魔人たる術式
「以上が、伝え聞いたマーヴェリック・エルゴ・ダインの話」
「シャアリィと同じように、心臓と魔石を入れ替えた」
「でも、シャアリィはガーゴイルに一発撃たれただけで、瀕死」
「まぁ、死体をくっつけて補完するなんてのは、絶対に嫌だけどね」
アイシャの際どい物言いに、シャアリィは弁解する。
「あの場面での出来事は突っ込んじゃダメでしょう」
「チャージ中は動けないし、あの場面で最善策は『撃つ』ことだったよ」
それは当然、間違いではないし、シャアリィが被弾を覚悟したからこそ、生き残った。
アイシャは魔人の補完再生方法なんて知らなかったし、手近な死体なんてなかった。
根本的な問題を言うならば、不死に特化したマーヴェリックと同じことをシャアリィが出来るはずもないだろう。
「そうじゃない」
「シャアリィが弱いって言ってるんじゃなくてね」
「マーヴェリックでも、恐らくシャアリィと同じくらい脆かったって話」
「ただ、戦場だから再生触媒となる死体がごろごろ転がっていたり」
「それを自動で再生する術式を自分に施していた、と、考える方が普通」
ぽかんと口を開けて、シャアリィはアイシャの推論に耳を傾ける。
「何百回も死んで、その都度生き返る」
「それがどんな苦しみか、想像したくもないし」
「シャアリィが死ぬ時は、私の死ぬ時なんだから」
「その術式がわかったとしても、絶対にシャアリィにそんなことさせない」
話はちゃんと最後まで聞くもんだ・・・。
「私が思うのは、根源転換術式にはそれくらいぶっとんだ術式があるんだろう」
「そういう話がしたかったの」
「心臓が魔石であるが故の、魔力伝達が強力だという特性故の、そういうもの」
「そういうのを期待して、この街にきたんだから」
「それに、シャアリィは効果は微弱かもしれないけれど、ヒールも持っているでしょう?」
確かに、ウォーター・ヒールというスキルをシャアリィは所持している。
「性質的には陰転換術式向きだろうけれど」
「術式素養としては陽転換、つまり聖職者寄りの可能性もある」
「あとは触媒についても同じ」
「闇、闇影の魔石と言われているものの、それは治癒術の触媒でもある」
「魔導的な解釈である、根源転換術式として光属性と闇属性は同一分化の関係にある、ということ」
「そうでもなければ光術式スキルを得るために、希少な聖獣の類が必要になってしまうでしょ」
聖職者の巡礼地であり、最大権威の教会がこの地にある理由も説明がつく。
それは稀に見るアンデッドに偏った迷宮を多数備える環境。
「早めに月契約の宿を探さないとね」
「教会やギルドに内密に根源転換術式の研究をしていることが露見したら・・・」
「最低でも要注意人物リスト、下手すれば何らかの処分もあるでしょう」
「魔石はギルドに売却する分と別に、触媒用のものを確保しなくちゃ」
過去に魔人の災害が起きている場所だけに、シャアリィは正体を知られるわけにはいかないのだ。




