パンはパンでも、食べられないパン
国王「パンはパンでも食べられないパンってなんだ?」
イナカ「…どうしたんですか?いつになく幼稚な発言をして…気持ち悪いですよ?」
国王「小学生がなぞなぞ出しちゃいかんのか?」
イナカ「国王が仰られるとなんか不愉快です」
国王「よく分からない理由で嫌われるとか、心外だな」
クルス「それで国王、いまの質問にどのような真意がおありで?」
国王「うむ、さすがクルスだ。どっかのバカとは違い、この質問には裏があることを読み取るとは見事なり」
イナカ「バカで悪かったですね」
国王「これについては大臣から説明してもらおう、大臣」
大臣「はい。実は我が国もこのなぞなぞが老若男女問わず流行っておりまして…挨拶をするかのようにこのなぞなぞを出すのがもはや文化となっております」
イナカ「どんな挨拶だよ?」
国王「なに?イナカはそんなことも知らんのか?」
サンダー「国王、あの小娘は田舎者ですから、流行には疎いのでしょう」
国王「それもそうだな。田舎者が流行についていけるわけないな」
イナカ「田舎者田舎者ってばかにしないでいただけますか?。私だって流行の一つや二つは把握してます、これでもナウいヤングなので」
マリア「その発言がナウくないわよ、イナカさん」
クルス「それで、このなぞなぞが挨拶になっていることに何か問題があるのですか?」
国王「うむ、それなんだが…もしお主が同じなぞなぞを出されたらなんと答える?」
クルス「私ですか?私なら定例通りに『フライパン』と答えますね」
国王「うむ、そうだな。我が国民も大半はフライパンと答えるのだが…問題はその後でな」
イナカ「その後?」
大臣「せっかく出したなぞなぞが簡単に答えられるのが悔しいのでしょうか、出題者が『フライパンは頑張れば食べられる』と主張し始めて、口論となり、最終的には出題者自らフライパンを食べてフライパンは食べられることを証明し、その後病院に搬送されるケースが増えておりまして…」
イナカ「へぇ、ちなみに国民の何割くらいがフライパンを食べたの?7割くらい?」
大臣「街頭アンケートによると、約63%がフライパンを食べたことがあると答えております」
イナカ「6割ちょいか、おしいな」
マリア「どうしよう…イナカさんが悟り過ぎて先読みして割合を当てるまで発展しているわ」
イナカ「フライパンを食べる程度のことで驚いてどうするんですか?そんなことじゃ、エルムの官僚は務まりませんよ?」
国王「これが国を先導する者として正しい姿なのか、間違っているのか…悩ましいところだな」
イナカ「フライパン食べたからってなんだって言うんですか?ちょっと鉄の味がしただけで私は問題無かったですよ?」
国王「そうか、問題無かったか。……ん?」
マリア「もしかして、食べたことあるの?」
イナカ「昔の話ですよ。10年前くらいの話です」
国王「そうか…10年前からすでにフライパンを食べていたのか…。お前は流行に遅れていたのでなく、実は流行に乗るのが早過ぎただけだったんだな」
クルス「それで、今日は『パンはパンでも食べられないパンは?』のなぞなぞをどうにかするための会議というわけですか?」
国王「その通りだ。このままでは我が国のフライパンの生産が追いつかなくなって美味しい料理が食べられなくなるからな」
イナカ「え?そっちの心配ですか?。国民の安全のためとかじゃないんですか?」
国王「いや、ヤケになってフライパン食べるとか普通に人間性疑うし、どう考えてもそいつの自業自得だろ」
イナカ「悪うございましたね」
国王「罪の無いフライパンを救うためにも、みんなには誰もが納得するような『パンはパンでも食べられないパンは?』の答えを考えて欲しい」
クルス「なるほど、分かりました」
国王「そういうわけで…マリアはなにか良い答えはないか?」
マリア「ここは『パンダ』と答えるのはいかがでしょうか?。あんなに愛くるしいパンダを食べようだなんてよもや思わないでしょう」
イナカ「…いや、私なら食べますよ」
マリア「おぅ…マジかよ…」
国王「まぁ、フライパンを食べるような野蛮人だからな。パンダくらい前菜感覚でいけるだろ」
クルス「我が国の主食、前菜パンダ、メインディッシュはフライパンか…」
