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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
126/611

炎と鋼

再び、ミヤマの屋敷を訪れた二人が用件を伝えようと呼び板を叩く。

先程までの静寂が嘘のように、屋敷の中が騒がしい。

どうやら、ヌエキリの補修の準備が始まったようだ。


挨拶の時に着ていた緩い着物ではなく、清廉な純白の鍛冶装束を纏ったミヤマが出迎え、工房への扉が開かれた。

そこに積み上げられているのは、大量の薪と炭。

その傍らには様々な粒の大きさの鉄の粉。

そして単純でありながら鉄の塊を制するための様々な道具。


「滅多な事では外の人間に見せることはないが、お前たちには是非見せておきたい」

「これが、私の工房のハラワタとも言うべき、熔鉱窯だよ」

「ここで鋼を融かす炎は、火炎龍のブレスを上回る二千度という熱」

「ドワーフの職人もなかなか素晴らしい工房を持っているらしいが、私に言わせれば玩具同然」

「この窯で溶かせぬ鋼材は存在しない、というのがささやかな自慢だ」

「その熱を生み出すのは、風の力」


試し打ちのための鉄が藁と共に炉に放られると、熱気を帯びた鉄は赤からオレンジ、オレンジから黃へと色を変える。

それは粘土で組まれた細い窪みの上を流れ、圧縮した空気によってさらに高温となり白色へと近付いてゆく。


「ほら、鉄の塊が出て来ただろう」

「あれに燃え藁や炭を混ぜて鋼にするんだ」

「まぁ、ここから先はさすがに門外不出の秘伝というやつだ」


塊だった鉄が伸ばされ棒になり、その中間に楔を落とし、二つに折れた鉄を重ねて更に打つ。

飛び散る火花、注ぎ込まれる風の唸り、これがミヤマの刀剣の響き。


「さて、魔石だったな」

「む・・・その大きさ・・・何かの他の・・・ただの鉱石の塊ではないのか?」

「おい、誰か、クサカベを呼んでこい」


シャアリィとアイシャは、そりゃ、普通は信じられないだろうな、と、苦笑いする。

ミヤマよりも幾分年上だと思われる男、彼がクサカベらしい。

千本足の魔石を持って、光に翳し、内包物を確認しているようだ。


「親方、これは間違いなく魔石ですな」

「属性は土石、腑に落ちないことと言えば、この巨大さ」

「この魔石、一体、どれくらい巨大な魔物から取ったんです?」


話を向けられたアイシャが、要点を纏め答える。


「全長は大体二十メートルくらいのツインヘッド・ワームで、判明しているだけで百年以上を生きた『千本足』という名有りです」


ミヤマも、クサカベも、揃って表情を無くし喉を鳴らす。

『名有り』の魔石、長らく鍛冶師を営んでいる二人であっても、恐らくは初見だろう。


「刃が通る所が脚と腹しかなくて、なかなか手強かったですよ」

「で、この魔石がヌエキリの属性付加か、或いは術式付与に使えればと思いまして」

「相談に上がった次第です」


なる程・・・と、魔石の出所は把握出来たものの、ミヤマもクサカベも、表情は固い。


「ヌエキリには既に風雷の属性が付加されている」

「アイシャが亜竜から取り上げた魔石ならば、術式付与は可能だろう」

「見込みだが、疾風か、風守が付く」


ミヤマは顔を引き攣らせながら、千本足の魔石の使い道について提案する。


「三節棍に付与するのはどうだ」

「対氷結なら五割増の底上げ、術式なら・・・」


ミヤマがクサカベに見立てを聞く。


「土石槍でしょうな」


その返答に、シャアリィとアイシャは、即断を避け、ミヤマの屋敷を後にした。


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