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23.おチビちゃん 最後の挑戦(& 俺の挑戦)-3

(……ん?)


 甘い香りがした直後、唇に、温かくて柔らかいものが触れた。

 ような気がした。

 目を開けると、視界に入ったのは、離れていくおチビちゃんの髪と顎のライン。


 あれ?

 もしかして……?

 もしかするのかっ……?!


 勢い良く飛び起きると、隣に座っていたおチビちゃんが、驚いて座ったまま飛び上がった。

 なんて器用なヤツなんだ。


「悪いっ!俺、寝てた」

「うん」


 日が傾き始め、俺が来た時よりも辺りが少しだけ暗くなってきている。


「どれくらい寝てた?」

「ん~、一時間くらい、かな」


 答えるおチビちゃんの顔がうっすら赤く見えるのは、きっと夕日のせいだけじゃないはずだ。


「寝てたら起こしてくれって、ミチから連絡無かった?」

「あった」

「じゃあ、起こしてくれれば」

「寝顔」

「ん?」

「見てたかったから」


 そう言って、おチビちゃんは恥ずかしそうに笑う。


「悪趣味だな」

「うん」

「で」

「なに?」

「寝込みは襲えたのか?」


 一瞬の、間。

 息を飲むおチビちゃん。


「ひひひと聞きの悪いこと言うんじゃないわよ、高宮 漣!」

「誰も聞いてねえし、誰も見てねえよ」


 さっきまで河川敷で野球をしていた小学生たちも、ランニングのおじさんも、犬を連れたお姉さんも、もういない。


「誰も見て無いんじゃ、何の証明もできないよな。俺も、爆睡してたし」

「えぇっ?!」


 悲鳴のような、そしておそらくは抗議の声をあげるおチビちゃんに構わず、俺は再び草っぱらの上に寝転がり、目を閉じた。


「今度は寝ない。目を閉じてるだけだ」


 1回出来たら、それ以降はもう、2回も3回も10回も100回も変わらないはず。

 それでも、なかなか動く気配の無いおチビちゃんに、俺は言った。


「冷えてきたぞ。お前、俺に風邪をひかせるつもりか?」


 意を決したのか。

 ゆっくりと、おチビちゃんが動く気配がする。


(そうだ。がんばれ、おチビちゃん!)


 少しずつ、温もりが近づき。

 甘い香りに包まれた直後。


 おチビちゃんの唇が、俺の唇にそっと触れた。

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