ミッション4
「ふ、ふふ、はははは…」
かわいた笑いがもれる。
本当は魔道具を借りるために婚約する必要なんてなかったんですねぇ…?
騙したんですねぇ…?
きっと今の私はドス黒いオーラを纏っているんだろう。
怒りがふつふつとわいてくる。
「く、クーラ…?なぜそんな黒いものを羽織っているんだ…」
「ど、どうしたクライト令嬢…何かあったのか」
9割あなた方のせいですよ。
大人の謎の世界に幼気な子供(私)を巻き込まないでいただきたい。
その間もニコニコと笑っている王子にも腹がたつ。私が怒っている理由のもう1割はあなたが悪いんですよ?
いますぐこの腹の立つ顔をひっぱたいてやりたい…
だが、一応前世は大人であった私はそんな怒りを完璧な言葉使いと完璧な愛想笑いで覆い隠し、優雅に微笑み告げた。
「私のようなふつつか者にうつつを抜かしてくださりやがりまして誠に恐悦至極でございます。できればこのまま天界の方に召されていただけると幸いです♡」
キョトンとした王子の顔と真っ青な父様の顔、白目をむいた国王の顔が見える。
そう、今私は世界最高レベルに丁寧な言葉で「死ね」といったのだ。いっちゃったのだ。
まあ、見るからに頭のか弱そうな王子は現状を理解していないようで大きく目を見開いたままだが、言いたいことをすべて吐き出した私は今非常にスッキリしている。
最悪このまま破滅とかもありそうだがまあそこは割愛しよう。
私はくるりと背を向け歩き出した。
「あばよ!!」
この世界で通じるのかはわからないが、私は捨て台詞を吐いた。
「お、おいクーラ!」
後ろから父様の声が聞こえるが、まあそこはとりあえず無視。
なぜなら、今の私は最強だからな!
いっかいしんじゃったし、もう怖いもんないわ〜状態なのである。
好きなことするゆうても特にやりたいことないし、一回生き返れてラッキー…的な。
私は悠々とした足取りで、時代劇の任侠侍にでもなったかのような気分で馬車に乗った。
王子がゆっくりとこちらを向いた。
「けいちゃ…ん…?」
ポツリと王子が言ったが、進み出した馬車の中のクーラには届くことはなかった。