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魔石のオークション

レリットランスの新領主邸の完成式典と共に、千本足の魔石オークションが行われる。

魔石の中には稀に固有スキルを付与する特別なものがあり、千本足の魔石もそれに該当する。


千本足の魔石には、土石属性の術式『アース・ランス』が封印されているらしい。

高出力でありながら消費魔力とのバランスの良いランス系の術式の価値は非常に高い。

それを未熟な術師でも扱えるようになるのだから、魔石の価値は金貨二千枚を超えるだろう。


『右耳の迷宮』で、フランコが取得した融合個体の魔石についても、同様に固有スキルが入っている可能性があるが、シャアリィもアイシャも、それについては興味がないらしい。


「ミヤマさんの所には、魔石に詳しいひとっているのかな?」

「ずっと言えずにいたけれど、私はアイシャに魔石を使って欲しいと思ってる」

「ここまでずっと、私の戦力増強を手伝ってもらってきたし」

「勿論、それは二人の目標を遂げる為なのはわかってるけれどね」


シャアリィは、ずっと言えなかったことをアイシャに告げた。

だが、アイシャも同様にシャアリィにこそ、魔石を使ってもらいたいと思っている。


「シャアリィには、フローズン・レイジがある」

「千本足の魔石に封印されているのが、アース・ランスなら、かなりの戦力増加だ」

「勿論、レイジが乗らない場合でも、私が使うより理に叶っている」


二人が最終目標にしているフローズン・ドラゴンの討伐。

氷結属性でしかも高レベルとあっては、フローズン・レイジに持ち込むことは不可能だろう。

しかし、どちらが取得しても、対フローズン・ドラゴンならば、十分なダメージディールが期待出来る。

それを狙うならば、中級術式の六節詠唱を無視出来るシャアリィの方が有効性は高いだろう。


「もしも、鵺斬にエンチャント出来るなら・・・そういう可能性はどうかな?」

「それならアイシャの戦力も底上げ出来る」

「近接のアイシャがダメージを負う確率は、私より高い」

「今の私にはジャミングもある」


シャアリィの申し出は、決して感情論だけではない。

アイシャは討伐が叶うならば自分の命を捨てるのも惜しくないという覚悟を持っている。

しかし、シャアリィは二人で生き残ることまでが討伐だと考えているのだ。


「そうか・・・エンチャントか」

「そんな発想、私には出来なかった」

「そうだな、まずは可能かどうかを調べてからでも遅くはないだろう」

「シャアリィの提案を優先して考えよう」


ちょうど、アイシャがシャアリィの提案を受け入れた頃、千本足の魔石一つ目の落札価格が決まった。


『金貨二千七百五十枚』


落札者は、アーシアン連合国北方大教会枢機卿、エルフォリア・ベネディクト。

大教会同士の覇権争いが背景にあるらしい。

その資金の出所と言えば、昨今、冒険者の多くを集めているナセルバ大迷宮。

数百年を経て、教会の序列が変わるかも知れない大事件だ。


ちょうど、テーブルの上のグラスが空になったタイミングで、シャアリィとアイシャは席を立つ。

せっかく余暇を過ごす計画を話し合おうと思っていた矢先。

シャアリィの思い付きが実現可能かどうかを確かめる為に、二人は再度ミヤマの屋敷に向かう。


「もし、時間が空いたならば今日は湖の周辺を散策しよう」


穏やかな顔でアイシャがシャアリィに提案すると、シャアリィはしっぽの揺れを確認してから、


「出店とかあればいいね」

「なかったら、少しだけ眺めて、又、黒猫のテラスに戻ろうよ」

「アイシャは寒いのは苦手でしょう?」


そう言ってシャアリィはいつものように笑顔を見せた。


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