第22話 不吉な桃色
(ティアラ視点)
突然、隣の国であるガンダルンからエマ姫がスライシアに来た。
私はその出迎えに公爵令嬢として城に呼ばれたのだ。
隣に居たアイオンがエマ姫の後に居る騎士を見て私に聞いた。
「あそこにいる騎士って僕に似てる?」
誰かに似てると言われたのだろうか?
私はその人をじっと見た。
黒髪がこの国は珍しい上にガンダルン人なので体が大きいので目立っているけど……。
「アイオンの方がかっこいいわ。」
アイオンはびっくりした。
そして花が咲いたように笑った。
「ティアラ大好き。」
ずきゅーん!
アイオン以外の人間など私が興味がある訳がないのだ。
アイオンは幼少から側にいて、ティアラが好きだと言ってくれる完璧な王子だ。
黒髪もアイオンだからかっこいいし、青い目もアイオンだから綺麗だと思うのだ。
つまり、アイオンのさらさらの艶のある黒髪は尊いし、私を見る優しいスカイブルーの瞳はキラキラしてずっと見ていたいと思わせる至高の宝石なのだ。
例え同じ色であっても、私にとってその価値はまったく違う。
そして、私は気がついた。
アイオンが指さした騎士の後方にいる、薄いピンク色の髪の騎士を……。
すごく嫌な予感のするピンク色だった。
そしてあとで名前を聞いて、思い出した。
例の乙女ゲーム『ラブキングダム』の隠しキャラに隣の国の騎士という攻略対象が居たことを。
彼はゲーム後半のクリア直前に学校の警備に登場して、誰のルートからでも吸い寄せられるようにマリアちゃんが彼のルートに乗ってしまうという……おそろしいハッピーエンド阻害キャラなのだ。
彼が登場したということはもしかして、ハッピーエンドルートに戻りかけていたんじゃないかしら?!
彼さえ阻止できればハッピーエンドだわ!
桃色髪をマリアちゃんから遠ざけないと!
オスカー頑張って!
私とアイオンの為にもっ!




