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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
172/453

呼称有り・認定外ネームド

『三日月』という呼称のついたハイランド・オーガ。

胸に大きな三日月の傷跡があるから、そう呼ばれている。

体高こそ他のオーガよりも少々大きい程度だが、桁外れの筋肉量によって質量は他オーガの二倍程はあろうか。


『三日月』は正式なネームドではない。

冒険者やギルド、民間の間でそう呼ばれているに過ぎない。

特徴的な傷を持つ大型の目立つ個体であり、計画的に本気で挑めばクラス3のベテラン達に倒せない相手ではないのだ。


だが、計画的というのが非常に重要になる。

冬眠期でも最低五十体、活動が最も活発となる秋前になれば最大でその五倍の群れを率いている。

それはこの地域に生息するハイランド・オーガ総数の凡そ一割であり、仮に最も手薄な冬眠期であっても群れを分断するだけの人海戦術と止めを刺す能力を持った殲滅役、作戦の指揮を取る優れたリーダーが必要だ。


しかも、手薄な冬眠期の戦闘は、激しい吹雪と二転三転する高山性気候に阻まれ現実的ではない。

ある程度群れの数を削ったとしても、冬眠明けの繁殖期には、また、相当な数のハイランド・オーガが生まれる。

圧倒的な繁殖力、交雑力、成長力を持つハイランド・オーガが今日まで高山エリアに君臨している理由だ。


現状、『三日月』の群れは新しい戦力を迎え入れ二百にも達しているだろう。

それをアイシャ達はたった三人で叩くというのだから、冗談にも程がある。

『三日月』狩りを決行するとなれば、参加を希望する冒険者は数多くいるだろうが、少なくともロザリーはそれを望んでいない。


今回、『三日月』狩りを提案した背景には、北方大教会枢機卿ベネディクトが関わっているのだ。

正式なネームドである『千本足』の魔石の価格が金貨2750枚だったこともあり、それに劣る『三日月』であれば、より安価に魔石を購入出来ると踏んでいる。


パーティ・メンバーが多くなればそれだけ権利者も増える。

売却に対して異を唱える者や、自分の取り分に固執する者も出るだろう。

魔石の持ち逃げ消失のような非常事態が発生するかも知れない。

ならば最初から言い含められる範囲のメンバーでやるのが理想だ。

それに呼称有りクラスの魔石とは言うものの、スキルや術式が必ず封印されているとは限らない。


逆の可能性もある。

つまり倒したハイランド・オーガの大量の魔石の中には、スキルが封印されているものがないとも限らない。

一度手に取ってみて鑑定に掛ければ、その両方の可能性を有効的に活用出来る。

また、アイシャも、イザベラも、それなりに財産を持っており、分配に関して揉める要素は少ない。


狩り自体についても三人で狩るほうが、余計な心配が減る。

アイシャを押さえている以上、シャアリィの乱入もないだろう。

シャアリィは、ザグレブホーンに来てからパーティらしいパーティを組むこともなく、案内役を雇っての単独行を繰り返しており、腕の立つグループとの接点はない。

つまり、シャアリィが『三日月』に手を出すならば、単独行での挑戦になるはずだ。

シャアリィならばやりかねないが、さすがに苦手なパワータイプを相手に連戦連勝出来る程、甘くはない。


現在の状況に変化が生まれれば、アイシャとシャアリィが『三日月』を討つことになるだろう。

ロザリーにしてみれば、それを避けて魔石を得るための時間は残り少なくなった。

今回の討伐は、ロザリーにとっては将来枢機卿の椅子を手に入れるためにも必須の課題だ。

アイシャやシャアリィが、既に『ネームド・キラー』の名声を手にいれたように、『鏖殺のロザリー』として、呼称有りの討伐者という称号は重要な意味を持つ。


ロザリーの予想と違う点と言えば、もっと顕著に現れるはずだったイザベラの妨害がないのは実に拍子抜け。

その理由は、アイシャが絶妙なバランスをパーティに生み出しているからに他ならない。


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