国王「サンダーはなにかないか?」
サンダー「ふっふっふ、食べられないパンなんて一つしかないだろ?答えは…『パンティー(幼女の使用済み)』だ」
イナカ「…いや、食べるだろ?。むしろお前は食べるだろ?」
サンダー「ふざけるな!!俺がパンティーなんか食べるわけないだろ!!そんな勿体無いことするわけないだろ!!」
国王「…なるほど。貴重な宝石をわざわざ食べたりしないってことだな?」
サンダー「そういうことだ。やってもせいぜい口に含んで舌で味わって吐き出す程度だ」
イナカ「いや、結局食ってんじゃねえか」
マリア「しかもワインソムリエみたいな味わい方ね…キモ」
国王「まぁ、どちらにせよ、パンティー程度なら食べる人は食べるだろ。フライパンを食べるような我が国民ならデザート感覚で食べるだろ」
クルス「前菜のパンダ、メインディッシュのフライパン、デザートのパンティーか…」
マリア「フルコース完成したわね」
国王「クルスはなにか妙案はないのか?」
クルス「あのフライパンを食べるくらいですからね。我が国民ならもはや物理的に食べられるものならなんでも食べてしまうでしょう」
国王「それもそうだな」
クルス「ですから、食べようと思えば食べてしまえる物体を答えるのはよろしくありません。ですから、答えとしてふさわしいのは物ではない概念や総称を答えるのがよろしいかと」
国王「なるほどな…。それを踏まえた上で、なにかいいパンはあるのか?」
クルス「もちろんありますとも。答えは『ジャパン』、つまりは日本です」
国王「おお!素晴らしい回答だ!。確かに国ならさすがに食べようとは思うまい」
サンダー「そもそも、食べようにも食べられないしな」
マリア「これならみんな納得するわね」
大臣「うむ、これで我が国もフライパンを食べようとする者もいなくなりますな」
国王「『パンはパンでも食べられないパンは?』の答えは『ジャパン』。この結論を持って、この会議は終わりに…」
イナカ「…いや、食べられますよ?『ジャパン』なら」
国王「…なんだと?それはどういうことだ?」
サンダー「そもそも物体でも無いのに、それをどうやって食べるというのだ?」
イナカ「『パン』にも色々あるように、『食べる』にも色々ありますよ。口に含んで飲み込むことだけが食べるではありません。侵食という意味で、何かや誰かを制圧することも俗に『食べる』と言います」
サンダー「…それもそうだ。俺もよく幼女を性的に食べたいとか言ってるしな。実際に口に含んで咀嚼するだけが食べるではない」
マリア「サンダーの例えば分かりやすいけど、分かりたくない」
クルス「例えが的確だが、適切ではないということだな」
イナカ「と、まぁ、そういうわけで…ヤケになってフライパンを食べるような我が国民が日本を食べないと思いますか?。国民の6割がフライパンを食べるのですよ?日本を食べようと…侵食しようとする人は決して少なくないはずです」
クルス「…確かに、実際に侵食…いや、侵略しかねませんね、我が国民ならば」
マリア「日本を侵略…つまりは…」
サンダー「戦争というわけだ」
国王「やりかねんな、我が国民ならば…」
イナカ「そういうわけで、『ジャパン』は避けたほうがよろしいかと…」
国王「なるほど…イナカにしては良い読みだ、褒めてつかわす」
イナカ「一言余計です」
国王「さすがは10年前に現在の流行の最先端であるフライパンをすでに手をつけていただけのことはある」
イナカ「別にそれは関係無いですよ。…あの時は仕方がなかったんです」
クルス「…仕方がなかった?」
イナカ「気にしないでください。つまらない話ですから…」
マリア「いや、むしろ隠そうとしてる分余計に興味が湧いて来たわね」
サンダー「若気の至りなんだから、恥ずかしがることないさ。…とっとと恥をさらせ」
イナカ「いや、ほんとに笑える話じゃないですし…」
国王「面白い面白くないはお前が決めることじゃない。さっさと申してみよ、お前の失態を」
イナカ「えっと…それじゃあ私がフライパンを食べた10年ほど前に、私の村で何があったがご存知でしょうか?」
サンダー「10年前?…何があったか?」
マリア「…もしかして…レント王国の侵略のこと?」
