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鍛冶師の屋敷

市場の中央通り、大噴水のある公園広場。

寸分の狂いもなく、この交差点からの十字路は東西南北に伸びている。


西門に行けば検閲所、衛兵所、冒険者ギルド、アーシアン国内への出入り口。

北門に向かえば闘技場、教会、神殿、軍駐屯地、領主邸宅など。

東門から伸びる先には迷宮。

南門は、果樹園と湖、その景観に馴染むような大邸宅の数々。

中央通り沿いに建つ高層建築物は、商業施設や娯楽施設、宿泊施設等が多い。


網目に伸びる路地は、一定の境界を超えると貧民街に様変わりする。

どんな街にも必ずある、光と闇。


観光で訪れる者は、皆、西門の検閲所などで路地奥に入り込まないように注意を受ける。

アーシアン本国もそうだが、貧富の差は明確、鮮明。

稼げる迷宮を抱える都市では、それは特に顕著だ。


シャアリィとアイシャは、噴水近くのカフェで一息ついてから、早速、鍛冶師の元に向かうことにした。


「シャアリィ、果樹園の果物には絶対に手を出すなよ」

「そして落ちているモノがあっても、果樹園の中では拾うな」

「遊び半分でも、この街では窃盗は重罪だからな」


アイシャが、まるで迷宮の中で指示を出すような口調で言うのだから、冗談ではないのだろう。

如何にシャアリィが悪戯好きであっても、多少は空気が読める。

様々な作物が手の届く場所にありながら、一切手を付けられていないのは相当のことだ。


「あの角を曲がって、数分で着くよ」


そう言われて角を曲がれば、既に屋敷の門が見えていた。


「鍛冶師ミヤマの拠点」

「修行中の者も含めて、百人近くが屋敷に勤めている」

「風変わりな者もいるが、絶対にこちらから手を出すな」


アイシャがそう言った、直後、得体の知れない何かがシャアリィの視界に入る。


「アレは、シキガミというらしい」

「ミヤマの屋敷のガーゴイルみたいなものだ」

「こちらが攻撃の意図を持たない限りは無害」


なんらかの動物のようでありながら、真っ黒な影でしかないような。

シャアリィが知っているもので例えるならば、幽霊(ファントム)に近い。

不気味なものではあるが、悪意も敵意もないようなので、アイシャに従う。


かなりの距離を歩いて、やっと扉に辿り着いた。

金属を叩く音が、聞こえてくる。

巨大な屋敷の殆どが木材で構成されていることに、まず、シャアリィは驚きを隠せなかった。

それでいて、見事としか言いようのない隅々にまで意匠が施された建築物。

思わず、見入ってしまう。


「そう、びっくりするよね」

「一体、こんなもの、どうやって建てるんだろうって」

「まずは、この屋敷の当主様に挨拶しよう」


アイシャは、そう言って入口の横にある板を小槌で叩いた。


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