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術式付与

アイシャにとって三節棍は、斬撃に耐性のある魔物や対多数との近接戦闘用の副武装。

鵺斬を所持するのであれば『贅沢品』である。

その贅沢品に更にネームドの魔石を使うなど、とても考えられることではなかった。

それならば、やはりシャアリィがアース・ランスの術式を追加する方が良い、とも。


鵺斬には、ワイバーンの魔石での術式付与を施せば良い。

疾風、風守ともにパッシブスキルであり、長所を伸ばすか、短所を補うかという違いはあれど、鵺斬の能力を確実に底上げする。

疾風ならば剣速が増し、風守ならば風の加護で受けるダメージを緩和出来るのだ。

単独行で失った武具の見返りとしては、御の字。


「シャアリィ、こればかりは成り行きとしてもらいたい」

「合理的に考えれば、最適な組み合わせだろう」

「鵺斬には亜竜の魔石、シャアリィにアース・ランスの術式」

「仮に三節棍が五割増の威力になった所で、鵺斬には及ばないし、フローズン・ドラゴンには極上の魔術耐性がある」

「シャアリィの魔力なら通る攻撃も、私の魔力では付け焼き刃にもならないかも知れない」


鵺斬に付与出来ないならば、アイシャの言い分が正しいとシャアリィも承知している。

これは二人の戦いであって、シャアリィの感情は二の次ということも。


「わかったよ」

「それでいこう」


三節棍は、ミヤマに制作を依頼するとして、普段使いに必要な弩弓を探す必要がある。

アイシャが何故、長弓ではなく弩弓を使うかと言えば、一つには威力、一つには携帯性だ。

巻き上げ式の弩弓であれば、巻いた状態で維持し短い矢を装填すれば初撃が早い。

何よりも長弓に使用する矢は、嵩張るし、強力な矢はその分重い。

中規模以上のパーティに属し、弓を射ることだけが役目であるならば、長弓に分があるのだが。


風光明媚な湖を眺めながら、少女二人が交わす会話としては、無粋にも程がある。

それでも、やっと互いの意見が纏まったのだから、得難い時間とも。


「では、先生にはワイバーンの魔石を預け、私達の選択を示そう」

「それに三節棍の値段も聞かねばならない」

「恐らくは、亜竜の魔石二つ、三つで勘弁してやろう、と、言いそうだが」


最近、随分と面倒事続きで、果てには命掛けの面倒事までアイシャは終えたのだ。

これから暫くは、アイシャをどれだけ甘やかしても、構わないとシャアリィは思う。

装備が整えば、次の目的は遥か北。


当然、道中では、レリットランスに顔を出して、黒猫姉妹の様子を伺いたい。

それに、アーシアンに立ち寄って、アイシャの仲間たちの墓にも行くべきだろう。

まだまだ先は長い。


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