転生先は仏様の気まぐれ
34歳、趣味なし。好きな食べ物は酒のつまみ。
特筆することのない男、それが吉田悟。
「ちっ!お高くとまりやがってよ〜
なんでアフター来てくんねぇんだよ〜」
人混みの激しい繁華街を、ふらふらと千鳥足で歩く吉田。
ドンっ
「前見てあるけ!地獄落とすぞバカやろうっ」
ぶつかった癖に悪態をつく。
「…こいつで良いか」
ドスッ
何かが胸のあたりを貫いた妙な感覚。
痛くはない。
何事か確認しようと下を向いたつもりが、視界が天と地をひっくり返した様に回転する。
酔っ払いの視界はそのまま暗転した。
ここはどこだ??
吉田は見知らぬ板張りの天井を見上げながら呟いた。
ハッピーヘブン(闇金)で借りた金でパチスロに挑み、見事大勝ちした吉田は、飲みに飲んで久方ぶりの勝利の味を楽しんだ昨晩だった。
記憶を飛ばすなんて滅多にない経験だが、ここがどこか一切わからない。
辺りを見回すと空いた缶ビールの山と、ゴミが散乱している。
女物の下着を見つけ、もしや贔屓のキャバ嬢の部屋か?と淡い期待を一瞬浮かべたが汚い部屋を見回してげんなりとした。
耳元でカサカサと動く音がし、黒い物体を確認した吉田は飛び起きた。
「うわっ!!」
やけに体が軽い。
四つん這いの状態で、自分の手の細さ、手のひらの小ささに気づく。
35歳を手前に既にビール腹になり、現場では監督と間違えられるほどの貫禄を備えていた。
腹は出ているが、現場仕事で培った二の腕筋肉は吉田の唯一の自慢であった。
そんな自慢の腕とは似ても似付かぬ骨と皮だけの腕を見つめつつ、視線を落とすとあるべきビール腹も無い。
しぼみに萎み、逆に凹んで肋骨が浮いている。
嫌な汗が滲み出てきた。
悪い夢でも見ているようだ。
気持ち悪い。
立とうとしても力が入らず、這いつくばって台所の蛇口をやっとの思いで捻ってみたが水が出なかった。
ここはどこだ??頭がクラクラする。
気分が悪いが吐くものすらないガリガリの腹を見て、更に錯乱した吉田の意識はそこで途切れた。
末筆ではございますが感想頂けると嬉しいです。




