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光と陰

知っていた・・・否、予感していた。

シャアリィがどれ程の卓越した魔術師になるか、など、誰よりも自分が、出会ったあの日のうちに。

クラス3パーティ所属とは何か・・・それは冒険者にとって一つの誉れだ。

クラス3になれば、誰もが自分の二つ名やパーティ名を名刺代わりに使うものだ。


だが、今のアイシャは自分がクラス3であることに、少々、疎ましく感じている。

相方とは離縁状態、さて、まずはと意気込んで自分にあったクエストを探せたと思っていたら、この始末。

その口から乾いた自嘲の嗤いを含む溜息が、事あるごとに零れる。


「ルーキー、シケた面してるじゃんか?」

「案外、難しかったんだろう?」

「ハイランド・オーガ」


それは間違いなく助け舟のサインだが、アイシャはそんな言葉にも上手に返せない。


「ああ、準備不足で逃げ帰ってきた」

「それがどうかしたか?」


ようやくギルドに戻り人心地ついた時に、絡まれれば、アイシャにしてみれば面白くはない。

勿論、ここは冒険者ギルドなのだから、荒くれ者、腕に自信のある者は大勢いる。

ある者は、口笛を吹いて揶揄し、ある者は「助けてやろうかお嬢ちゃん」などと、明らかに挑発的な言葉を浴びせてくる。

だが、最初に声を掛けてくれた男は、それに対して、両手をあげて「やめろ」と、皆を制した。


乱闘騒ぎになる前に止めてくれたのだろう。

その場には、シャアリィもいた。


「こっちのルーキーは、ちょっと、おっかねえくらいに暴れまわってたぜ」

「魔物が足りなくて危うく、地獄の入口まで追っかける羽目になるとこだった」


シャアリィの能力なら、不思議なことではない。

だが、初見でシャアリィの容赦のない狩りを見れば、皆、自分の命の心配さえするだろう。

恐らくは、このベテランの男を道案内代わりに雇ったのだろう。


そして、アーシアン時代のように自分勝手に振る舞った・・・そういうことだ。

だが、アーシアン時代と全く違うのは、それでも実力が伴い、文句一つ言わせず、自分が雇用しているのだから好きにさせろ、と、告げる程に成長した所。


人、物、金、シャアリィは、十六才という年齢にそぐわない豪胆さも持ち合わせている。

暗黒の術式を使うネクロマンサーが光で、銀髪のサムライソード使いが陰なんて。

御伽話の題材には出来ない現実が、ここにある。


恐らくは相手の男に手出しさせる間もなく、ほぼ、全てがシャアリィの戦果。

それは魔石ににして300個を優に越える。

そのペースならば、一月も立たないうちに間違いなく、完璧な氷結耐性を手に入れるだろう。


つまり、仲違いなどせず、シャアリィと潜れていたならば、自分も当然、それを手に出来ていた。

今日、アイシャが手に入れたものは、ちっぽけな教訓一つだ。

装備の損失はなかったが、あんな巨人と力の押し合いをする事自体、自分の戦闘センスのなさに呆れる。


「明日もハイランド・オーガに行くなら、付き合いたい」


アイシャの背中から、ぼそぼそとした声が聞こえた。

そこに立っていたのは、白い聖衣を纏ったアイシャと同じくらいの年頃の娘だ。

金色の髪はシャアリィに似ているが、長く伸ばし編み込んでいる。

アイシャよりもかなり色素の薄いグリーンの瞳、身長はオルチェ程には高くはないが、それでも、アイシャよりは幾分高い。

かなりの細身故に、聖衣のサイズが合わなかったのだろうか、膝が見えそうなくらいに丈が詰まっている。

腰のホルダーには、メイスが二本、それは同じ意匠で造られたもの故に、一対とも呼べる。

何より眼を引いたのは、首から下げた銀枠の純金十字。


「聖職者が巨人討伐?」

「私は構わないが、きみにはあまりメリットがないように思えるが?」


アイシャが問うと、少女は小さく微笑んで、


「迷える者を導くのは聖職者たる、この『鏖殺のロザリー』の役目か、と」

「勿論、あなたの返答次第ではありますが」


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