イナカ「はい。現在はバストロア帝国の勢力下になっていますが、当時私の村はレント王国との国境付近にあり、レント王国の我が国への侵略の際、大きな被害受けました。…男は殺され、女は陵辱され、子供は連れ去られました。…レント王国は奴隷制だったので、おそらく連れ去られたものは奴隷となったのでしょう。…私はなんとか難を逃れることは出来ましたが、村は壊滅的な被害に合い、極度な貧困に陥っていました。雨風を凌ぐ家も、清潔な衣服もろくにない村で、私のような少女に与えられる食料などごく僅かな物でした。雪の中、かじかむ手で支給されたガチガチに固まった小さなパンを噛みしめる日々…当然、そんなパン一つで飢えをしのげるわけもなく、私は野草や昆虫…他にも手に取れるものはなんでも食べていました。…フライパンも、その中の一つです。…それだけの話です」
国王「………」
サンダー「………」
マリア「………」
クルス「………」
大臣「………」
思ってたよりも笑えない話で黙り込む一同。
イナカ「だから言ったじゃないですか、笑える話じゃないって…」
国王「面白半分に踏み込んだら地雷原だった」
サンダー「どデカイの踏んだな…」
マリア「さすがのサンダーでも、今回はイナカさんに同情するのね」
サンダー「そりゃそうだ。10年前ならイナカだって幼女だろ?。それを守れなかった自分が不甲斐ない…」
マリア「前言撤回。やっぱりお前はただのロリコンだわ」
国王「とにかく…イナカよ、そなたも苦労したのだな」
イナカ「いえ、苦労だなんて…戦争に負けた私達が悪いんです。敗戦国なら当然の出来事です」
国王「…こういうところから、お前の戦争本能が培われたのだろうな。まぁ、それでも辛いものは辛いものだ」
イナカ「別に、このくらいよくあることです。ただ…あの頃は………パンが食べたくても食べられなかったな」
サンダー「………」
マリア「………」
クルス「………」
国王「…どうやら、結論が出たようだ。大臣よ、今この時より、国中のパンを処分し、パンを食べてはいけない法律を制定せよ!!」
国王により、パンを食べてはいけなくなってから数日後…
モブ「パンはパンでも、食べられないパンはなんだ?」
モブ2「食べられないパンだと?…そんなものたくさんあるだろ?…フランスパン、メロンパン、アンパン、ジャムパン!カレーパン!食パン!!クロワッサン!!コッペパン!!揚げパン!!!ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!なんでもいい!!!!なんでもいいからパンが!!!!!パンが食べたいいいいいいいいい!!!!!!!!あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
モブ「…そうだな…食べたいな、パン…」
モブ2「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!以前のように当たり前のようにパンが食べられた頃に戻りたいいいいいいい!!!!!!!パンが!!パンが食べたいいいいいいいいいい!!!!
大塚「ようやく気がついてくれたようだね」
モブ「その声は…」
モブ2「大塚君!?」
大塚「『パンはパンでも食べられないパンはなんだ?』ってなぞなぞが成立するのは、当たり前のようにパンが食べられる生活の賜物だ。当然のように食べ物を…パンを食べられるっていう幸せの上で成り立つなぞなぞなんだ。…だから、このなぞなぞが気軽に出せる喜びに気がついて、感謝して欲しいっていう意味で、国王はパンを禁止にしたんだ」
モブ「そうだったんだ…もう俺、今度から気軽にこのなぞなぞを出したりしない!!だから!だから俺たちにパンを返してくれよ!!」
モブ2「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!パンンンンンンン!!!!!パンをくれええええええええ!!!!!!!」
こうして、食べられないパンを探すのではなく、パンを食べられないようにしてなぞなぞを成立させないことにより、フランスパンがむやみやたらに食べられることはなくなり、国王は毎日美味しい目玉焼きを食べられるようになったとさ、めでたしめでたし。




