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20.傾向と対策

「『好きすぎてできない』って、どーゆー状況なんだ?」


 休み時間。

 ぼんやりとおチビちゃんの事を考えていた俺は、つい、口から漏れてしまった言葉を、隣の席のアキラに聞かれてしまった。


「なんだ、漣?お前も遂にアレを経験しちまったか?!」

「へっ?」

「まぁまぁまぁまぁ、みなまで言うな」


 好奇と憐れみの入り交じった顔で、アキラは励ますように俺の肩をたたく。


 いや。俺別に、励まされるような事、何もないけど。


「でも、仕方ねぇだろ。好きすぎて、ガッカリされたくないとか余計なこと考えてド緊張でもしようもんなら、そりゃ役に立たなくなることもあるさ」


 アキラはしたり顔で話を続ける。


 は?

 こいつ一体、なんの話してんだ?


「で?相手は誰だ?どんだけイイ女だよ、お前がそこまで緊張するなんて」

「バカかお前。俺の話じゃねえよ」


 ようやく、アキラの言っていることが分かった。

 勘違いも甚だしい。

 ムカついて、俺はアキラの脚を蹴ってやった。


「てっ!なんだ、違うのか。」


 アキラのやつ、あからさまにつまらなそうな顔しやがって。

 でも。


「ド緊張、ねぇ……」


 なかなかのパスをもらった気は、する。


「なぁ、どうしたらド緊張、解けるかな」

「ん?……やっぱ、お前」

「だから、俺じゃねぇって!」


 はいはい、とでも言うようなアキラのニヤけた顔が腹立つけど。


「そりゃお前」


 当然、な感じで、アキラは言った。


「余計なことなんて、考えない。ただ『ヤりたい』って、それだけで突っ走る。それに限るな!」



(余計なこと、ねぇ)


 帰りがけ、アヤカに『もう帰り?』と聞かれたが、今日は1人で帰りたくて、『アキラとカラオケ』と嘘をついた。

 素直に答えたら、きっとアヤカ経由でおチビちゃんに伝わって、校門で待ち伏せされるだろうから。


(ド緊張、か)


 確かに。

 マクドナルドで俺の寝込みを襲おうとしていたおチビちゃんは、ガチガチに緊張してる顔だった。

 ちょっと顔近づけただけで、すぐ真っ赤になって、『ふんっ!』を発動してソッポ向きやがるし。


『好きすぎて、できないのよっ!』


 あの時のおチビちゃんを思い出すと、ニヤけてくる俺自身を抑えることができない。

 確実に、おチビちゃんの気持ちが俺は嬉しかったのだ、ものすごく。

 もう、条件なんて無しにして、おチビちゃんと付き合ってしまおうか。

 そんなことも考えたが。


『男の二言は、許さないわよっ!』


 おチビちゃんは、そう言い放っていた。

 気の強いおチビちゃんのことだ。

 プライドにも、関わるかもしれない。

 と、すると。

 おチビちゃんが余計なことを考えず、緊張しなくて済む方法は。


(余計なことなんて、考えなくていいのにな。だって俺はもう……)


 大野 沙希に、こんなにも惚れているんだから。

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