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21.おチビちゃん 最後の挑戦(& 俺の挑戦)-1

「なぁ、ミチ」

「なに?」


 帰り支度中のミチに、俺は声をかけた。


「大野の……大野 沙希の連絡先、知ってる?」


 ミチがおチビちゃんと繋がってることは、もう分かっている。でも、敢えて知らない振りをして、聞いてみた。

 ミチは、驚いた顔をしている。もしかして、何か警戒させてしまっただろうか?


「知ってるけど、なんで?」

「ちょっと連絡とりたいんだけど、さ。俺、知らないんだよ、大野の連絡先」

「え?」


 嘘でしょ?

 ミチの目が、そう言っていた。

 まぁ、そうなるよな。

 俺だって、そう思う。

 おチビちゃんとは、なんだかんだで結構長い付き合いになってきていたし。

 でも、知らないものは知らないのだから、仕方ない。


「悪いけど、駅の向こうの川の、堤防下の河川敷にいるから来てくれって、伝えてもらえるかな。あと、寝てるかもしれないから、寝てたら起こしてくれって」


 念のために、ちょっと寝不足でさ、と付け加えておく。


「あ、うん。わかった」

「サンキュ」


 おチビちゃんのクラス、今日の6限は、体育だ。学校を出るまで、他のクラスよりもちょっと時間がかかるだろう。

 俺は急いで学校を出て、駅の向こう側を流れる川の、堤防下にある河川敷に向かった。


「あ~……気持ちいい」


 思わず、そんな言葉が出てしまう。

 割りと広いこの河川敷では、小学生たちが野球をしていたり。

 おじさんがランニングをしていたり。

 お姉さんが犬の散歩をしていたり。

 川の方からはイイ感じに風が吹いてきて、この場所だけ、他よりのんびりと時間が流れているような気がする。

 駅を挟んでいるせいか、うちの高校の制服を見ることは、稀だ。

 そう言えば、おチビちゃんと一緒に来たことは、無い。

 おチビちゃんだけじゃなく、他の誰とも、一緒に来たことは無い。

 ここは俺の、お気に入りの場所。

 何も考えたくない時。

 のんびりしたい時。

 一人になりたい時。

 いつも俺は、一人でここに来ていた。


 高校に入って、気づけばもう二回目の夏を迎えようとしている。

 おチビちゃんに出会ってから、既に丸一年以上経っている。

 おチビちゃんの告白を条件付きで受け入れてからは、一年弱くらいか。


「どんだけ掛かってるんだよ、あいつ」


 小さく毒づいてみる。

 おチビちゃんに条件提示をした時は、まさかこんなことになるなんて、全く想像もしていなかった。

 すぐに付き合いが始まって、そしていつものように、すぐに終わるものだと思っていた。

 結局俺は、いつも想像の斜め上を行くおチビちゃんに、してやられていたような気がする。

 気がする、ではない。してやられていたんだ。

 いつの間にか、ドハマリしていた。

 大野 沙希という人間に。

 おチビちゃん自身は、きっと自覚なんてしていないだろうけど。

 そこが、救いでもあると同時に、悔しくもあり。


「はぁ……」


 鞄を枕に、俺は草っぱらの上にゴロリと寝転がった。

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