表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/171

静かな街

アイシャが少し腰を折って、視点を低くしてナッチェに提案する。


「お姉さんが帰ってきてるかも知れないから、一度、お家に戻ってみようか?」


アイシャの提案に頷き、ナッチェが二人の前を歩く。

不規則に動くしっぽは、不安や機嫌の悪い時のサインだ。

恐らく相当姉のことが心配なのだろう。

途中で閉店間際のサンドイッチ屋を見つけたので、飲み物も含めて、一応、四人分購入する。


「ナッチェは・・・」


と、話し掛けたアイシャに、ナッチェが振り向いて唇に指を当てた。

そしてアイシャの耳元で囁く。


「このへんからは旧市街地なので、夜、外での会話は控えて下さい」


そう言われて初めて気付く。

灯りはどの家にも灯っているが、外を歩く気配はほとんどない。

そこから数分で、灯りの点いていない家の門をナッチェが開いた。

そして、小さな声で、


「ただいま」


と、誰も居ない闇に向かって告げた後、落胆の溜息を吐く。

粗末な土壁の家、昔ながらのランプにナッチェが灯を入れた。


「やっぱり、帰っていないみたいです」


それは、もう声を出しても大丈夫という合図でもあった。

アイシャが、サンドイッチの包みをテーブルに置き、二人に飲み物を渡す。


「喉乾いてるよね?」


ナッチェはアイシャに礼を言いながら、それを受け取り、シャアリィは何時ものように目配せで感謝を表現した。

次の声をあげたのは、意外にもシャアリィだった。


「お姉さんが戻らなくなってから、どれくらい?」

「出掛ける先とか、思い当たる場所とかはある?」


どうやら、先程の失態をシャアリィなりに気にしているらしい。


「昨日の夕方から帰って来ていません」

「私達は普段、教会のお手伝いで届け物や子供たちの世話を仕事にしてて」

「昨日は、港の方に届け物にいったらしい、ということまではわかっています」


アイシャが、だから湾岸地区に足を運んだのだなと察し、


「届け物は何時も同じ場所?それとも毎回違うのかな?」

「ああ、そうだ・・・少し休憩にして食事をしよう」


その声に反応したのか、ナッチェの小さなお腹が空腹を訴えた。


「好きなのを選んでいいよ」

「何が好きかわからなかったし、あったものを適当に買ったんだ」

「私達はこれでも、割とお金持ちだから、気にしなくてもいい」


ナッチェは賢くて礼儀正しい。

アイシャが先回りをして、ナッチェの遠慮をなくさなければ、多分、食事も口にしないだろう。

シャアリィは、こういう時の振る舞いがよくわからない。

だから、アイシャのやることを邪魔しないようにするのが精一杯だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