商業ギルドでの手続き
アイシャの悩みのひとつが、現金資産の持ち運びである。
毎日の外出に、銀貨が数百枚も必要になることはない。
とは言え、不意に欲しいものがあれば買い物もしたくなる。
金貨ならば数枚で済むのだが、高級店でもない限り嫌がられる。
酷い時には、両替してから来いなどと言われる始末。
シャアリィは銀貨をジャラジャラさせるのが結構好きなようだ。
何かを見つけるとひょいっと革袋に手を入れて銀貨を漁る。
この世界では両替は一つの商売として成り立っている。
金貨を銀貨に両替すれば、それだけで銀貨が二枚減る。
滅多にないことだが、銀貨を金貨にする時にも銀貨一枚の手数料が掛かる。
他国の通貨であれば国力に応じたレートが課され、さらに手数料が掛かる。
そういう意味では、商業ギルドは実に便利な存在だ。
銀貨で預け、金貨で引き出せば良いのだから。
冒険者ギルドは、あくまで所持品の預りという括り。
ナップサックを預ければ、それはナップサックであり、中に入っている物は関係ない。
但し、禁制品は絶対に預かることはなく、衛兵所に突き出されることもある。
ロッカー一つで日、週、月単位で預けることが可能。
宿と同じように長期になるほど割引が効く。
アイシャが使う方法は、手荷物の月単位利用と、商業ギルドへの預金。
手持ちの銀貨は常にシャアリィと分け合い、概ね200枚前後をキープ。
レリットランスでは上客の扱いだったが、グリーン・ノウズでは新参者。
それでも商業ギルドの応対は丁寧で大したものだ、と感心する。
「本日は証書でのお預けで金貨100枚、現金でのお預けで金貨20枚、銀貨400枚」
「以上で間違いございませんか?」
確認後、アイシャの手元に登録証が返される。
商業ギルドのもう一つの利点は、宿の月契約をする際に保証金不要になる。
通常は、宿の月契約は宿代の割引があるかわりに別途保証金の支払いが必要だ。
商業ギルドの登録証を見せればそれが必要なくなる。
不都合が起きても商業ギルドにある預金が埋めてくれるからだ。
グリーン・ノウズの商業ギルドは、アーシアン本国に匹敵するほどに繁盛している。
冒険者の他にも、漁師や、貴族、そして夜の世界の商人達。
あの素朴で閉鎖的な郊外地区がまるで無関係の場所のように思えてくる。
まだ、新しいお気に入りのカフェテラスは見つからない。
二人は、結局、ドルフィン・テイルで満足には少し足りないお茶の時間を過ごすのだった。




