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二人の聖職者と枢機卿

こんな場末の酒場が似合うのは三人のうちひとりの男だけだろう。

その男の名前は、ジョルジアット・フランシスコ・・・あのフランコだ。

密会と思われる場末の酒場の片隅のテーブル。

そこにいるのは、いずれも銀枠純金十字を首から下げた面々。


「ロザリー、例の白い奴は使えそうか?」


もうひとりの男が、ロザリーに温和な声で尋ねる。

最も場違いと思われる男・・・エルフォリア・ベネディクトだ。

こんな面々が揃えば密会とは呼べないだろう、が。


「ええ、なかなかの強さですよ」

「アレなら我らが求めている物を持ってこれるでしょう」

「あとは買うか、誑かすか、それとも脅し取るか」

「ちょうど、琥珀の奴と揉めているみたいなので好機ではありますね」


そこに口を挟むのはフランコだ。


「待てよ、万全を期すなら買い取るべきだろう」

「それが、相当の高値になろうと、白と琥珀は番よりも深い絆で結ばれている」

「白になにかあれば、琥珀は黙っちゃあいないぞ」

「なにせ、我々を敵に回す覚悟さえ持ってるやつだからな・・・」


例え喧嘩中だろうとも、シャアリィのアイシャへの執着は尋常ではない。

二人のやり取りを眺めていたエルフォリアが決定を下す。


「フランコのやり方が良いだろう」

「あの琥珀の少女は、既に我々に匹敵する程の恐ろしい使い手になったらしい」

「あのミヤマが『化け物』と称したというのだからな」

「金で済むことなら、私が幾らでも調達しよう」

「それに求めていると言っても、別に必須というわけでもあるまい」


エルフォリアの言葉とあれば、ロザリーは素直に応じる。


「御意に」

「まぁ、彼女たちならば潤沢な資金を持ち合わせているので、相場以上の馬鹿げた金額をふっかけてくるようなこともないでしょう」

「問題になるのは、もうひとり・・・売女ですね」

「あの女は少なからず例のものに固執があり、競りになればどこまでも喰らいつくでしょう」

「事前に言い含めて置かなければなりません」


イザベラ、アイシャに、何をさせるつもりなのか・・・。

フランコは眉根を寄せて、ロザリーに問う。


「ロザリー、術式使いなしで本当に例の大物をやる気か?」

「琥珀と白い奴を和解させて、琥珀も使ったほうがよくないか?」

「そうすれば勝利は確実・・・瞬殺すら可能だぞ?」


それを聞いたロザリーが鼻で嗤いながら、


「フランコ、随分と偉くなったものだな」

「お前には何時も出し抜かれてきたが、今回の任務は私の指揮下だ」

「黙って見ているがいい」

「鏖殺の二つ名が伊達ではないことを枢機卿様にも御照覧頂かなくてはならんのでな」


グラスの残りをすべて飲み干し、フランコは席を立つ。


「もう行くのか?」

「まぁ、本来、お前と私が接触していること自体が問題になりかねないからな」

「情報提供と内情報告、感謝する」

「むさ苦しい下衆な街に飽きたならば、何時でも私の元にくるがいい」

「お前ならば何時でもベネディクトの養子に迎え入れるぞ」


本気なのか、冗談なのかわからないエルフォリアの言葉を背に、フランコは店を出る。

本当ならば、シャアリィ、アイシャに会って談笑でもしたいところだが、ここに自分がいる理由を説明するのは面倒が伴いそうだ。


そう思ったフランコは誰にも正体を知られぬようにと、フードを目深にかぶり、首の十字を外しコートのポケットに入れた。


そうだ、この日、この時、フランコは此処にいて良い人物ではないのだから。

シャアリィやアイシャと会いたくとも、会うわけにはいかないのだ。


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