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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
122/474

ランドウ・ミヤマ

「さて」


と、切り出すミヤマの一言で、室内に緊張が走る。

アイシャが言うには、ミヤマの機嫌次第では、刀を諦めなければならないのだ。

ただ、先程の遣り取りを見る限り、アイシャはミヤマに随分と気に入られている様子である。


「刀を見せな」


アイシャの腰、鉄の輪でベルトに接続されている鞘を外し、恭しくミヤマの元まで歩を進め、刀を置く。

ミヤマはそれを『すらり』と、まるで使い慣れた刀を抜くように刀身を眺める。


「手入れは怠っていないね」

「曲がりはないが、少々、持ち手側に歪みがある、それと刃の中程に凹みが少々か」

「随分と無茶な相手とやり合ってきたようだね・・・今後もそういう生き方をするつもりかい?」

「私の刀と縁を切ったほうがお前は幸せになれる・・・私にはそう見えるんだが」


アイシャは顔色を変えずにいるが、シャアリィは思わず目を伏せてしまう。


「私は先生の刀が好きだ」

「最初に授けてもらった時、必要な時にだけ抜きなさいと言われたが、たった三年でこの有様」

「グリーン・ノウズでも言われたけれど、私は随分と業が深いらしい」

「望むのは、この刀以上の業物」

「お叱りを承知の上で、参りました」


ミヤマは曲芸のように刀の尖端で鞘を立てると、その鞘に刀をまた『すらり』と仕舞う。

シャアリィから見て尚、華奢なミヤマが、女性が扱うには不自由この上ない重さの剣を自在に扱うのは驚異。

僅かに反りのある片刃剣がミヤマの手元に収まると、それだけで切れ味が増したように見えるのは説明不能でもあり、納得でもある。


「これ以上の業物とねぇ」

「アイシャ・・・お前、ドラゴン・スレイヤーにでもなるつもりか」

「随分と自惚れているようだがね」


ミヤマは、じろりとシャアリィを睨む。

図星を突かれても尚、アイシャは怯まずミヤマの手にある片刃剣を見つめる。


「一つ、試験をしようじゃないか」

「隣りにいる化け物とつるまずに、サラマンダーでも、ワイバーンでもいい」

「亜竜を一頭狩ってくるんだ」


ミヤマは小さな落胆の吐息を隠さない。


「アイシャ、お前にはギリギリってのが足りてないのさ」

「私の打った刀身が歪む程の敵と戦いながら、刃欠け、刃こぼれもなく斬れるのは、相方のお陰だろうよ」

「お前が業物を欲しがるのは、相方に劣らないようにするためだろう?」


アイシャの眉間に冷や汗が垂れる。


「順番が違うだろうよ?」

「刀で強くなってどうする?」

「このミヤマの刀の使い手は、強いことが条件だ」

「お使いが出来たなら、そうだな・・・」

「戦場で回収されてきた鵺斬(ぬえきり)をやろう」


アイシャの目の色が変わる。

ミヤマの刀の中でも特級品と言われる一本、ヌエキリ。

伝説の雷獣ヌエをも一刀両断すると謳われる、プライスレスなサムライ・ソード。


「承知しました」

「亜竜の首、我が手のみで此処に持ち帰ります」

「では・・・」


シャアリィには、今のアイシャの姿こそが刀に取り憑かれているように見えた。

アイシャ程の腕があるならば、どんな刀であろうと強いはず。

だが、この屋敷に入ってからは、アイシャのみならず、自分までもが酷く脆弱に感じる。


その理由が何かはわからない。

アイシャを行かせるべきかも、止めるべきかも。

シャアリィは自身が取るべき行動を完全に見失っていた。


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