宇多上皇は官奏執奏を許したい
道真は寛平九年(八九七年)六月に権大納言兼右近衛大将に任命された。同時に藤原時平は大納言兼左近衛大将に任命された。時平と道真が太政官のツートップとなり、平安朝の政界は新たな時代を迎えた。
道真と時平は互いに一礼し、微笑みを交わした。
「道真殿、共に平安の世を築いていきましょう」
「もちろんです、時平殿。共に力を合わせ、朝廷を繁栄させましょう」
宇多天皇は同年七月に譲位して宇多上皇となった。皇太子の敦仁親王が践祚して醍醐天皇になった。宇多上皇は道真を引き続き重用するよう強く醍醐天皇に求め、藤原時平と道真にのみ官奏執奏の特権を許した。
「時平は功臣の末裔であるから、その舗道に従え。道真は朕の忠臣、新帝の功臣である。我が願いは、道真を重用して、帝の治世を豊かにし、繁栄を追求することだ」
醍醐天皇は頷いた。
「道真卿のご指導とお力添えを大切にし、私も全力を尽くす覚悟です」
時平が言った。
「お言葉に甘えることなく、私は精一杯の努力を尽くします。人々のために、醍醐天皇の治世を支えることができれば幸いです」
道真は謙虚に頭を下げながら、感謝の意を表現した。
道真は即位したばかりの醍醐天皇に三種の神器について講義した。
「三種の神器とは八咫鏡、草薙剣、八尺瓊勾玉でございます。これらは帝の象徴であり、国の平穏と繁栄をもたらすものです」
「まずは八咫鏡について説明せよ」
醍醐天皇は興味深そうに言った。
「八咫鏡は、天照大神が岩戸隠れの際に用いられたものであり、神々の前で行われる祭祀の象徴です。この鏡に映るものはすべて真実を示し、神々との対話の窓となります」
「なるほど、祭祀とは神々との重要な交流の場であると理解した」
「次に草薙剣です。この剣は、もともと素戔嗚尊が八岐大蛇を討ち取った際に得たものです。この剣は武器の象徴であり、国を守るための力を象徴しています」
「草薙剣が我が国を守る力を象徴するとは、誠に頼もしい」
「最期に八尺瓊勾玉です。大きな玉で作った勾玉です。玉は地中から産出されるものであり、豊かな生産物を象徴します。これにより、我が国の繁栄と富を示しています」
「卿の説明で三種の神器の重要性を深く理解した。これらを持つことの意味を胸に刻み、帝としての務めを果たしていきたい」
道真は深く一礼した。
「帝のお言葉、誠に光栄でございます。これからもお支えできるよう、尽力いたします」




