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機械仕掛けの人形師  作者: 六轟
第3章

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55/110

55:

 夕食の後、俺と姫様は空き部屋に向かった。

 家族や使用人が増えたら使ってもらおうと思って、ベッドと机だけとりあえず設置した部屋だ。

 ベッドの上の布団なんて新品だし、今日これからお客さんが来て泊まってもらおうってなっても対応できる状態になってる。

 この布団、実はとても高級品だ。

 前世のテレビショッピングで売られていた羽毛布団をも上回るであろう魔獣の羽毛を使ったもの。

 羽毛とは言うものの、空を飛ぶタイプの魔獣ではなく、地面を走り回るトカゲと鳥の中間みたいな見た目の魔獣から取れる物で、その魔獣の強さと希少性からお高くなっている。

 まあ、自分たちで捕ってきたからタダみたいなもんだけど。

 専門の職人に加工を頼んだし、店で売れば相当な値段になるだろう。


 あー、神様の相手なんてせずに、この布団で寝てしまいたい。



 おっと、思考が逸れた。


 まあ、この掛布団は今回ちょっと邪魔なので机の上に避けていてもらおう。

 女神様を憑依させる体を横たえるスペースにベッドを使いたいだけで、別に気持ちのいい眠りを求める必要はない。


「この布団やけに気持ちいいんじゃよな……。いつまでも寝ていたいと思わせられるのに、朝目が覚めると何もかもがスッキリしておってすぐに活動を開始してしまうんじゃよ。」

「王族なんて高級寝具使い放題じゃないの?」

「いや、妾はジョブのせいで仮とは言え聖女なんて持て囃されとったからな……。清貧がどうこうで無駄に金のかかった寝具など許されんかったのじゃ……。その割に、専用の宿泊施設だのなんだの無駄に金かかっとったがな。教会からも解放された今その縛りも無くなったがのう。しかも、そうなってからの方が女神様の加護で回復のスキルも魔術適性もぶっちぎりで上がっとる辺り、今広まっとる宗教とか馬鹿らしくなるのう。」


 派閥争いから身を引くために聖女扱いされ、更に学校にまで行き続けていた姫様。

 色々不満もあったんだろうけど、これからその宗教の信仰対象っぽいの呼び出すんだぜ?

 いや、姫様たちの宗教がどんなんかよく知らんけどさ。

 神様っぽい存在が実在している事だけは、身をもって知ってるけども。

 ……アフロディーテ様、めっちゃ可愛かったなぁ。



 そういや、ディオーネー様の依り代を作るのはいいけど、どう作ればいいんだろうか。

 アフロディーテ様の場合は、頭に勝手にアフロディーテ様のデータを流し込まれた感じだったけど、それをそのまま流用したらガラテアと瓜二つな娘になっちゃうしなぁ。

 アフロディーテ様曰く、あの体はアフロディーテ様自身の体をそのままもとにしてデザインされてるらしいし、ディオーネー様の依り代としては合わなかったりしないだろうか。


 なんて考えていると、頭の中にまた情報が流れ込んでくる。

 あー……。

 これ、ディオーネー様のボディデータだぁ……。

 この神様、どんどんグイグイ押してくるなぁ……。

 てか、もう完全に俺の頭の中今覗いてるよな?

 プライバシーとかそういうのどう考えてんの?

 もう頭の中全部エロい事で埋めてやろうかな。


 まあいいや。

 折角データ貰ったことだし作るか……。

 えーと、なになに?

 ふんふん……。

 へー……。

 あ、こここんな感じになってんだ……?



「というわけで、出来上がったのがこのボディなんだけど、満足したかこの野郎。」


 ベッドの上には、今まさに出来上がったばかりの人形が横たわっていた。

 髪型は、肩まで無いくらいのショートカット。

 顔は美人だけど、力強い感じのクールタイプというかボーイッシュな感じ。

 なのに胸は、ボーイッシュさを一切感じさせない程デカい。かなりデカい。

 腰の括れはありながら、下半身の肉付きは適度に運動をこなしてきたような洗練された物だ。

 別に、俺が自分の好みで作ったわけではない。

 贈られてきたデータがこうだっただけだ。

 すごい好みだけど、そう言う事だから。


「おぬし、自分の好みで作ったわけではないんじゃよな?」

「当たり前だ。俺が神聖な依り代に劣情を抱く男に見えるか?」

「既にその依り代一人孕ませとるじゃろ。」





 体は滞りなく完成したし、後は魂のほうか。

 神魂支配とディオーネーってスキルを無理やり取らせたって事は、これを使って顕現させろって事だよな?

 分け御霊を作って、それをこの体に魂付与し、更に神魂支配でそれを完全に定着させるって事か?

 アフロディーテ様みたいに自分が満足したら勝手に帰るって事できなくなるけど、分け御霊だから大丈夫って事なのかな?

 なんでそんな変なルールを自分に強いるんだろう。

 Mか?

 ボーイッシュ巨乳でちょっとMとか……。


 よし!早速魂付与するか!久しぶりだしスキル名も叫んじゃうぞ!


「ディオーネー!!!」


 まず、ディオーネー様の分け御霊を召喚し、


「魂付与!!!」


 依り代にぶち込んで、


「神魂支配!!!」


 何の意味があるのか知らんけど体に縛り付ける、と……。



「なんでいきなり叫び出したんじゃ?」

「ノリ。」

「ノリでいきなり隣で叫ばないでほしいんじゃが……。」


 いいや叫ぶね!


