救出
シャアリィが自分のために髪を切ってしまったことが、余程、悲しかったのか、ナッチェはずっと泣いている。
元々、切るつもりがすっかり忘れてただけよ、と、言ってもなかなか信じてもらえなかった。
実はアイシャも約束したことを忘れていたらしく、本気で怒った。
シャアリィは値千金の有効活用だと思ったのに、自分が悪いことをしたみたいで、少し拗ねた。
商業埠頭の南側倉庫。
該当するのはたった三つ。
ここまで辿り着いた以上、器物損壊や、不法進入で罰金を課されるくらい安いものだ。
「施錠されている倉庫は一つだけ」
「最早、探すまでもないね」
今度はアイシャがダガーを引き抜き、まるでバターでも切るかのように錠前の鎖を断ち切った。
屋根に開いた小さな無数の穴から日差しが入り込み、倉庫の中の様子がわかる。
そこにあったのは、檻の付いた木箱の列だ。
「ナッチェ、ここで待っていて」
と、シャアリィが最悪の事態を想定してナッチェを引き留めた。
二段に積まれ並べられた木箱の中には、既に息絶えている者もいた。
奴隷・・・レリットランスやアーシアン本国では目にすることは殆どない。
だが、アーシアン連合国の法律で禁じているわけではない。
奴隷制度は時に救いとなる場合もあるからだ。
例え奴隷であっても、所有者は人道的に扱う義務がある。
相続人のいない所有者は、奴隷が家督を相続することさえあるのだ。
反面、性的搾取を目的としたものや、過酷な労働に従事させられることもある。
負債を負って奴隷になる者もいれば、誘拐されて奴隷にされてしまうこともある。
誘拐は勿論犯罪だが、遠方に連れ去られてしまえば、拐かされたという証明は難しい。
「シャアリィ、多分、この人だ」
「衰弱しているけれど生きてる」
「ヒールを頼む」
シャアリィは、先に言っておくけれど、と前置きをする。
「私のヒールは、本当に少ししか回復しないからね」
「多少の疲労回復と、すり傷程度しか治せないよ」
それでもないよりは絶対にマシだ。
木箱に掛けてある錠前も、アイシャに掛かれば簡単に開く。
シャアリィが応急処置のヒールを施している間に、アイシャは表の様子を伺った。
どうやら見回りと鉢合わせすることなく、脱出できそうだ。
四人は、倉庫の裏手の森から目立たない道で、旧市街地へと向かう。
エレナが居なくなったと知れば、また、同じことが起きるかもしれない。
それには少なからず対処を考えなければならない。




