妬!


「お二人はとても仲がよろしいんですのね」

「違うぞ、麗子。これは腐れ縁というやつだ」


 えっ、腐ってる!?


 やっぱり、お二人は腐のご関係ですのね。


「麗子、おかしなこと考えてるだろ?」

「なんのことでございましょう?」


 高尚な薔薇については妄想しておりましたけど。


 あら、どうしてお兄様はそんな疲れたお顔をなさっておいでなのです?


「あははは、麗子ちゃんはとても愉快な子だね」

「冬馬様、それは女性に対する褒め言葉ではありませんわよ」


 まったく失礼しちゃうわ。ぷんぷん。


「いいや、最高の褒め言葉さ」

「どこがですの」

「とても興味を惹かれるし、誰よりも魅力的だからさ」


 えっ? なんか、急に冬馬様の雰囲気がさらに妖しさを増したような?


「うん、麗子ちゃんって、可愛くって素敵だと思うよ」


 ちょっ、可愛って、やだやだやだ、顔が熱い!


 私の顔、絶対まっ赤になってるわよ。恥ずかしい……


「俺は好きだなぁ、麗子ちゃんみたいな子」


 好き? 好き? 冬馬様が私を好き?


 やばい、頭が真っ白――スキスキスキ……冬馬様は私をスキ……


「こうなると思ったから、冬馬を合わせたくなかったんだ」

「なにか問題があったか?」

「ちっ、この天然スケコマシめ」


 あ〜、お兄様と冬馬様がなにか言い争いを……まあ、いっか、それよりスキスキスキ……冬馬様は私をスキ……


「だいたい、お前は今日欠席するって言ってたじゃないか」

「ああ、そのつもりだったんだけど、なーんか気が変わってさ」

「他の女を口説いていれば良かったものを」

「いやー虫の知らせってやつ? 麗子ちゃんと会えそうな気がしてさ。運命を感じるな」


 運命……私と冬馬様の出会いは運命……きっと赤い糸で……


「最悪だ」

「そうか? 俺は今日は来てよかったと思ってるぜ。()()()()ちゃんに挨拶できたからね」


 ……うん、まあ、分かってた。


 冬馬様にとって親友のお兄様のおまけなのよね。私って。


 なにかしら……ズキンッて胸が痛いのは。

 どうしてかしら……目から涙が零れそう。


 ああ、分かった。理解した。


 そうだったのね――私はすとんと腑に落ちた。


 ――これが恋なんだって。


 私……冬馬様を好きになっちゃったのね。


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