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15.おチビちゃんの挑戦その4-1

「ねぇ、漣。もう帰るの?」


 教室から出る寸前の俺にそう声を掛けてきたのは、隣のクラスのアヤカだ。

 うちのクラスに来てミチと何やら話し込んでいたようだったが、いつの間にか二人並んで俺を見ている。


「あぁ。なんで?」

「ううん、別に。じゃ、またね!」


 遊びに誘われるのかと思いきや、あっさり会話を切って、アヤカはまたミチと話し出す。


(なんだ?)


 モヤモヤした気分で昇降口へ向かい、靴を履き替える。


(そういや、最近あいつらと遊びに行ってないな)


 ふと、そんな事を思った。

 思い返してみると、ここ最近、女子からのお誘いが無い。

 そして、告白されることも、無い。


(モテ期が、過ぎたのか?)


 そんなことも思ったが、さして残念とも思わない自分に驚いた。

 思い当たる理由は、ひとつだけ。


「待ってたわよ、高宮 漣」


 校舎を出たところで、その最大にして唯一の【理由】が俺の前に現れた。


「よう、おチビちゃん。さすがストーカーだな」

「相変わらず失礼ねっ、高宮 漣!私はストーカーなんかじゃ」

「今度はどうした。」

「……うん」


 珍しく歯切れが悪いおチビちゃんが妙に気になり、彼女の前で足を止めた。


「なんだ、拾い食いして腹でも壊したか?」

「あなた私をいったい何だと思ってるのよっ!」

「ストーカーのチビすけ」


 ひとまず、おチビちゃんが元気なことが確認できた俺は、再び校門に向かって歩き出す。

 が。


「……っと、あぶねっ」


 制服の裾を掴まれ、後ろに倒れそうになる。


「なんだよ。用があるなら早く」

「これ」


 振り返った俺の腹辺りに、おチビちゃんは何かを押し付けてきた。


「ん?」


 受け取って見てみると、それはプロサッカーリーグの観戦チケット。


「友達から2枚貰ったのよ。だから、その……」


 いつになく硬い表情で、おチビちゃんは早口にそう言って、上目遣いで俺の様子を窺っているようだった。


(サッカー、か)


 違う中学出身のおチビちゃんは知らないだろうが、中学の途中でサッカー部を辞めてから、俺は暫くの間、サッカー関連の全ての物から距離を置いていた時期があった。

 自分の不注意でケガをした訳だから、周りの誰も何も悪くは無い。

 悪いのは、自分。

 だけど、当時の俺はまだそんなに上手いこと感情の切り替えなんてできなくて。

 テレビの中継やネットの動画でさえ、見たくも無いと思う時期が続いた。

 今はもう、さすがにそんなことはないけれども。

 ない、はずだけど。


(行って、みるか)


 そう思っておチビちゃんを見ると。


「お前、なんて顔してんだよ?」


 思わずそう口にしてしまうほど、おチビちゃんは複雑怪奇な表情で俺を見ていた。

 こっちにまで緊張がバリバリに伝わるほど顔を強張らせて、怒っているような、泣き出す寸前のような。


「ほんと失礼ねっ、もともとこんな顔ですけどっ!」

「いや、いつもはもっと面白い」

「どういう意味よっ!」

「まんまの意味だ」


 くぅぅぅぅっ、と。

 おチビちゃんは顔を怒りで赤く染めている。

 とりあえず、おチビちゃんの顔から泣き出しそうな表情が見えなくなったことにホッとして、俺は言った。


「現地集合でいいか?」


 瞬間、おチビちゃんは目をまん丸に見開いて。


「……えぇっ?!」


 久し振りに聞く、素っ頓狂なおチビちゃんの声。

 まさかの、誘いを受け入れられる想定を、全くしていなかったとか?

 自分から誘っておいて、それは無いんじゃなかろうか?


「時間厳守だぞ。観るなら最初からちゃんと観たいからな」


 おチビちゃんは呆けたように口を小さく開けたまま、コクリと頷いた。

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