中国古代の王朝~「周王朝」のおわり 「前周のおわり その一」~
前周の最後の王を「幽王」という。同じ王朝において諡号は同じものを使わないのがルールなのだが、「幽」の文字を使われた王朝の主は、後の王朝をみてもほとんどいない。
この王は幽の諡号を使われても、抗議はできない人物であったろう。王朝を滅亡させただけならまだ幽の文字は使われなかったろうが、滅亡に追いやった理由が「女に現を抜かす」では弁護もできまい。
この王の時代、大地震が起きたり、龍が堕ちたといった風説が流れたりと、不穏な空気が満ちていた。その中一人の女性が後宮に入る。妃が増えるのは悪いことではない。王の権威も高まるし、縁戚が増えれば王宮も潤うからである。しかし、この女性「褒似」が王朝滅亡の引き金をひく。彼女はとにかく笑わない女性であった。これだけなら王の目に留まるためのキャラ作りであっても、おかしくはない。実際、王は彼女に興味を持ち、王の権威やら男の意地やらで、何とか笑わせようと躍起になる。この王に限らず男の愚かな部分であろう。しかし、彼女は笑わない。微笑んだ事といえば、絹を切り裂く音を聞いた時だという。そして、彼女が笑うとき、それは王朝の崩壊の始まりとなった。
この頃、周王朝の周りには戎が現れはじめていた。それを憂慮した王朝の関係者は、戎と友好的な「申」の君主と手を結ぼうとし、娘を后とした。そして、烽台を設置して戎の襲来に備えた。ある時烽台から煙が上がり、王宮に襲来の報がもたらされた。すわ戦か、と結集した諸侯の見たものは、褒似の笑う姿と王のご満悦な様子、そして敵などどこにもいない状況だったという。この光景をみた諸侯はどんな想いであったろうか。まさか一人の女性のためにという想いもあっただろうが、この王の愚かさに愕然としたのではなかろうか。なぜ褒似が笑ったかはよくわかっていない。しかし、これから度々彼女の笑い声が王宮に谺するようになり、諸侯は愛想をつかし始める。そして、幽王は褒似を后にし、彼女の生んだ子を太子にしてしまう。これらの出来事はドラマでも小説でもない。全て史実なのである。正に「事実は小説より奇なり」を地でゆく王である。