 なんて話していると、すぐにディオーネー様の瞼が開く。

 うん、めっちゃ可愛い。

 可愛いけど……まずやることがあるんだよね……。


「歯あああああくいしばれええええええええええ!!!!!」

「甘いよダロス。」


 渾身の右ストレートは、あっさりと受け止められた。

 第3王子の件で落とし前つけようとしたんだけど、よく考えたら頭の中覗かれてたんだった。

 不意打ちは不可能……か。


「初めまして、わかってると思うけど僕がディオーネーだよ。」

「一発殴らせてください。拳を振り下ろす先が無いんです。」

「ごめんね?その代わり今度エッチな事させてあげるからさ。」



「それで、なんでわざわざ顕現したかったんだ?用があるなら姫様通じて言って来ればよかったんじゃ?」

「用?こうやって生の肉体が欲しかっただけだよ?もう何千年も顕現できてなかったしね。あー、肉体があるってすばらしいね!」

「……え?それだけ?またクソ面倒な事押し付けてくるつもりじゃなかったのか?」

「キミの中で僕はどんなイメージなのか何となくわかったよ。」


 いっつも面倒事ばっかりじゃん!

 毎回じゃん!


「あ、そうそう。僕この体だと、神様としての権能殆ど使えないから、養ってね?」

「は?神様の世界的な場所に帰らないのか?」

「帰らずに済むようにキミに態々新しいスキルを上げたんだよ。本当は、分け御霊だろうと早急に戻らないと文句言われるんだけどさ、依り代に封印されてる状態なら帰れなくても僕のせいじゃないしね。」

「いやまてまて。それって俺が拉致犯的な扱いにまるのか?」

「気にしなくていいよ。僕は初めてだけど、結構人間に捕まっちゃう神様っているし。何千年かに1柱の頻度で。それでも別に人間が罰せられたって話は聞かないから。まあ、その辺りの僕らの知識も、僕らより更に上位の存在に作りだされただけって可能性もあるけどね。実は、今まで何万年もこの世界が存在していたっていう記憶があるだけで、今この瞬間僕らが作りだされたって可能性もあるし。知らないけど!」


 ふわふわっとした理由付けだけど、本当に大丈夫なんだろうか。

 もし俺が怒られたらディオーネーが悪いんですっておまわりさんにチクるからな?


 話が途切れた所で、ディオーネー様が立ち上がる。

 それだけで、大きな乳房がぷるるんと揺れる。

 一応ガラテア達を作った時の反省もあって、作り出した段階で服も一緒につくりだしているんだけど、適当に作ったTシャツの上からでもとても分かりやすく揺れているので、俺の視線は完全に誘導されてしまっている。


「うん!歩くのも久しぶりだけど気持ちいいね!」

「それはよござんした。」

「……いやぁ、キミの事はずっと見てたけど、本当におっぱいばっかり見てるんだね。」

「そんなこと無いぞ。顔も腹も尻も太ももも見てる。おっぱいの比率が高いだけだ。」

「何の言い訳なの?」


 そう言って、ディオーネー様はケラケラと笑う。

 どうやらこういう当たり前の会話でも、久しぶりに顕現した神様にとっては楽しいらしい。

 ただ、一応この神様の使徒になっている姫様的には、どう反応して良いか測りかねているようだ。


「そんなに緊張しなくていいよイリア。僕の事は友達だと思って接してくれ。その方が僕としても楽でいい。この体でいる間は、呼び方もディオネで。様もいらないよ。」

「……はぁ。では、そうさせてもらおうかのう。確認なんじゃが、ディオネは暫くこの世界に滞在するつもりという事でよいか?」

「うん、そのつもり。アフロディーテがやけに顕現したって自慢してくるからさぁ。じゃあ僕は暫くあっちに住んでやるよ、ってことで来たわけ。結構な量の神気を使っちゃったし、この世界に定着させられた分け御霊じゃ大したことできないけど、ダロスはエッチで優しいから守ってくれるかなって。」


 別にエッチなこと無くてもちゃんと女の子は守りますけど?

 障害があったり怪我してたり子供じゃない限り野郎は守らん。

 自分で生き抜け。


「この世界堪能したいからさ、ダロスがその気になったら僕もアフロディーテみたいに妊娠させてね?」


 守ります。



「あ、それとね、今回ダロスにあげたスキルなんだけど、しばらくしたら役に立つと思うから覚えておいて。」


 と、ディオネは最後に言っていた。

 多分、厄介事はこれから始まりそうって事だろう。

 やっぱりこいつは厄介事を斡旋する神様だ。



 とりあえず、これから家でしばらく生活するという事なので、部屋から連れ出し家族の元に引っ張っていく。

 女神ディオーネーだと紹介すると、皆が一瞬凍り付いた。

 そりゃそうだよな、いきなり女神様が目の前に現れたら普通ビックリする。

 アフロディーテ様は、基本的に俺と2人きりの時にしか顕現しないから、他の家族たちにとっては初女神だろう。


「ここにいる間は、ディオネって呼んでね。あと、僕もダロスの赤ちゃん産みたいから、それも許してくれると嬉しい。」


 ってディオネが言った辺りで、止まっていた家族たちが再起動し、あーだこーだと話し合っていた。

 ただ、俺としてはそれどころでは無かったけれども。


 さっき言っていた、俺にくれたスキルが今後役に立つという話が気になる。

 貰ったスキルは2つだけど、ディオーネー様の分け御霊を出すスキルは今回のためだけの物だろう。

 となると、自然と該当するスキルは神魂支配となる。

 つまり、今後俺が直面するであろう問題は、使徒ではなくて神様そのものとの対決という事なんだろう。


 え?

 嫌なんだけど?


「姫様、神様と殴り合いとかしてみたい?」

「したくないのう。早めに妾と結婚して、子を成しておいたほうが良いのではないか?」


 警察官になる時なんかに言われるらしいよねその手のアドバイス。

 いつ死ぬかわかんねーしって。


 やだぁん……。


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