ふたりの関係
「そういえばアイシャって幾つなの?」
ふと頭に浮かんだ疑問をシャアリィは口にした。
冒険者ギルドで活躍していたクラス3パーティのひとりであるということから、少なくともかなり年上であると思ったのだ。
「多分、シャアリィとあまり変わらないはず」
「先月十七才になったばかりなので」
む。
と、シャアリィは何を冗談をと薄ら笑い。
それが本当ならばアイシャは、活動歴二年足らずでクラス3のパーティに所属していた猛者だ。
そんな前例など聞いたことがない。
クラス2やクラス1のパーティに所属したまま引退するか、迷宮の露となる者が大半の世界なのだから。
「クラス3のパーティって簡単に所属出来るものなの?」
シャアリィの疑問は当然のことだろう。
「私の場合、運が良かったのか、悪かったのか、最初に所属したのがマーシーのパーティだったのですよ」
「任務は主に斥候、炊事と荷運び」
「獣人特有の気配遮断スキルを持っていたから、即雇用だったんだ」
「だから私のクラスやレベルなんていうのは、ぶっちゃけ最初はどうでもよかったのね」
「二月程過ぎてから浅い階層の露払いをさせてもらうようになって、本格的に前衛に出たのは最近のこと」
なるほど、と、納得しそうになったシャアリィだが解せないことに思い当たる。
「それにしたって経歴では、武具全般も体術も使えるって?」
「それだけ覚えるのに数年ということはないでしょう?」
アイシャは、顔色も変えずに即答する。
「ええ、武道や剣術は、四才の頃から始めてるから」
「白毛獅子の家系は、皆、幼い時期から戦士としての修行を積む」
「シャアリィと似たようなものですよ」
「あなたも十一才で氷結を扱えるようになったらしいじゃないですか」
二人は互いに自分の歩んだ道を振り返る。
「私は十才くらいまで紙っぺら3枚の絵本が教科書だったからね・・・毎日杖を構えて凍れって叫んでたよ」
「始めて冷気が出た時なんて、うれしくって魔力切れるまで叫んだ」
アイシャも覚えがある。
「私も居合で長剣を抜く所作が下手で、両膝を何度も擦りむいて練習したなぁ」
今でこそ二人とも天才と呼ばれる部類だが、実際に才能があったのは「諦めない才能」だったのだろう。
「私達は互いに五分で付き合いましょう」
「そして互いを尊重し、例え喧嘩したとしても真っ直ぐに意見を言い合いましょう」
「成り行きで一蓮托生になった間柄ですが、私達は相棒です」
「マナーは大事ですけれど、遠慮は一切なしで!」
アイシャに先手を取られると、シャアリィは笑顔で頷いた。
シャアリィにとっては初めての仲間なのだ。
しかも命の恩人でもある。
「私は経験が皆無だから、作戦立案や難しい交渉はアイシャに任せるわ」
「ダダをこねたり、無駄な口出しはしない」
命を預け合う契だったが、そこらにいる町娘同志の約束と変わらない笑顔だった。




